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ほへ?
「このあたりの、くしゃ、ぴかぴか?」
首をかしげる僕の隣で、きらきら草を差しだすムニャが微笑む。
「とてもきれいですよね。熱さまし草で、間違いありませんか?
ひと房のお値段は、このあいだ見せていただいた資料では、おかね10枚だったと思います」
比較的よく生えている草だけれど、欲しがる人も多いので、買い取り価格はお高めの、おかね10枚なのです!
むーちゃんと、お菓子が食べられるよ!
はんぶんこ!
わくわく見あげる僕とムニャに、おしわに、うずもれそうな目をまんまるに見開いていたおじいちゃんが、のけぞった。
「こ、これは、お兄さんが摘んだのか……!?」
きょとんとしたムニャが首をふる。
「いえ、ぽてが」
「ちっちゃいのが摘んだのか──!」
僕は、ちいさな手をあげる。
「ちっちゃぃ、ぼく、ぽて」
「ああ、うん、名を覚えられんですまんが、ちっちゃいのが、これを……?」
「あい」
ホーおじいちゃんが、ぼうぜんと僕を見つめる。
「……緑のきみ……!」
「ほへ?」
首をかしげる僕と一緒のほうに首をかしげる、むーちゃんが、今日も、とっても、かわいーです!
「緑のきみ?」
きょとんとするムニャと僕に、ホーおじいちゃんは、そうっときらめく草にふれる。
緑のひかりが、ちらちら舞って、弱くなる。
「……あぁ、やはり」
「ぴかぴか、ぉわり?」
首をかしげる僕に、ホーおじいちゃんは、うなずいた。
「言い伝えじゃの。緑のきみが摘むときは、植物が緑のひかりにきらめくと。
こんなことまで知っておる、わしを、ほめてほしいくらい、あやしい噂じゃ」
「うわさ」
眉をひそめるムニャに、ホーおじいちゃんは声を落とした。
「緑のひかりは、摘んだ瞬間にしか現れぬという。
まだ光っておること自体が、異常じゃ。というか、光るというのも伝説じゃぞ!?」
叫んだホーおじいちゃんは、あわてたように魔導具を起動した。
キィイイイン──!
結界の魔法が発動する。
ムニャの夜の瞳が細くなる。
「……防音と……視界を遮断する結界?」
重々しく、ホーおじいちゃんは、うなずいた。
「緑にひかる草だなんて、見られたら大変なことになるぞい!」
僕は首をかしげる。
「このぁたりの、くしゃ、みな、ぴかぴか、じゃ、なぃ?」
「光ってる草を見たことがあるか」
いかめしくホーおじいちゃんに、のぞきこまれた僕は、こっくりうなずいた。
「ょゆに、なゆと、ひかゆ、くしゃ、あゆ!」
「確かに、夜に光る花は、僕も見たことがあります」
うなずくムニャと僕に、ホーおじいちゃんは頭を抱えた。
「そんな希少な植物を知っとることも驚きじゃがの、そーじゃない!
熱さまし草が光っているのを、今まで一度でも見たことがあるか?」
僕とムニャは顔を見あわせた。
「……僕は草に興味がなかったので、何とも……」
眉をさげるムニャのおひざを、ぽんぽんした僕は、手をあげる。
「にゃい! と、おもぅ?」
ほっとしたように、ホーおじいちゃんは吐息した。
「そうだろう、そうだろう。
あるとか言われたら、じーちゃん、のけぞるよ。お背なが痛いよ」
つかれたように、背中をさすったホーおじいちゃんは、結界の向こうが見えないことを確かめるように目を細めた。
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