上 下
29 / 32
隠居生活はじめます。

【閑話】勇者11

しおりを挟む
   大聖女と守護龍の約束にシスターネロは、驚き、約束の内容をエナベルに聞く。

「あ、あの、、や、約束とは…?」

『ん~?セイラとの約束ぅ?それはね、勇者が現れたらァ、私の加護をあげる約束だよ?』

「さ、左様でございますか…。ですが、エナベル様は、何故大聖女セイラ様とそのようなお約束を…?」

『ん~、なんでだろぉ?多分ね、セイラが死ぬのが悲しかったからかもぉ?それに、私があの時セイラに加護を与えていればセイラは死ななかったのかも…って今でも思うことがあるからかなぁ?』

「そう…なのですね。」

『私の加護は、守護を司るからねぇ。身体を瘴気と悪意から護るものなんだよォ。』

   自慢げに話すエナベルに紫織は、疑問を投げかける。

「ねぇ、なんで大聖女セイラには加護を与えなかったの?」

「ちょっ!紫織ちゃん!!」

「晃輝だって気になるでしょっ!」

「そ、それは……」

『加護を与えなかった…ねぇ。私は忘れてたんだよ』

「忘れてた?」

『セイラが聖女である前に人間だって事を。だってさぁ、1人で邪神と渡り合える力を持っているんだよォ?そりゃぁ、忘れるよォ』

「…忘れてたから加護を与えなかったの?」

『んーん、セイラに加護をあげるって言ったら『あなたは国の守護者。その力を民を護る力に使って欲しい』って言われちゃったんだよねぇ。まぁ、それでセイラ強いし大丈夫かって思ってたら…死んじゃった。』

   守護龍エナベルは当時のことを思い出したのか、顔を下に向けてしまう。

『恐ろしかったよ。生きてるように眠ってるんだ。でもね、魂は邪神が体から抜き取って…抜け殻なんだ。私はね、もう後悔したくないんだ。』

   そう言って、エナベルは寂しそうに微笑んだ。

「……抜け殻ってことは…体はまだあるの?」

    紫織がポツリと疑問をこぼした。その言葉にエナベルは難しい顔をして答える。

『あった…。の方が正しいかな?セイラの抜け殻の体は大聖堂に安置してあったんだけど…いつの間にか消えてたんだよねぇ。』

「え?盗まれたってこと??」

『その可能性は低いよ~だって、セイラの抜け殻の体を守ってたのがアルゼだからねぇ。アルゼが盗人に気づけないわけないからぁ、多分セピナル神がセイラの体を回収したのかもぉ?』

「アルゼ?」

『まぁ、その話は私よりそこのシスターさんに聞いた方がいいと思うよ。随分前のことだからぁ、私も忘れてるしね~。さて、勇者さんたち。一列に並んでぇ~。私の加護を君たちに与えるから』

   エナベルに言われた風月たちは一列に並び、守護龍エナベルの加護を受けた。

   
しおりを挟む

処理中です...