僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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たあっぷり




 僕を守るように前に立ったムニャの夜の瞳が、まっすぐホーおじいちゃんを見つめた。

「僕が調合した風に見せかけて、顔を隠して売れば、より、ぽてを守れる」

「そのとおり。こっそり薬草組合が支援しますぞ。
 ふたりで闇薬士、やってみるかえ?」

「ぼ、ぼく、がんばゆ、から、むーちゃんは、おやしゅみ……」

「だめ!」

 しかられた僕が、びくんとふるえる。
 あわてたように抱きしめてくれたムニャが、ささやいた。

「やるなら、ふたりで」


「で、でも、むーちゃん、ふたん、いっぱぃ? したく、なぃ?」

 心配で見あげたら、ムニャは首をふる。

「ぽてが心配なんだ。危険が及ぶようなことは、して欲しくない。
 ……でも、ぽてが、やってみたいと願うなら──全力で、叶えてあげたいと思う」

 僕を抱きしめたムニャが、笑ってくれる。


「ふたりで闇薬士、やります」

 まっすぐなムニャの瞳に、ホーおじいちゃんが胸をたたく。


「薬草組合、こっそり公認じゃからの、そこの裏を使ってよいぞい!
 賃料と紹介料はもちろん、いただくがの。よい話だとは思わんか?」

 片目をつぶるホーおじいちゃんに、ムニャとふたりで笑う。

「ぁ、あの、あの、おじぃちゃん、ぼく、やくそぅ、ちゅむ、だけ、で……ぉくすり、つくゆの、しらにゃい……」

 もじもじする僕に、ホーおじいちゃんは首をかしげる。

「闇だからのう、薬草をすり潰して売ればいいんじゃないかえ?」

 ホーおじいちゃんが、てけとーです!

 吹きだしたムニャが笑う。

「僕が勉強します。得意なんです」

 えへんと胸を張るむーちゃんが、かっこいー!

「で、でも、むーちゃん、たぃへん……」

「ずっと忌まれてきた僕が、誰かの力になれるかもしれないなんて、ぽてと一緒に薬士をするなんて、わくわくする!」

 きらきらの星の瞳で笑ってくれる。


「むーちゃん」

 抱きしめるのに、抱きついているようにしか見えないと思うのは、とっても残念なのですが。

 ぎゅうぎゅう、ムニャを抱きしめる。


「むーちゃんと、ふたりで、くしゅし!」

「やってみようね、ぽて」

 おでこをくっつけて、熱い頬で笑った。


「ほうほう、じゃあ、やばーい魔法契約を用意しておくでの。
 ちっちゃいのは、まじめさんだからの、薬士組合に、薬の作り方を聞きにゆくかね?
 紹介はできるが、紹介料をもらうのと、向こうで講義料を取られるのう」

「お願いします」

 むーちゃんが、ふところの、おかねを、じゃらじゃらさせてる……!

「あ、あのあの、で、でも、た、たかぃ……?」

 ぷるぷるする僕に、ホーおじいちゃんは指をたてた。

「薬士組合に紹介料は銅貨30枚、薬士の基本講義は回数にもよるが、銀貨1枚から5枚くらいじゃのう」

「ぴゃ──!」

 のけぞる僕を抱っこしたムニャが微笑む。

「先行投資だから。もっともっと、稼ぐでしょう? 闇だから」

 むーちゃんが、にこにこしてる!

「いひひひひ。そうじゃ、闇のいいところは、価格設定が、ないことじゃ──!」

 ホーおじいちゃんの目が、爛々してる──!

「で、ででででも……!」

 あわあわする僕に、ムニャが笑う。

「おかねのない人からは、ちょっぴり。いじわるな、お金もちからは、たっぷり。ね?」

「た、たっぷり……!」

「そうじゃ、たぁっぷりじゃ──!」

 両手をかかげるホーおじいちゃんが、飛び跳ねてる。

「紹介料はの、請求金額の1割でお願いしますぞ。たあっぷりのときは、わしも、たあっぷり!」

 くねくねしてる!

「お菓子とお茶をおまけしてくれますか」

「もちろんですぞい!」

 むーちゃんとホーおじいちゃんが、硬い握手を交わしてる!

「ではでは、契約成立ということでな、文書にしておきますでな。
 ナヒカ街の薬草組合は非公認であるものの、ちっちゃいのとお兄さんの、よい子な闇薬士を推薦し、紹介料を1割、賃料をふさわしい額もらう代わりに、できる限りの庇護を約束すると」

 ふんふん鼻歌を歌う、ホーおじいちゃんのとんがり帽子が揺れる。

「お茶を淹れよう。お菓子も喰うてゆくかの? 契約のお祝いじゃ!
 おかねは、もちろん、いただきますがの」

 にこにこするホーおじいちゃんに、ムニャとふたりで笑う。


「おねがぃ、しましゅ! あ、あと、よい、ぉなべの、おみせ、ぉしえて、くだしゃい!」





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