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やみ?
わくわく僕は、ホーおじいちゃんを見あげる。
「やくそぅ、たかく、かって、もらえゆ?」
ホーおじいちゃんは、白い眉をさげた。
「ちっちゃいの、このぴかぴかの熱さまし草は、流通させては、いけないものだと思うんじゃ」
「ほへ?」
「おそらく薬効が、かなり高い、と思われる。
検証しなければならんが、流通させて『この熱さまし草は、なんか違う!』『すごい!』なったときは、手遅れじゃ」
ホーおじいちゃんの声が低くなる。
「ちっちゃいのが、さらわれてしまう」
「そんなこと、絶対、させない!」
叫ぶムニャから夜の力があふれるのに、ホーおじいちゃんは、うなずいた。
「気もちはわかるよ。でも、お兄さんひとりで、百人を相手にするのは難しいじゃろう。
一度なら防げても、繰り返されたら? 次々にやってきたら?」
ぎゅ、とムニャが唇をかんだ。
「ちっちゃいのが、もしほんとうに『緑のきみ』なら、世界中が、ちっちゃいのを欲しがる。
多くの人が病にかかる。どんなに金を持っていようと、権力があろうと、病からは、のがれられない」
ホーおじいちゃんの瞳が、細くなる。
「救ってくれる『緑のきみ』を、持てるすべてで追い求めようとするじゃろう」
びっくりして、冷たくなる背で、僕は自分の指を見つめる。
……たしかに、熱さまし草は、ぴかぴかしてた、けど……
「でも、ぴかぴか、しゅる、だけ、かも?」
ホーおじいちゃんは、うなずいた。
「その力が、よう分からんことが問題じゃ。おとぎ話のような、伝説じゃからの。
だからと言って、輝く薬草を流通させるのは危険じゃ」
しょんぼり僕は眉をさげる。
「……ぼく、の、つんだ、やくそぅ、おかねに、ならなぃ……?」
むーちゃんの役に立ちたいのに、おかねにしてもらえない僕は、危険を連れてくるかもしれない僕は、むーちゃんの足を引っ張ることしかできない、お荷物なんじゃ……
泣きだしそうに揺れる瞳に、ちいさな顔をゆがめたムニャが抱きしめてくれる。
「ぽては、僕が、守るから」
首をふる。
「ぼくも、むーちゃんを、まもり、たぃの……! ぼく、むーちゃんの、やくに、たちたぃ、のに……」
こぼれる涙を、ムニャの胸が吸いこんだ。
「ぽては、僕の傍に、いてくれるだけで──」
「いや……!」
むずかるように首をふる僕に、困ったようにムニャとホーおじいちゃんが眉をさげる。
──困らせているのは、わかっている。
ちっちゃい僕は、薬草を摘んだりしないで、お金もちなムニャに、こっそり養われているのが、平穏に暮らしてゆくには最良だって。
それでも僕は、首をふった。
何度も、首をふる。
「ぼく……ぼくが、むーちゃんを、まもりゅ、の……!」
にぎりしめる手は、なんて、ちいさい。
それでも。
「ぼくが、むーちゃんを、たべさせて……ぼくが、むーちゃんを、しあわせに、すゆの……!」
泣きだした僕に、ムニャの瞳に涙がにじむ。
「……ぽて……」
抱きしめてくれる腕が、ふるえる。
白い眉をさげたホーおじいちゃんは、ぽんと手を打った。
「そうじゃ、なら、闇薬士はどうかの?」
「……やみ?」
ムニャの凛々しい眉がしかめられて、ホーおじいちゃんはうなずいた。
「ここいらは、強欲領主のせいで、まともな医士がおらん。
金ばっかり取られて、よくなるどころか、ひどくなる。皆、困っておるんじゃ」
ホーおじいちゃんのちいさな目が、僕の目をのぞきこむ。
「ちっちゃいのが摘んだ薬草を、乾燥させて、粉にして、薬にして、売るんじゃ。
闇じゃからの、売るときに、絶対に情報を口でも書でも思念でも伝えない、薬を研究しない魔法契約を結ばせることができる。
違反しようとすると口が火を噴き、二度と話せなくなり、食べられなくなる。命を取られるのと同じじゃの」
僕とムニャは顔を見あわせる。
「恐ろしい契約を結んでも治りたいという者しか来ない。ひやかしも、商売敵も偵察も来んじゃろう。
ほんとうに苦しむ人にだけ、薬が届く」
ホーおじいちゃんの瞳が、輝いた。
「人をたすけて、ちっちゃいのは、お金を稼げる。どうかえ?」
「ぼ、ぼく、やって、みたぃ!」
手をあげる僕を見つめたムニャが、顔をあげた。
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