55 / 98
むにぃ
まぶたに、光が降る。
「ふにゃ!」
朝日が昇ったらすぐに、お掃除、お洗濯、お料理しないと、なぐられる……!
あわあわ起きた僕は、隣のあったかい身体と、ふかふかの敷布に、目をみはる。
隣で夜空の髪が、朝のひかりに、きらめいた。
「……むーちゃん……?」
むにぃ
僕のほっぺを、つねってみた。
「……ぃひゃい……」
痛い夢かもしれない。
昨日も確かめた気がする。
どうしよう。
むーちゃんの傍にいられることが、夢みたいに、うれしい。
どうしよう。
むーちゃんの傍にいられなくなったら、胸がちぎれて、泣いてしまう。
……どうしよう。
「……むーちゃん……」
「んー……もぅ、ちょっと……」
もごもごささやいて、もごもご抱っこしてくれるムニャの腕に、つつまれる。
「……むーちゃん」
だいすきは、やさしい、あたたかな気もちばかりなんだと思っていた。
むーちゃんの隣にいられなくなることを考ええるだけで、涙がにじむ。
……たぶん、むーちゃんは、とっても立派なお家に生まれた、お金もちで。
もしかしたら、捨てられちゃったのは、誰かのよくない、たくらみとか、間違いとかで、やさしい誰かがあわてて探しに来るかもしれない。
むーちゃんは、僕といるより、お金もちの、しあわせな暮らしを送るほうがいいに決まっている。
──そうしたら、僕はもう、いらなくなる。
考えるだけで、胸がつぶれた。
むーちゃんは、何にもなくなったから、僕をたいせつに思ってくれる。
すべてが戻ってきたら、むーちゃんに、僕は、いらない。
ちいさな孤児を、誰が求めてくれるだろう。
捨てられたむーちゃんだから、僕を大事に思ってくれた。
……むーちゃんが、捨てられてしまったのは、ひどく、かなしいことなのに。
だからこそ、僕を見てくれたのだと思うと、むーちゃんの不幸を喜んでしまいそうな、おぞましい自分に、戦慄する。
だいすき
きらきらした、やさしい、あたたかい気もちばかりじゃない。
せつなく、くるしい、ドロリとした汚いものまで、噴きあがるなんて。
「……むーちゃん……」
こわい。
でも、むーちゃんを、すきにならない、なんて、できない。
……なんにもない僕は、また、捨てられちゃうかもしれない。
やさしいむーちゃんは、そんなことしないかもしれないけれど、でも、立派なお家の人は、僕が邪魔だと思うかもしれない。
──なら、何かがある僕に、ならなくちゃ。
お料理も、お掃除も、お洗濯も、薬草摘みも、きっと誰にでもできる。
僕だけの何かができる子に、ならなくちゃ。
むーちゃんに『ぽて といると、いいな』と思ってもらえる子に、ならなくちゃ。
もし、むーちゃんに、お迎えが来ても。
『ぽて と一緒に行く』
言ってもらえるような子に、ならなくちゃ。
下働きでも、何でもいい、むーちゃんの傍においてもらえる子に、ならなくちゃ。
こしこし、目をぬぐう僕を、あたたかな腕がつつんでくれる。
「……もうちょっと、寝よう、ぽて」
もごもご、つぶやく唇が、僕の髪にうまる。
「あい」
むーちゃんが抱っこしてくれるのに、ふさわしい僕に、なるんだ。
決意とともに、キリリと眉をしゃんとしたつもりなのに
「おはよー、ぽて。今日もかわいー。夢みたい」
僕を抱っこしたムニャが、とろけるように笑ってくれたら。
しあわせすぎて、ふにゃふにゃしちゃう……!
「はぅう……! むーちゃん、ちゅみな、ひとなの……!」
「うぅん……それは、ぽてかな」
くすくすムニャが笑う。
吐息に、僕の髪が、ふあふあ揺れる。
こんなしあわせな朝を迎えるためなら、なんだってできる気がするのです。
「あさは、おりょーりと、おせんたくと、おそーじ!」
ちっちゃな拳をかかげる僕に
「ぽて、朝ごはんは食べたいけど、そのあとすぐ、香草を摘みに行かないと。
朝はやくのほうが、いいんじゃないかな!」
にこにこするムニャは、とってもお掃除したくないみたいです!
きもちわかる。
────────────────
読んでくださる方、いらっしゃるかなーとちょっと心配で、でもどうしても書きたくなってはじめたお話なのですが、お気に入り1600、いいねやエール、ご感想、応援してくださるお気もちが、ぽて と むーちゃんといっしょに、とても、とてもうれしいです。
ありがとうございます!
感謝の気もちをこめて、動画を作ってみました。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!
あなたにおすすめの小説
姉は不要と判断された~奪うことしか知らない妹は、最後に何も残らなかった~
ゆめ@マンドラゴラ
恋愛
妹にすべてを奪われ続けてきた姉。
ついには婚約者まで狙われ、「不要とされた」。
それは、誰にとっての「不要」だったのか。
「不要とされた」シリーズ第二弾。
三人の孤児の中から聖女が生まれると言われましたが、選ばれなかった私が“本物”でした
あきくん☆ひろくん
ファンタジー
フクシア神教国では、聖女になることは最高の誉れとされている。
ある日、予言者は三人の孤児を指してこう告げた。
「この中から、一人は聖女になる」と。
長女カヤ、次女ルリア、そして三女ケイト。
社交的で人望のある姉たちは「聖女候補」として周囲に期待され、取り巻きに囲まれていた。
一方でケイトは、静かで目立たず、「何にもなれない」と言われる存在。
――だが。
王族が倒れ、教会の治癒でも救えない絶望の中。
誰にも期待されていなかった少女が、ただ「助かってほしい」と願った瞬間――奇跡は起きた。
その日、教会は“本物”を見つける。
そして少女は、まだその意味も知らないまま、聖女として迎えられることになる。
これは、誰にも選ばれなかった少女が、神に選ばれるまでの物語。
運命の番なのに別れちゃったんですか?
雷尾
BL
いくら運命の番でも、相手に恋人やパートナーがいる人を奪うのは違うんじゃないですかね。と言う話。
途中美形の方がそうじゃなくなりますが、また美形に戻りますのでご容赦ください。
最後まで頑張って読んでもらえたら、それなりに救いはある話だと思います。
追放された役立たず聖女、実は国家の回復システムでした。私が消えた途端に国は崩壊、今さら泣いても戻りません。元勇者の魔王様に独占されています
唯崎りいち
恋愛
「役立たずの聖女はいらない」と国王に追放された私。
だがその瞬間、国中の“宿屋で一晩寝れば全回復する仕組み”は崩壊した。
――それは、私の力で成り立っていたから。
混乱する人間たちをよそに、私は元勇者だった魔王様に連れ去られる。
魔王様はかつて勇者として魔物を虐げていた過去を持ち、
今は魔物を守るために魔王となった存在だった。
そして私は気づく。
自分の力は、一人を癒すだけでなく――世界そのものを支えていたのだと。
やがて回復手段を失った勇者たちは崩壊し、
国王は失脚、国は混乱に陥る。
それでも私は戻らない。
「君は俺のものだ。一生手放さない」
元勇者の魔王様に囲われ、甘やかされ、溺愛されながら、
私は魔王城で幸せに暮らしています。
今さら「帰ってきて」と言われても、もう遅いのです。
愛されたいだけなのに
まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。
気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。
しかしまた殺される。
何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。