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幼馴染み
しおりを挟む赤子のときからゲォルグが傍にいたからだろう、天才的な閃きで魔道具を開発するノザだが、自分が何をしているのか、きちんと凡人にも理解できるように説明してくれる。
これが魔法の天才だと
『んー、ぽんってやる』
意味不明な解説をされて
『やってみて』
最上級魔法を要求される。
無理しかない。
しかしノザの解説は
「①を達成するためには、感情制御の術式を組みこむことになる。となると、基本の魔法式はこうなるが、これだとすべての感情が死滅し廃人となってしまう。隷属に使われる術式だな。それは困るだろう。よって改変が必要だ。問題はどう魔法式を書けば性的興奮だけを的確に抑制できるかということだ。精霊語の起源を遡ると、性という記述がないことに気づく。これは精霊に性別が存在しないことの証左であり──」
紙が真っ黒になっても終わらない。
「ノザの話はとても面白いんだが、今、領地を回らなくてはいけなくて、時間があまりとれないんだ、すまない」
もしゃもしゃ髪の向こうの藍の瞳が瞬いた。
「ああ、ジェディス家恒例の従僕集めか。大変だな、ゲオちゃん。よさそうな子はいたか?」
心配してくれるノザは、いつもやさしい。
「優秀な子はたくさんいるが、俺に仕えてくれるか、俺と相性がよいかとなると、難しいな」
「がんばれ。ゲオちゃんならできるよ」
肩を叩いてくれるノザの手が、あたたかい。
「魔道具作りで、俺が力になれることはないだろうか」
「もうちょっと試作してみるよ。ゲオちゃんのが、間違って落ちたりしないように」
ひっひっひ。
笑うノザに、引き攣ったゲォルグも笑ってしまう。
勃起しなくなくなる魔道具、なんてものを作ってくれるくらい、ノザはやさしい。
そんな大切な幼馴染みにこんな無体を強いてごめん……!
しかし頼るのはノザしかいない。
それに家族とメナ以外では、いちばん
「ノザを信じてる」
もしゃもしゃの髪の向こうの藍の瞳が、まるくなる。
「……うん」
はにかむように笑うノザは、びっくりするほど可愛くて。
「おお? 恋に落ちたか?」
にやにやするノザがいつもどおりで、吹きだして笑った。
「告白してもいいんだぞ!」
両手を広げるノザに告げる。
「頼りにしてる」
「……うん。なるべく副作用がないように頑張るが、ちょっと難しいかもしれない。術式が複雑すぎるんだ」
「落ちないなら我慢する」
笑ったら、ノザも笑った。
「僕もがんばるから、ゲオちゃんも、がんばれ」
「ありがとう、ノザ」
感謝と友愛で抱きしめたら、ふわふわ赤い頬でノザが笑う。
「ゲオちゃん、めちゃくちゃいい匂いするよな。あったかい」
「もしゃもしゃノザは小熊みたい」
「いや、これは告白する場面だぞ!?」
「お友達でいましょう?」
「ひどすぎる!」
ふたりで笑ったら
バァーン!
音をたてて扉が開いた。
「ちょっと、伴侶になる前にノザちゃんに手を出すとか、止めてくれない!?」
一番めんどうくさい第二子ノノ光臨だ。
「ノザちゃんが成人して伴侶になれるまであと半年だから、もうすこし待ってくれるかな」
次にめんどうくさい第一子ノナも来た。
「……いや、あの……伴侶の予定はないのですが……」
進言してみた。
「ひどい!」
言葉と裏腹に、ノザの唇は、笑ってる。
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