【完結】ずっと、だいすきです

  *  ゆるゆ

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伴侶




 ゲォルグとエィラ、ふたりが伴侶契約を交わした。

 ドディア帝国での伴侶は、家と家との契約だ。
 互いの家に不利益がないよう、利益となるよう、綿密に契約書を作成し、両家当主の認可と、ドディア帝王の許可を得て、はじめて伴侶契約となる。

 ひとりひとりに宿る魔紋を使って、伴侶となることを誓約し、ドディア帝王陛下の認可を得れば、伴侶として認められる。

 氷のようにきらめくゲォルグの魔紋と、愛らしい薄紅のエィラの魔紋が重なるさまを、ゲォルグの従僕として見守ったセバは、焼け爛れる胸で、微笑んだ。

「おめでとうございます」

 ……笑えたと思う。

 ちゃんと、口角はあげた。
 涙が滲んでいても、感動しているからに見えるといい。

 セバを見たエィラが、心を痛めたように目を伏せた。


 やさしいエィラは、きっと心配してくれているのだろう。

 セバの目にゲォルグしか映っていないことは、誰の目からも明らかなようだから。


 涙をぬぐったセバは、祝福を告げる。

「おめでとう、エィラ。しあわせに、なってね」

 ちいさなエィラのかんばせが、くしゃりとゆがんだ。


「……セバ……!」

 抱きつくエィラを、抱きしめる。


「……ごめん……」

 ちいさな、ちいさな声に、驚いたセバは首を振る。


「エィラが謝ることなんて、何もない。ゲォルグさまの子をうんでくれるんでしょう? ゲォルグさまの従僕としても、とてもうれしいよ」

 本心だった。

「心から感謝を。ありがとう」

 セバを見つめたエィラの薄紅の瞳が、ゆれる。


「……僕は……」

 エィラの手のなかで、心の臓の形の紅いひかりがきらめいた。



「帝王陛下の勅令だ。魔導院へ」

 ゲォルグの言葉に、セバはエィラとともに振り返る。 

 エィラと伴侶になったゲォルグは、手をのばせばふれられるほど近くにいるのに、どこか遠く霞んでゆく。

 見あげるゲォルグが輝くようで、セバはそっと、目を伏せた。


「多大な負担をかけてしまうが、俺の子をうんでくれることに、感謝する」

 微笑むゲォルグの氷のかんばせに、エィラはかすかに息をのむ。


「ありがとうございます、エィラさま」

 ゲォルグの伴侶になったのだからと敬礼するセバに、エィラは目を剥いた。


「やめてよ! 今までどおりでいい。……セバが……こんなひどいことをする僕と……まだ、ともだちで、いてくれる、なら……」

 ふるえる声に跳びあがったセバは、笑う。


「俺と、ともだちになってくれたのは、エィラだけだよ」

 伴侶契約をした緊張にだろうか、冷たいエィラの手を握る。


「あるじの伴侶としても、よろしく、エィラ」

 今度は、ちゃんと、笑えた。

 安堵したセバの唇が、やわらかに笑みをえがく。



 はじめて逢ったときから、エィラはずっと、やさしかった。

 ただ、おなじ人を想っただけ。


 ──選ばれたのは、エィラだった。

 ただ、それだけ。


 だからセバは、焼け熔ける胸で、笑う。


「しあわせになってね、エィラ」

 友のしあわせと、自分のさいわいが、並び立たないことを哀しく思った。


 ……いや、何を、あさましいことを。


 セバは、首をふる。


 ゲォルグさまのお傍でお仕えできる。
 それこそが、至上の、さいわいだ。


 泣いてすがって、従僕にしていただいたことを思いだす。


 ただひとりのあるじのお傍にいられる、至上のしあわせを、噛み締めた。






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