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わたくしがいつ、あなたを本気で愛した、と?
しおりを挟む婚約破棄?
えぇ、構いませんわ。
喜んで破棄致しましょう。
―愛? 何を寝ぼけた事を仰ってるんです? わたくしがいつ
「あなたを本気で愛した、と言いましたか?」
その言葉に男は愕然となった。
確かに婚約破棄しようとは、している。だが、それなりの期間、恋人同士だったのだ。愛情が全くない、と言えば嘘になる。
なのに…。
女は婚約破棄の手続きを終えると、足早に立ち去った。
最後まで、こちらに一瞥すら、くれなかった。
迎えの馬車に乗り込み、一息つくと、女は、くつくつと笑いだした。
彼のあの顔!
自分から言い出したくせに、情けない!
目尻の涙を指で拭う。
「あんな男、こっちから願い下げだわ。婚約破棄して貰えて良かった。ラッキーだわ」
幸せになるわ、わたし。
女は晴れ晴れした気分で伸びをした。
―次のダンスパーティには、新しいドレスと靴を誂えよう…。
幸せに相応しいスタイルにしなくっちゃ!
女の瞳にはキラキラと輝く未来が見えていた。
一方で男は考え込んでいた。
自分は間違えたのではないか?
彼女こそが…。
そこまで考えて、首を横に振った。
婚約破棄したのだ。
未練は捨てよう。…未練? 親の決めた婚約者に未練?
俺は…。
男は立ち上がった。そうして、叫んだ。
「俺はこれで、真に愛するツェラと結婚出来るんだ!!」
その言葉は何とも虚しく、部屋に響き渡った。
果たして、真の幸せを掴むのはどちらだろうか?
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