【完結】ずっと、だいすきです

  *  ゆるゆ

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10年

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「ほんの数日しか先輩じゃないから、大丈夫。一緒に、ゲォルグさまをお支えできたら、うれしい」

 ふうわり微笑むセバに、ソゾもコゴも、ちょっと赤くなった。

「……なんか……我らがあるじは、面食いだな……」

「コゴ兄、それを言ったらさ、俺らがすんごい顔面ってことになるぜ」

「……ちがうな」

「違うぜ」

 コゴとソゾがうむうむしてる。

「いや、ふたりとも、かっこいーと思う。
 俺は哀願されたから仕方なくだろうけど、ゲォルグさまは面食いじゃないか?」

 あんぐり口を開けたふたりが、仰け反った。

「仕方なくぅ!?」

「セバを!?」

「ないないないないないない!」

 ぴったり同時に首を振るふたりが楽しい。

「ありがとう」

 気持ちだけ、もらう。


 でもほんとうに、そうなんだ。


 ゲォルグさまは、泣きつかれたから、仕方なく。

 いつも、心を抉られる。


 そのたび、あなたしか見えなくなってく。








『魔道具できたよー、おいでー』

 ゲォルグの自室に備えてある魔法陣が輝いて、ノザの言葉を伝えてくれた。

 すぐにゲォルグはロァルド公爵邸へと向かう。

 隈をくっつけたノザが、本と書と魔道具にうもれ、あくびをしながら迎えてくれた。

「いらっしゃーい」

「俺のせいで、ごめん」

 深々と頭をさげるゲォルグに、ノザは首を振る。

「僕がしたくてしたんだ。ゲオちゃんが困ってるときに力になれるのは、うれしい。ゲオちゃんに変な虫がついたら大変だしな!」

 笑ったノザが、あくびを噛みころしながら、魔道具を取りだした。

「これ」

 ちいさな蒼の魔石の輝く、指輪だ。

「こんなに小さいのか?」

 驚くゲォルグに、ノザが頷く。

「牽制しないとだめだろう? 変な虫を。一番いいのは、左手の薬指の指輪かな、と。ちいさくするのに苦労した」

「こんなに小さな魔道具、初めて見た。……指輪が牽制になるのか?」

 首を傾げるゲォルグに、ノザが頷く。

「異国の風習だそうだ。左手の薬指の指輪は、伴侶がいます、とか、恋人がいますっていう意味になるらしい。最近、ドディア帝国でも流行りはじめたみたいだよ」

「へえ」

 ちいさな指輪を嵌めてみようとしたゲォルグを、ノザの指が止める。

「勃起しなくなる」

「それが望みだった。……指輪だと、外れてしまうのが心配だな。ノザの許可がないと、外れないようにしてくれないか」

「僕の?」

 目をまるくするノザに頷いた。

「俺は自分を信用できない。だからノザに頼みたい。俺が外してくれと懇願しても、10年経過するまで、決して外れないようにしてくれないか」

「10年──!?」

 仰け反るノザに、頭をさげる。

「頼む」

「……何か事情があるんだね」

 吐息したノザの手が、ゲォルグの頭をやさしく撫でた。

「僕を頼ってくれることを、とてもうれしく思う。わかった。外れないように細工をしよう。……でもこの魔道具、勃起しなくなることには成功したんだけど、感情の起伏まで、すこし平坦になるみたいなんだ」

「問題ない。勃起しないことが、最優先だから」

 断言するゲォルグに、ノザの肩が落ちる。

「確かに、変なのに捕まったら、人生が終わっちゃうよな」

 ぽふぽふゲォルグの肩を叩いたノザは微笑んだ。

「魔法契約を追加しよう。体調不良などの副作用がある場合を除き、僕の許可と10年の経過がないと外せない。これでいい?」

 契約を確認したゲォルグが、自らの血で署名する。

「ありがとう、ノザ」

「ゲオちゃんの力になれて、うれしい。えへへ」

 照れくさそうに笑ったノザが、魔法契約を魔道具に搭載し、機動させる。
 あざやかな魔力の渦が、ちいさな指輪に吸いこまれて、消えてゆく。

「嵌めてあげよう!」

 ノザが手をとってくれた。
 ゲォルグの薬指に、指輪が嵌まる。

 蒼い魔石が、光を放った。

「……どう?」

 心配そうに覗きこんでくれるノザに、指輪の嵌まった手を握って開いたゲォルグは首を傾げた。

「特に何も変化がない、と思う」

「もし具合が悪くなったりしたら、すぐ教えて」

「わかった。ほんとうに、ありがとう、ノザ」

 抱きしめたら、朱い頬で笑ってくれる。

「頼れる幼馴染みだろう」

「最高の友だ」

 ずっと寝ないで頑張ってくれたのだろうノザを、抱きしめた。



 ノザが、たすけてくれるから。
 だいじょうぶだ。

 これで、帝立学院に、入学できる。

 セバの傍に、いられる。

 この先、10年、ずっと。






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