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たあっぷり
僕を守るように前に立ったムニャの夜の瞳が、まっすぐホーおじいちゃんを見つめた。
「僕が調合した風に見せかけて、顔を隠して売れば、より、ぽてを守れる」
「そのとおり。こっそり薬草組合が支援しますぞ。
ふたりで闇薬士、やってみるかえ?」
「ぼ、ぼく、がんばゆ、から、むーちゃんは、おやしゅみ……」
「だめ!」
しかられた僕が、びくんとふるえる。
あわてたように抱きしめてくれたムニャが、ささやいた。
「やるなら、ふたりで」
「で、でも、むーちゃん、ふたん、いっぱぃ? したく、なぃ?」
心配で見あげたら、ムニャは首をふる。
「ぽてが心配なんだ。危険が及ぶようなことは、して欲しくない。
……でも、ぽてが、やってみたいと願うなら──全力で、叶えてあげたいと思う」
僕を抱きしめたムニャが、笑ってくれる。
「ふたりで闇薬士、やります」
まっすぐなムニャの瞳に、ホーおじいちゃんが胸をたたく。
「薬草組合、こっそり公認じゃからの、そこの裏を使ってよいぞい!
賃料と紹介料はもちろん、いただくがの。よい話だとは思わんか?」
片目をつぶるホーおじいちゃんに、ムニャとふたりで笑う。
「ぁ、あの、あの、おじぃちゃん、ぼく、やくそぅ、ちゅむ、だけ、で……ぉくすり、つくゆの、しらにゃい……」
もじもじする僕に、ホーおじいちゃんは首をかしげる。
「闇だからのう、薬草をすり潰して売ればいいんじゃないかえ?」
ホーおじいちゃんが、てけとーです!
吹きだしたムニャが笑う。
「僕が勉強します。得意なんです」
えへんと胸を張るむーちゃんが、かっこいー!
「で、でも、むーちゃん、たぃへん……」
「ずっと忌まれてきた僕が、誰かの力になれるかもしれないなんて、ぽてと一緒に薬士をするなんて、わくわくする!」
きらきらの星の瞳で笑ってくれる。
「むーちゃん」
抱きしめるのに、抱きついているようにしか見えないと思うのは、とっても残念なのですが。
ぎゅうぎゅう、ムニャを抱きしめる。
「むーちゃんと、ふたりで、くしゅし!」
「やってみようね、ぽて」
おでこをくっつけて、熱い頬で笑った。
「ほうほう、じゃあ、やばーい魔法契約を用意しておくでの。
ちっちゃいのは、まじめさんだからの、薬士組合に、薬の作り方を聞きにゆくかね?
紹介はできるが、紹介料をもらうのと、向こうで講義料を取られるのう」
「お願いします」
むーちゃんが、ふところの、おかねを、じゃらじゃらさせてる……!
「あ、あのあの、で、でも、た、たかぃ……?」
ぷるぷるする僕に、ホーおじいちゃんは指をたてた。
「薬士組合に紹介料は銅貨30枚、薬士の基本講義は回数にもよるが、銀貨1枚から5枚くらいじゃのう」
「ぴゃ──!」
のけぞる僕を抱っこしたムニャが微笑む。
「先行投資だから。もっともっと、稼ぐでしょう? 闇だから」
むーちゃんが、にこにこしてる!
「いひひひひ。そうじゃ、闇のいいところは、価格設定が、ないことじゃ──!」
ホーおじいちゃんの目が、爛々してる──!
「で、ででででも……!」
あわあわする僕に、ムニャが笑う。
「おかねのない人からは、ちょっぴり。いじわるな、お金もちからは、たっぷり。ね?」
「た、たっぷり……!」
「そうじゃ、たぁっぷりじゃ──!」
両手をかかげるホーおじいちゃんが、飛び跳ねてる。
「紹介料はの、請求金額の1割でお願いしますぞ。たあっぷりのときは、わしも、たあっぷり!」
くねくねしてる!
「お菓子とお茶をおまけしてくれますか」
「もちろんですぞい!」
むーちゃんとホーおじいちゃんが、硬い握手を交わしてる!
「ではでは、契約成立ということでな、文書にしておきますでな。
ナヒカ街の薬草組合は非公認であるものの、ちっちゃいのとお兄さんの、よい子な闇薬士を推薦し、紹介料を1割、賃料をふさわしい額もらう代わりに、できる限りの庇護を約束すると」
ふんふん鼻歌を歌う、ホーおじいちゃんのとんがり帽子が揺れる。
「お茶を淹れよう。お菓子も喰うてゆくかの? 契約のお祝いじゃ!
おかねは、もちろん、いただきますがの」
にこにこするホーおじいちゃんに、ムニャとふたりで笑う。
「おねがぃ、しましゅ! あ、あと、よい、ぉなべの、おみせ、ぉしえて、くだしゃい!」
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