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あなたのお傍にいるために
ドディア帝国魔導院は、大陸一の精度を誇る。
それを証明するかのように、ゲォルグとエィラの魔術は成功し、子がうまれた。
魔力の繭につつまれた、今は見えぬほどちいさなちいさな卵のような子は、魔導院で大切に保管され、これからおおよそ1年くらい、ふたりの魔力を定期的に注いでゆくと赤子へと成長し、繭を裂いて生まれてくる。
魔術は成功したものの限界まで魔力を放出したというゲォルグは倒れ、意識がない。エィラも身を削るように魔力を使い果たし、倒れていた。
「ゲォルグさま……! エィラ!」
駆け寄ったセバの前で、ふたりの苦しそうな弱々しい息がこぼれる。
「大事ないのですか……!」
不敬かもしれない、それでも叫んでしまったセバに、セバの魔力鑑定もしてくれた、おじいちゃん魔導士は眉をさげる。
「……おそらく」
──魔法で子どもができる。
腹が大きくなって苦しくなることも、中毒になることも、身を裂くこともない。
同性同士でも、子ができる。
夢のような法だが、命の危険があることは、変わらない。
魔力を使い果たし、儚くなってしまう人もいる。
より魔力の弱いほうが消えてしまうことが多い。
ゲォルグとエィラの場合は、ゲォルグだ。
「ゲォルグさま──!」
悲鳴をあげるセバを止めてくれたのは、メナだ。
「落ちつけ、セバ。魔力枯渇だ。重症だが、おそらく命の危険はない」
「僕たちが魔力を注ぐ。回復してくれるはずだよ」
青い顔で微笑んでくれるイルヤとジーグに、頭をさげる。
「……分不相応な、無神経な言動を、誠に申し訳ございません」
ジーグもイルヤも首を振った。
「ゲオを心配してくれて、ありがとう」
すぐにゲォルグに魔力を注ぎ始めるイルヤとジーグの隣で、エィラの両親もエィラへと魔力を注いでいた。
「ああ、エィラ……!」
「だいじょうぶだよ、たすけるから──!」
平民と思えない魔力量に、その場の皆が目を瞠る。
注がれる魔力に、ゲォルグとエィラの顔色が、少しずつよくなってゆく。
弱々しかった吐息が、安らかなものに変わってゆく。
「……よかった、ゲォルグさまも、エィラも」
安堵して崩れ落ちるセバを、ガチムチのコゴが支えてくれた。
「伴侶となられたのですから、ジェディス邸にいらっしゃいますか。万全の看護をいたします」
イルヤの言葉に、エィラの両親は顔を見あわせる。
「私どもは、お見舞いに伺ってもよろしいですか」
「勿論です。いつでもいらしてください。お泊まりになれるよう、部屋もご用意します。エィラが落ち着くまで、それ以上でも、心ゆくまで滞在なさってください」
微笑むジーグに、エィラの両親が深々と頭をさげる。
「エィラをどうぞ、よろしくお願いいたします」
ジーグとイルヤは、微笑んだ。
「大切な御子をあずけてくださって、ありがとう。ゲォルグの子をうんでくれることを、心からよろこばしく思います」
ジーグとイルヤとともに、ジェディス邸のみなで、こうべを垂れる。
セバも手を胸に、深く頭をさげた。
ゲォルグを母上であるジーグが抱きあげ、エィラをガチムチなコゴが抱きあげる。
ソゾの操る馬車は驚くほど揺れず、ゲォルグとエィラをそっとジェディス邸まで運んだ。
「……エィラの世話をするのが辛いなら、僕がしようか」
メナの言葉に、きょとんとしたセバは首をふる。
「ゲォルグさまの伴侶は、俺にとっても大切な方です」
「……そうか」
うつむくメナは、きっとセバを心配してくれているのだろう。
「ご心配を、ありがとうございます、メナ先生。俺は、エィラがゲォルグさまの子をうんでくれることを、とてもうれしく思います。エィラがいなければ、ゲォルグさまに、お子はなかった」
微笑むセバに、メナは顔をあげる。
「……セバは、強いな」
きょとんとしたセバは、首を振る。
「心から、ゲォルグさまをお慕いしているだけです」
あなたに、御子ができることが、うれしい。
あなたのお傍にいられることが、うれしい。
あなたを想う心が裂ける痛みさえ、いとしい。
「……セバはほんとうに……ゲォルグさまの従僕になるために生まれてきたんだな」
「はい!」
心から、笑った。
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