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プロローグ
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世界が赤く燃えている。
炎に包まれた街の中。その中心で、一つの命が消えようとしていた。
「ごほッ」
数多の刃をその身に受け、その命が燃え尽きるまでさほど時間も無い。それでも、青年は自らの想いに動かされ足掻いた。
「おれ、は……ッお前達を、……守れたか?」
炎に包まれた場所で独り。逃げ場は無い。青年――黒蒼は涙を流した。
「ぅ゛、ぐ……ごぼッ!!」胃の淵からせり上がってくるものに、抑え込むことも出来ずに吐血する。
裏切り者と呼ばれても、守る為ならばとこれまで胸を張って来れた。けれど――
「どれだけこの身が傷付いても、お前達の言葉は、今も、胸の中にある。思い、出す」
守ろうとした者からの言葉は、どんな刃よりも鋭く胸に突き刺さった。
嗚呼、痛い。
思い出しただけで心が悲鳴を上げる。
「死、にたくない。しに゛だぐない゛な゛ぁ……ッ」
それは本心。
その年齢から、死ぬにはまだ早い。
だが身体には数多の刃。
血の海に沈み、黒蒼は独り息絶えた。
『黒蒼ッ』
最後に、敵であった少女の声を聴いた気がした。
※
火を放ち、部隊を下がらせた後、少女は炎に包まれた世界を走っていた。
「黒蒼、何処だ、何処にいる! 私だ、乱銀だ! 返事を、返事をしてくれ!」
少年のような出で立ちをした少女は黒蒼の名を叫ぶ。彼女は走り、炎の中に躊躇なく飛び込み黒蒼を探す。探す。
「頼む、黒蒼ッ……どうか、生きててくれッ。敵であった私を、私の髪を褒めてくれたのは、お前が初めてだったんだ!!」
戦装束は燃え、所々に火傷を負いながら彼女は願う。敵であった、彼の無事を。
敵として幾度と刃を交わした中で一度、生まれ付きのストロベリーブロンドの髪を、黒蒼は褒めたのだった。
真剣を交える、大事な場面での出来事。当然、乱銀は怒りに震えた。
そして言った。
敵将を褒めるな、と。
『……本当に、綺麗だと思って言っただけだ』
優しい瞳。薄っすらと笑みを浮かべた黒蒼は答える。その時は、それだけだった。
「蒼波!」
ガウン、と銃声。
銃声に思わず目を瞑ってしまった。慌てて目を開けた時には、既に黒蒼は姿を消していた。
それから、何度か刃を交える機会はあった。
敵味方でも、殺さずを心掛けていた騎士が居た。それが黒蒼だった。優しさがあった瞳に陰りが見えたのは何時からだったろう。何かを諦めた表情を見せるようになった事にも、乱銀はすぐに気が付いた。
「黒蒼ッ」
ふわりと濃い血の香りの香りが鼻に衝いて、反射的に乱銀は叫んだ。
屋根から跳躍して地面に着地。ぐるりと見回して――息を、飲んだ。
「こ、くそう……黒蒼ォッ‼」
血の海に沈む、黒蒼の姿。
「ぁ……ぁあああアあァああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼」
頭を抱えて、絶叫。
息の続く限り、乱銀は叫んだ。
「黒蒼、黒蒼ォッ‼」
動かぬ身体に縋り付いて、乱銀は言う。
「待って、逝くなッ黒蒼! 私を、一人にしないでッ‼」
ぼろぼろと、みっともなく泣いてもう動かない黒蒼を抱いた乱銀は決意を決める。
「一人は、嫌だ……ひとりは、苦しいッ……こくそう、私も……一緒に連れて行って」
刃を交える内に知らず惹かれていた。
かちゃり、黒蒼の扱っていた武器の内の一つを手に取る。彼は何時も、大切そうに二つの魔具を所有していた。その内の一つ。
拳銃を手に、
「もし、もしも生まれ変わることが出来るなら」
引き金に力を込め、
「黒蒼、またお前に逢いたいな」
炎に包まれた世界で。
一人の少女は息絶えた青年を抱いたまま、引き金を引いた。
タァン……
たった一発の銃弾。
少女は最後に、一筋の涙を流した。
炎に包まれた街の中。その中心で、一つの命が消えようとしていた。
「ごほッ」
数多の刃をその身に受け、その命が燃え尽きるまでさほど時間も無い。それでも、青年は自らの想いに動かされ足掻いた。
「おれ、は……ッお前達を、……守れたか?」
炎に包まれた場所で独り。逃げ場は無い。青年――黒蒼は涙を流した。
「ぅ゛、ぐ……ごぼッ!!」胃の淵からせり上がってくるものに、抑え込むことも出来ずに吐血する。
裏切り者と呼ばれても、守る為ならばとこれまで胸を張って来れた。けれど――
「どれだけこの身が傷付いても、お前達の言葉は、今も、胸の中にある。思い、出す」
守ろうとした者からの言葉は、どんな刃よりも鋭く胸に突き刺さった。
嗚呼、痛い。
思い出しただけで心が悲鳴を上げる。
「死、にたくない。しに゛だぐない゛な゛ぁ……ッ」
それは本心。
その年齢から、死ぬにはまだ早い。
だが身体には数多の刃。
血の海に沈み、黒蒼は独り息絶えた。
『黒蒼ッ』
最後に、敵であった少女の声を聴いた気がした。
※
火を放ち、部隊を下がらせた後、少女は炎に包まれた世界を走っていた。
「黒蒼、何処だ、何処にいる! 私だ、乱銀だ! 返事を、返事をしてくれ!」
少年のような出で立ちをした少女は黒蒼の名を叫ぶ。彼女は走り、炎の中に躊躇なく飛び込み黒蒼を探す。探す。
「頼む、黒蒼ッ……どうか、生きててくれッ。敵であった私を、私の髪を褒めてくれたのは、お前が初めてだったんだ!!」
戦装束は燃え、所々に火傷を負いながら彼女は願う。敵であった、彼の無事を。
敵として幾度と刃を交わした中で一度、生まれ付きのストロベリーブロンドの髪を、黒蒼は褒めたのだった。
真剣を交える、大事な場面での出来事。当然、乱銀は怒りに震えた。
そして言った。
敵将を褒めるな、と。
『……本当に、綺麗だと思って言っただけだ』
優しい瞳。薄っすらと笑みを浮かべた黒蒼は答える。その時は、それだけだった。
「蒼波!」
ガウン、と銃声。
銃声に思わず目を瞑ってしまった。慌てて目を開けた時には、既に黒蒼は姿を消していた。
それから、何度か刃を交える機会はあった。
敵味方でも、殺さずを心掛けていた騎士が居た。それが黒蒼だった。優しさがあった瞳に陰りが見えたのは何時からだったろう。何かを諦めた表情を見せるようになった事にも、乱銀はすぐに気が付いた。
「黒蒼ッ」
ふわりと濃い血の香りの香りが鼻に衝いて、反射的に乱銀は叫んだ。
屋根から跳躍して地面に着地。ぐるりと見回して――息を、飲んだ。
「こ、くそう……黒蒼ォッ‼」
血の海に沈む、黒蒼の姿。
「ぁ……ぁあああアあァああああああああああああああああアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼」
頭を抱えて、絶叫。
息の続く限り、乱銀は叫んだ。
「黒蒼、黒蒼ォッ‼」
動かぬ身体に縋り付いて、乱銀は言う。
「待って、逝くなッ黒蒼! 私を、一人にしないでッ‼」
ぼろぼろと、みっともなく泣いてもう動かない黒蒼を抱いた乱銀は決意を決める。
「一人は、嫌だ……ひとりは、苦しいッ……こくそう、私も……一緒に連れて行って」
刃を交える内に知らず惹かれていた。
かちゃり、黒蒼の扱っていた武器の内の一つを手に取る。彼は何時も、大切そうに二つの魔具を所有していた。その内の一つ。
拳銃を手に、
「もし、もしも生まれ変わることが出来るなら」
引き金に力を込め、
「黒蒼、またお前に逢いたいな」
炎に包まれた世界で。
一人の少女は息絶えた青年を抱いたまま、引き金を引いた。
タァン……
たった一発の銃弾。
少女は最後に、一筋の涙を流した。
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