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ブレイドと月虎。
しおりを挟む荒廃した町。
荒れ果てた町は再生されていない。
権力者の住む領地は、ここまで荒れていない。どうしてなのか。理由は、流星の石の力を引いていた。
その事について知っている者は、ほとんどいない。
知っていたとしても、口封じに殺される。だから、知られていない。
古老衆が、その証拠を握っている所為だ。
「何故だ。何故、俺達を呼ばない」
灰の雪が舞う町。
主を失った二つの魔具は嘆いた。
「……月虎。そうでも、ないみたいだぞ」
大きな身体を持つ――ブレイドが喜色を滲ませた声音で伝える。
「俺達を導くか、黒蒼!」
蒼い炎が彼等の前に現れた。その炎から感じる魔力は、二人の主の物。
温かく、優しい。
足りないものを満たしてくれるようなものだ。
「……魂は同じでも、お前じゃないんだよな」月虎はぼやく。
だが、”絶”で生きた主だったらこう言うだろう。
『守る為に、力を貸して欲しい』と。
”転”の自分。その世界。
主はきっとその世界を見た。
だからこうして自分達の前に現れたのだ。
「待ってたんだ。ずっと俺達は」月虎が思いを吐き出す。
「同じじゃなくったって良い! お前の力になれるならッ、この力が惜しみなく使えるんだよ‼」
月虎が吠えた。
魔具としての契約は、黒蒼が死んだ時点で切れている。
それでも、二人は黒蒼を主として、再び契約出来る日を待っていた。――何時か、もう一度逢える事を願って。
「遅すぎるぞ、黒蒼。俺達の主」
ブレイドは笑った。嬉しさは収まらない。”絶”の黒蒼が送った蒼い炎の意味を、理解したからだ。
「”転”の味方をしろ、か」
「構わねーだろ、別に」
「ああ、そうだ。この狂った世界……いや、俺達は主の傍に居れれば良い」
世界を見捨てるわけではない。一番大事なのは、主だ。
「行くだろ、ブレイド?」「決まっている」
”絶”の権力者が命じて作らせた”転”への道。
その前に二人は立つ。
不用心にも不用心。”転”への道は見張りはおろか、守りすら付けていなかった。
そのお陰か、簡単に道の前に辿り着いた。まあ、”転”への道の周りが守りに固められていたとしても、二人の敵ではないが。
「もう一度、縁を繋ぐ」「もう、無力とは思いたくない」
ブレイドと月虎。彼等は”絶”で数ある中の高位魔具。
ブレイドは大剣。
月虎は拳銃。
二人合わせて、魔剣銃。意思があり、人の姿を取ることが出来る武器。乱銀の下に来た、双剣もその内の一つだ。
「月虎。準備は良いか」
「おう。出来たぞ」
拳を合わせ、にやりと笑い合う。そして――、
「『我が名はッ』」
同時に口を開く。”絶”の黒蒼の思いはかつての魔具に伝わった。
「ブレイド!」「月虎!」
それぞれ己の名を叫ぶようにして名乗りを上げた。
”絶”が”転”に行くために創り上げた道の前で。名乗りを上げるのは契約の一つ。
「今一度縁を繋ぎ」と、ブレイド。
「この力、この魂を捧げるは」次に月虎が。
「『我等が主、黒蒼‼』」
契約の言葉を終え、二人は”道”に迷う事なく飛びこんだ。空間の先に見えていた”転”の風景。それは”道”に入れば消えた。空間の中は暗い闇の中。
ぐん、と強い力に引き寄せられる。
引力に引かれながら、見えなかった景色は再び見え始めた。次々と変わる場所や風景。
『最後に、力を――』
ふと、聞こえた声。黒蒼の声だ。
力とは。
恐らく、魔具の事を言っているのだと思った。
温かな温もりの、黒蒼の魔力を感じる。夢の中――精神世界の出来事を見ているのか。
「黒蒼ッ!」
月虎が叫ぶ。空間が歪み、二つの世界を繋いでいるだけでなく、他人の夢や精神を見てしまうのか。
『――ブレイド、月虎。遅くなって悪かった』
もう一度、契約をしてくれ。
”転”の黒蒼を抱き締めていた”絶”の黒蒼がこちらを見た。
「ッ、当たり前だッ! 遅すぎるぞ黒蒼!」
この光景を見せているのは”絶”の黒蒼。協力と、再契約が目的だったようだ。それは、信じ待ち続けた彼等だからこそ考えずとも分かった。
『――頼んだぞ、俺の魔具』
この声を最後に、更に強い引力に引かれた。
そして――、引かれる力が弱まり、暗い空間から吐き出された。
「ブレイド、ここは……」
「”転”、のようだな。この世界では”道”は空にあるのか……」
二人はさして動揺せず、現状を把握した。
「ブレイド、あそこ見ろ」
月虎が何かに気付き、指を向ける。その先には、黒蒼が眠っていた。扉越し、窓越しに確認出来する。
「ほんと、そっくりだな」
眠る黒蒼の傍に近付き、ブレイドが片膝を付ける。それから頭を垂れて、ぶらりと投げ出された彼の手を取り、手の甲に口付ける。
もう一つの契約。
「初めまして、だな。”転”の黒蒼」
ブレイドは笑う。
「俺達はお前の魔具になる。どう使うかは、自分で決めろ。俺達はそれに従うだけだ」
ツンを発揮する月虎。
それでも、纏う空気は穏やかだ。暫くして、ブレイドと月虎は本来の姿に変わる。
ブレイドは大剣に同化し、月虎はそのまま拳銃へ。
「――よろしく頼む。ブレイド、月虎」
二人が魔具に変わり、同時に目覚めた黒蒼はそれらを握り締める。刃の付いた、本物の大剣を背に背負って、片手に拳銃を持った。
本物の重さを噛み締める。
後戻りは、出来ない。
「俺は、”絶”に行って、流星の石を破壊する」
集合時間を考え、歩きながら独り言を呟く。廊下から窓の外を見れば、ちらほら人が戻りつつあった。刃の付いた大剣の事をどう言い訳しようか、黒蒼は少し悩んだ。
魔具は選んだ。
もう一度、戦うことを。
魂は同じでも、考え方はあまり似ていない契約者と共に、彼が生きる世界を守る為に。
最期の日、血の海に沈んだ黒蒼を今だ鮮明に思い出す。
”毒喰の白狼”だけでは無いのだ。
彼の、幸せを願うのは。
彼等魔具が思うのは、黒蒼の生きる未来だ。
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