僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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むにぃ




 まぶたに、光が降る。

「ふにゃ!」

 朝日が昇ったらすぐに、お掃除、お洗濯、お料理しないと、なぐられる……!

 あわあわ起きた僕は、隣のあったかい身体と、ふかふかの敷布に、目をみはる。

 隣で夜空の髪が、朝のひかりに、きらめいた。


「……むーちゃん……?」

 むにぃ

 僕のほっぺを、つねってみた。


「……ぃひゃい……」

 痛い夢かもしれない。

 昨日も確かめた気がする。



 どうしよう。

 むーちゃんの傍にいられることが、夢みたいに、うれしい。


 どうしよう。

 むーちゃんの傍にいられなくなったら、胸がちぎれて、泣いてしまう。


 ……どうしよう。



「……むーちゃん……」

「んー……もぅ、ちょっと……」

 もごもごささやいて、もごもご抱っこしてくれるムニャの腕に、つつまれる。


「……むーちゃん」


 だいすきは、やさしい、あたたかな気もちばかりなんだと思っていた。

 むーちゃんの隣にいられなくなることを考ええるだけで、涙がにじむ。


 ……たぶん、むーちゃんは、とっても立派なお家に生まれた、お金もちで。

 もしかしたら、捨てられちゃったのは、誰かのよくない、たくらみとか、間違いとかで、やさしい誰かがあわてて探しに来るかもしれない。

 むーちゃんは、僕といるより、お金もちの、しあわせな暮らしを送るほうがいいに決まっている。


 ──そうしたら、僕はもう、いらなくなる。


 考えるだけで、胸がつぶれた。



 むーちゃんは、何にもなくなったから、僕をたいせつに思ってくれる。

 すべてが戻ってきたら、むーちゃんに、僕は、いらない。


 ちいさな孤児を、誰が求めてくれるだろう。

 捨てられたむーちゃんだから、僕を大事に思ってくれた。


 ……むーちゃんが、捨てられてしまったのは、ひどく、かなしいことなのに。

 だからこそ、僕を見てくれたのだと思うと、むーちゃんの不幸を喜んでしまいそうな、おぞましい自分に、戦慄する。



 だいすき

 きらきらした、やさしい、あたたかい気もちばかりじゃない。

 せつなく、くるしい、ドロリとした汚いものまで、噴きあがるなんて。



「……むーちゃん……」


 こわい。

 でも、むーちゃんを、すきにならない、なんて、できない。



 ……なんにもない僕は、また、捨てられちゃうかもしれない。

 やさしいむーちゃんは、そんなことしないかもしれないけれど、でも、立派なお家の人は、僕が邪魔だと思うかもしれない。


 ──なら、何かがある僕に、ならなくちゃ。

 お料理も、お掃除も、お洗濯も、薬草摘みも、きっと誰にでもできる。


 僕だけの何かができる子に、ならなくちゃ。

 むーちゃんに『ぽて といると、いいな』と思ってもらえる子に、ならなくちゃ。

 もし、むーちゃんに、お迎えが来ても。

『ぽて と一緒に行く』

 言ってもらえるような子に、ならなくちゃ。

 下働きでも、何でもいい、むーちゃんの傍においてもらえる子に、ならなくちゃ。


 こしこし、目をぬぐう僕を、あたたかな腕がつつんでくれる。

「……もうちょっと、寝よう、ぽて」

 もごもご、つぶやく唇が、僕の髪にうまる。

「あい」

 むーちゃんが抱っこしてくれるのに、ふさわしい僕に、なるんだ。




 決意とともに、キリリと眉をしゃんとしたつもりなのに

「おはよー、ぽて。今日もかわいー。夢みたい」

 僕を抱っこしたムニャが、とろけるように笑ってくれたら。

 しあわせすぎて、ふにゃふにゃしちゃう……!


「はぅう……! むーちゃん、ちゅみな、ひとなの……!」

「うぅん……それは、ぽてかな」

 くすくすムニャが笑う。
 吐息に、僕の髪が、ふあふあ揺れる。

 こんなしあわせな朝を迎えるためなら、なんだってできる気がするのです。




「あさは、おりょーりと、おせんたくと、おそーじ!」

 ちっちゃな拳をかかげる僕に

「ぽて、朝ごはんは食べたいけど、そのあとすぐ、香草を摘みに行かないと。
 朝はやくのほうが、いいんじゃないかな!」

 にこにこするムニャは、とってもお掃除したくないみたいです!


 きもちわかる。










 ────────────────


 読んでくださる方、いらっしゃるかなーとちょっと心配で、でもどうしても書きたくなってはじめたお話なのですが、お気に入り1600、いいねやエール、ご感想、応援してくださるお気もちが、ぽて と むーちゃんといっしょに、とても、とてもうれしいです。

 ありがとうございます!

 感謝の気もちをこめて、動画を作ってみました。
 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

 ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!




感想 60

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