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舞踏会編だよ!
ぱんぱかぱん!
しおりを挟む謁見の間に、いらっしゃった帝王陛下は、ルァル殿下のお兄さんと言っても通りそうな、可愛くてちっちゃい方だった。
ぽかんと開けそうになった口を、透夜はあわてて引き結ぶ。
よい子の隠密団の皆は、ふつーの顔をしたままだった。つよい。
魔法で子どもができて、魔力の強いほうが母になるから、ルァル殿下のおかあさんらしい。若い。かわいい。
息子が衛士の装いをしてるのを事前に聞いていなかったのか、ちょっと眉をあげただけでスルーしてた。
すごい。
さすがルァル殿下のおかあさんだ。
ノィユも『なにこのちっちゃくて可愛い帝王陛下──!』ってもだもだしてた。
きみも『ちっちゃくて可愛い』仲間だぞ。
敵国の使者が3歳とかな!
しかしノィユは転生者、やる男だ。
「ネメド王国は、ドディア帝国となかよくしたいです!」
拳をにぎって訴えてた。
転生者仲間として誇らしい。
ノィユが頑張っているのだ、だいぶ大人(でも12歳。中身30代だろうから忘れがち)な自分もがんばらねば!
というわけで、謁見が終わったら早速、ジゼのおとうさんゲォルグ(ジゼがおっきくなったらこうなるのだろうという、すさまじいかっこよさ)のお友達で天才魔道具士のノザさんを紹介してもらいました。
筆頭高位貴族らしい。そんな人にさっくり逢わせてくれて、だいじょぶなのかなーと思ったら、すんごい魔導士でもあった。変なのは自分で撃退できるタイプだ。
「面白い曲を作りたいんだって?」
魔道具の部品が散らばるカオスなお部屋で、さらさらの藍の髪を揺らして聞いてくれた。
さすがBLゲーム、皆、かっこいー!
面白そうに閃く藍の瞳に、透夜は身を乗り出した。
「そうなんです、こう電子がピコピコしてるような」
「でんし? ぴこぴこ?」
そうだよね、そこからだよね……!
擬音、擬態、口真似を駆使した透夜の奮闘と、天才ノザの洞察力の深さのおかげで、アイドル曲ができましたよ!
「え、すごい……!」
「すごぃ、でし、透夜たん、ノザしゃま!」
ノィユもリトも感動してくれた。
リトのぽふぽふしっぽに、ノザが胸を押さえてうずくまってた。わかる。
「あとは、動いてるところを映像として残せる魔道具だっけ?」
話のはやいノザ!
透夜はぶんぶんうなずいた。
「そうなんです! 踊ってるところを録画して確認して、合わせたいんです」
「なるほど。細かい停止とかできたほうがいいんだね?」
「巻き戻しとか!」
「やってみる」
無茶ぶりについてきてくれるノザが、天才すぎる!
ぱんぱかぱ──ん!
「でけた!」
魔道具を掲げてくれるノザが、輝いてる。
「すごい!」
「ありがとうございますー!」
皆で拍手した。
「これで録画して、ちょっとずれちゃうところを、合わせられるようになろう!」
「あい!」
ぽふぽふしっぽでうなずいてくれるリトに、皆で胸を押さえた。味方を攻撃するリト。かわいい。
貸してくれた別室で3人が頑張ってダンスを合わせてくれている間に、透夜とノザは曲を用意してゆく。
「あのう、会場を暗くして、光の線、いろんな色を発射したり、歌ってる人に太い光をあてたり、できますか」
レーザー光線みたいなのとか、スポットライトとか、ぜひお願いしたい!
アイドルだから!
目に力をこめた透夜に、ノザは吐息した。
「あー光魔法の使い手がいないと無理かな。ここ百年いないって聞いたけど」
首をふるノザに、透夜ががっかりするよりはやく、リトがしゃっと手を挙げてくれる。
「僕、使えましあ!」
ぽふぽふしてる。
「リトたん! かわいいだけじゃなくて、つおいなんて、最高じゃないか!
……え、光魔法が使えるなんて、主人公だった!?」
真剣に聞いてしまった。
「もぶですら、ないでしあ」
リトたんをしょんもりさせてしまったらしい。
「……トゥヤ……?」
つきそいのジゼから、凍気が噴きあがる。
透夜の前髪も凍りました。ごめんなさい。
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