僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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ちょこっと?




 街に入った途端、雪かきされた通りに元気な呼び声が響いた。
 行き交う沢山の人に、びっくりする。

 どんなに人がいっぱいでも、むーちゃんだけ、輝いて見える。


「先に薬草組合に行くのがいいかなって思ってたけど、大切なお買い物を忘れちゃったら大変だから、先におなべを買いに行こうか」

 ムニャの言葉に、僕は、ちっちゃな手をあげる。

「あい!」

 元気にお返事したら、露店を探索です。

「むーちゃんの、まどぅぐ、こわれ、ちゃったら、たぃへん! だから、たかい、けど、ぉなべ、かった、ほぅが、いぃ、かも?」

「そうなの?」

「そうなの! ぉなべ、たっかぃ! でも、まどうぐ、もっと、たっかい!」

 ぴょこんと跳びあがる僕に、ふわふわ笑ったムニャがうなずく。

「なるほど」

「あと、てっぱん、ほしぃ、の」

 つながった手をひいたら、ムニャが首をかしげる。

「てっぱん?」

「むぎやき、ちゅくゆの!」

「麦焼き?」

「きのうの、よるも、きょうの、あさも、ちゅくれなくて、ごめんなしゃい、なの」

 しょんぼり眉をさげる僕に、ムニャが反対側に首をかしげる。

「麦焼きって、買うものじゃないの?」

「ちゅくゆの! むぎの、こな、かったよ!」

 夜空の瞳が、瞬いた。

「そ、そうだったね……!」


 ゴトゴト遊んだの、忘れてた!

 さすが、むーちゃん!



「いいお店、あるかな?」

 鐘の塔の広場に並んだたくさんの露店の中から、ムニャと一緒にお鍋屋さんを、ひととおり見てみたけれど……

 冬の陽に輝くおなべに、僕は首をひねる。

「やしゅぃ、けど……ぁんまり、よくなさそぅ?」

「そうなの?」

 僕はこっくり、うなずいた。

「どぅぐ、ちゅくって、くれた、ひとの、こころ? はぃてゆ。
 ぞんざぃ、に、ちゅくられゆ、さみしぃ、かんじ、なの」

「さみしい感じの、おなべしかない?」

 こっそり聞くムニャに、露店のお兄さんが気をわるくしないように、こっそりうなずいた。

「ここは薬草組合のホーおじいちゃんに、よい、おなべ屋さんを聞いたほうがいいかもしれないね。高い買い物は失敗できないよ!」

 鼻息荒くしてくれる、むーちゃんが、僕の『しぇつやく!』に染まってきてくれたみたいです?

「やしゅい、ぉなべ、すぐ、だめに、なちゃう。たかぃ、ぉなべ、ながもち!」

「そうなんだね。さすが、ぽて博士!」

「えへへ。はかしぇ!」

 もじもじした僕は、ムニャを見あげる。

「でも、でも、たまに、たかい、ぉなべ、なのに、すぐ、だめに、なちゃう!」

「大変!」

「むーちゃんの、いぅ、とおり、ホーおじいちゃん、に、ききに、ゆく!」

「お菓子も食べようね」

「ぉかし……!」

 あちあちほっぺで、くねくねしちゃう!

 ぜ、ぜいたくは、いけないのですが……!
 今日は、薬草を摘ませてもらったので、ちょこっと……?


 どきどきしながら、雪かきされた道をムニャとふたりで歩く。
 露店の立ち並ぶ、にぎやかな鐘の塔の広場から1本裏道に入った。

 それだけで呼び声が遠くなる。
 静かになる通りの向こうに、薬草の看板が見えてくる。

「ほうほう、今日も来たかね、いらっしゃい」

 夜色のとんがり帽子を揺らして、おじいちゃんが笑う。

「お菓子でも食べに来たかね?」

 にこにこしてくれる、ホーおじいちゃんに、僕はちいさな手をあげた。

「ねちゅ、しゃまし、そう、つんで、きました!」

「おお! そりゃありがとう。買い取るよ。出してくれるかな?」

 ムニャがふところに手を入れる。
 夜空の向こうで星が瞬くような力が閃いて、きらきらの緑の草が現れた。


「……な……!」

 息をのむ、ホーおじいちゃんの目が、まるくなる。







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