CRYSTHL―クリスタル―

気紛屋 月影

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能力把握。

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 白狼の号令に、各々一斉に動き出した。

 「アイスブレイド!」
 「サンボルト!」

 何人かの生徒が連携して、即席の模擬人形に攻撃している。どうやら上手く超人的能力は扱えているようだ。それを横目に、白狼は黒蒼を探した。

 「ッ――……俺は、炎か?」
 一人、黒蒼は自分の特性を考えて、頭に浮かんだのは、炎。
 「……よし」
 大剣を握って、掲げる。目を閉じて、刀身に炎が纏うイメージをした。
 「蒼炎ブルーファイヤ
 黒蒼の声と共に大きく揺らめく。
 赤い炎のイメージとは逆の、蒼い炎。

 「黒蒼」

 白狼は蒼い炎を刀身に纏わせ、じっと見詰めている黒蒼を呼んだ。白狼の声に気付いた黒蒼が刀身から目を離し、炎から意識が離れる。
 「白狼? 何か用か?」
 蒼の炎は消えた。


 「部隊編成? それなら俺じゃなくて、あそこに居る遠藤に聞いた方が良い」
 「遠藤?」
 「ほら、あそこに居る」
 黒蒼が指差した方向。
 数人の男女に何か指示を出している女子生徒が居た。「アイツか」眼鏡の奥にある瞳を細ませ、呟いた。

 「前衛は剣や槍が主体で、武術に心得がある人で固めて、後はサバゲー経験者の所有するライフル、拳銃も使える様なので、前衛と後衛に組み込もうと思います。
  後衛はサポートとして魔法部隊や防衛・医療部隊の隊を考えてます」

 まるで、業務事項のように説明する遠藤。
 その指示の速さ、考案に、素直に凄いと思った。黒蒼は理由を聞いた――ら、
 「今まで自分を含めて、妄想してた」と言った時には、何とも言えない気持ちになった。
 「ああ、大体は分かった。行って良いぞ」
 「はい。あ、あと言い忘れてた事が」
 「ん? 何だ」
 何時の間にか黒蒼は他の場所で練習しているグループの中に居た。白狼は白狼で、校内に戻ろうかと足を踏み出していたが、遠藤に引き留められ、足を戻した。
 「札を使った符術が出来る子が何人か、学校全体に札を貼りに行きました」
 「あー、そうか。良い判断だ」
 「ありがとうございます。私はこれで」
 「おう」
 彼女が去った後、白狼は一つ不安が残った。
 ”絶”と同じ様に魔法が使えるとはいえ、”転”では経験不足。何処まで行けるかも分からない。
 自陣の守りを張る行動は評価できる。
 陣内に一気に攻め込まれたら、戦い慣れていない生徒は一方的に殺戮されるはずだ。

 (脳内イメージは出来ても、戦えなければ意味が無い)

 中二病はまだしも、オタクが一番厄介かもしれない。
 憂鬱だ。胃が痛くなりそうだ。
 何となくだが、きりきりするような感覚。気の所為だと思いたい。
 この”毒喰の白狼”が、こんな事を気にすることなんて無いはずだ。
 「はぁぁー」
 深い溜息が漏れる。
 視線を周りにやって、「なるようになれば良いさ」ほぼ投げ遣りだ。
 何を言っても、戦いは避けられない。最後まで悪足掻きをする。それで良い。
 「……生きる為、生き残る為だ。仕方ねぇよなぁ」



 乱銀は、敵と見立てた人形をアクロバティックな動きで切り捨てる。その度に、おお、と声が上がる。…………本音を言えば、少し気が散る。
 「乱ちゃん凄いね!」
 「どうやったらそんなに出来るの?」
 女子に問われ、経験とは口が裂けても言えるわけがなく、乱銀は困った。

 「い、勢いが、大切……かな」

 どもりながらも口にし、おろおろする。無意識に黒蒼の姿を探して、はっとする。
 きゅう、と胸が締め付けられる感覚。
 距離を置かせてくれ。
 そう言ったのは黒蒼だ。黒蒼に依存していた事に気付いて、乱銀は自責する。
 「……ッ」
 口を真一文字に結んで、目の前の課題の事だけを考える。忘れろ。忘れるんだ。今は、そんな事で立ち止まっている暇なんて無い。

 「……乱ちゃん……」
 近くに居た男女は様子の可笑しい乱銀に気付いていた。けれど何も言わず、乱銀の抱える悩みから意識を逸らさせる為、行動した。

 「らーんちゃーん♪」
 「乱銀ちゃん!」
 「えッ⁉」

 顔を見合わせた女子。こくりと頷くなり、乱銀の背後から抱き締めた。身体の小さい者から、大きい者が。慰めるように数人ごと代わる代わる抱き付く。
 「お、俺も」
 男子が近付こうとするものなら、一斉に威嚇。
 「……沈め」「フェアズィンケン」
 「がぼぼぼぼぼッ⁉」
 静かな声で呪文を唱えた途端、水の檻が一人の男子を囲み水責めにする。恐怖に染まった表情。
 「ひいッ」「ひえぇええッ」
 その光景を目にした男子達。
 怯え、男同士で抱き合う。……どうやら、セクハラセンサーを感知したようだった。憐れ男子。
 死んでしまえ、下心持った馬鹿野郎。――下心を持たない、男子一同より。
 「……、…………」
 その光景を遠目から目にした白狼は、譫言のように「何も見てない。見てない」と呟いた。


 ”転”には争いが無い。
 一昔にはあったが、それは過去の話。現在は平和である。とは言っても、一部の国では戦争はあるが、それでも平和に近い。


 「……不安が残るな」
 一人、蒼炎を大剣に纏わせ、振り回していた黒蒼は思った。
 「戦闘が始まって、動けなくなるのは避けたいな」
 それは乱銀も思っていた事。
 他の生徒は、ゲームか何かと勘違いをしている。
 ライフが零になったら、アイテムで回復できるようなものではない。
 違う。
 違う。
 命の奪い合いだ。殺し合いなんだ。忘れてはいけない。忘れてはならない。

 声を大にして叫びたい。
 乱銀は苛立つ。黒蒼は冷静に見えて、同じ様に苛立っていた。
 「蒼炎ブルーファイヤ紋章エンブレム
 「紅炎レッドファイヤ紋章エンブレム
 この苛立ちを消したくて。
 ”転”この世界を守りたくて。生きたくて。
 黒蒼と乱銀は示し合わせたわけでもないのに、呪文を唱えた。
 黒蒼は蒼の炎。
 乱銀は紅の炎。
 舞を舞うかのように、二人は剣を滑らす。
 それは、温かい炎。散る炎は味方には火傷を負わさない。

 二人が放った炎の魔法は、学校の校章に形を変えた。

 紅と蒼が混じり合い、それは燃える。
 「生き残ろう」黒蒼は言う。
 「”転”この世界で最後まで幸せに生きるんだ!」乱銀が言った。
 士気を上げる為、彼等は無意識に行った。
 生き残ろう、絶対に。そして生きるんだ。寿命最期まで!



魔法把握。
 自然界の火・風・雷・水。――または土。
 考え方によって、応用可能。よって、前衛後衛にサポート。
 歌魔法。――前衛向きでは無い。攻撃よりも防衛・回復・増強型。
 魔法陣転移術。――チョークなどで描いた簡略式魔法陣。校外に数か所。学校から転移出来る。

特殊能力把握。
 符術ふじゅつ。――紙に書いた文字の通りに攻撃・防御・治癒が可能。学校全体に張る結界は、ここから来ている。
 魔法レーザーガン。――サバゲ―経験者の所持する銃火器一式。上記の符術によって、自然界魔法が打てる。
 旋律波動せんりつはどう。――楽器を使ったサポート術。歌魔法とは違い、攻撃が可能。ただし、遠距離型。歌魔法と同じ配置になる。


 
 「雷電レーザー!」「雷電に纏い、混合せよ! ヴォーゲン‼」
 魔法レーザーガンで、雷系の弾丸を放つ。弾はBB弾。無くても打てるのだが、あると威力が上がる。それに加え、水系の魔法が合わさった。
 水と雷。
 人体には害だが、人ならざる者が居るとすれば必要な技だ。
 「歌え、舞え、風と共に。風は我等の味方」
 「風は運ぶ。炎を、水を、我等味方をサポートする」
 歌うように紡がれる詠唱。
 紡ぎ歌う。
 それは広く、遠く、響き渡る。詠唱に込めるのは護りの願い。誰も死なない。死んではいけない。思いを込めて、歌う。
 準備は進んでいる。それぞれが、抵抗する為の武器を手に。
 後は、怖気付かず、戦えるかどうかだ。

 「始まるぜ。”絶”との戦いが」
 屋上に一人。白衣をはためかす保険医は空を見上げた。


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