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4.ルーカス
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薄れゆく意識の中で僕はかすかに口角を上げた。計画通り、僕は彼女の手によって死ぬことが出来る。
愛しいグレース、これで僕は君を手に入れられる。
ダンをあのように殺したのは失敗だった。それに気づいたのは全てが終わった後だ。あの時は、アイツを消した達成感でいっぱいだったが、なんら不和のないまま死に別れたことで、グレースの中でアイツとの記憶は美化されてしまった。そのせいで僕が何をしようと思い出を超えることは出来なかった。
それでも、彼女の愛が向いたことで一時は満足した。僕を映すその瞳と笑顔に。
でも人間というのは我儘で、それ以上がすぐに欲しくなる。僕と同じように一番に思ってほしい。
そこで考えて、考えて――
僕は憎しみを貰うことにした。愛情と憎悪は紙一重。愛情の全てが貰えないのなら、君の憎しみは全て貰う。ダンを殺したのが僕だと分かれば、君の憎悪は全て僕に向かうだろう。
少しずつ偶然を装い、僕がダンを殺した証拠を与えていった。うろたえる君のなんと愛らしいことか。君の性格では誰かに打ち明けることはせず、一人で決着をつけると思っていた。
だから僕は素知らぬ振りをしながらずっと見ていた。僕の隣で硬くこわばり眠れずにいる君も、ネズミに見つけた毒を与え殺してしまい青ざめる君も。その強い憎悪を早く僕に向けてほしいと願いながら。
そしてようやく今日、実行してくれた。
愛よりも強い憎悪を受けて、その瞳に映され僕の胸は幸福で満たされた。
優しいグレース。君が僕を殺したことで芽生える罪の意識と憎しみで、僕は君の中で永遠になるんだ。この先君が誰を愛しても、僕以上の者は現れない。
一番になれない愛なんていらない。君の一生に残る傷になりたい。だからグレース。
僕を永遠にゆるさないで。
愛しいグレース、これで僕は君を手に入れられる。
ダンをあのように殺したのは失敗だった。それに気づいたのは全てが終わった後だ。あの時は、アイツを消した達成感でいっぱいだったが、なんら不和のないまま死に別れたことで、グレースの中でアイツとの記憶は美化されてしまった。そのせいで僕が何をしようと思い出を超えることは出来なかった。
それでも、彼女の愛が向いたことで一時は満足した。僕を映すその瞳と笑顔に。
でも人間というのは我儘で、それ以上がすぐに欲しくなる。僕と同じように一番に思ってほしい。
そこで考えて、考えて――
僕は憎しみを貰うことにした。愛情と憎悪は紙一重。愛情の全てが貰えないのなら、君の憎しみは全て貰う。ダンを殺したのが僕だと分かれば、君の憎悪は全て僕に向かうだろう。
少しずつ偶然を装い、僕がダンを殺した証拠を与えていった。うろたえる君のなんと愛らしいことか。君の性格では誰かに打ち明けることはせず、一人で決着をつけると思っていた。
だから僕は素知らぬ振りをしながらずっと見ていた。僕の隣で硬くこわばり眠れずにいる君も、ネズミに見つけた毒を与え殺してしまい青ざめる君も。その強い憎悪を早く僕に向けてほしいと願いながら。
そしてようやく今日、実行してくれた。
愛よりも強い憎悪を受けて、その瞳に映され僕の胸は幸福で満たされた。
優しいグレース。君が僕を殺したことで芽生える罪の意識と憎しみで、僕は君の中で永遠になるんだ。この先君が誰を愛しても、僕以上の者は現れない。
一番になれない愛なんていらない。君の一生に残る傷になりたい。だからグレース。
僕を永遠にゆるさないで。
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