僕と父と弟(妹)の話

河まきじ

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「さて、話をすると言ったけど、どのあたりまで覚えている?

「どのあたりって…」
「覚えている事」
(えっ、なんのことを?)

「たぶん?、池に落ちたあたりかな?」
「池?」
「水に落ちたのは覚えています、池じゃないんですか?」

「ああ、そうだね」
(なに?…、なんか違うの?、言い直した方がいいみたいかな…)
「水に落ちて、そのあとはあんまり覚えてないんですが…」

「そうなんだ」
(だから、他の事も教えろよ!)
「あの…他には…」

「う~ん、どうしようか」
「?」
「まず、熱が出る前は覚えてる?」
「何を?」
「やっぱり…、そこからか…」

(えっなに、なんかあったの?)
「水の落ちた、それは間違いないけど、落ちたあと普通にしてたんだよ」
「普通って…」
「そう、具合悪くて寝てたぐらい」
「?(はぁ?)」

「そうだね、風邪をひいて具合が悪い、だから寝ていた、それぐらいのことだったよ」
「えっ!」
「その時は意識もしっかりしてたし、すぐに良くなるだろうとみんな思ってたんだ」

「……」
「でも、7日ぐらい過ぎてからかな、だんだん熱が酷くなって、これ以上高くなれば、命が危ないって言われたんだ」

(マジで…、よく生きてたな…)

「熱が酷くなってから、医者に言われたんだ、意識混濁もあり得るからって」
「意識混濁?」
「すごい熱だったからね、5日どころじゃなかったよ」

「?、さっきのメイドさんは、5日くらいって言ってたましたけど」
「メイドさん?」
「(やばっ)、…あのさっきの人です」
「ああ、今いた彼女のこと?」
「です…」

「違うよ、彼女が世話をしてたのが、5日間」
「へっ?」
「だから、熱がずっとあったんだ」
(嘘だろ…、本気でヤバかったとか…)

「…あの…どれぐらいの時間ですか?」
「どれぐらいとは?」
「熱の出てた日数です」

「そうだね、二週間ぐらいかな」
「……」
「よく、生きててくれた…」

 そう言って、泣きそうな彼だけど、安心もしているのか泣き笑いのような表情だった。
 ずいぶん、心配を掛けたんだなと思った。

 ……心配してくれて、ありがたいと思う。けど、何にも解決してないような…。
 でも、あんまり突っ込んで話もできる状況じゃないみたいだし、一体どうすれば…。

「大丈夫かい?、具合が悪いようなら止めようか?」
(待って!、止めたら困る!!)

「大丈夫です、体調も悪くないです」
「ならいいけど…」

(めんどくさい、聞いてしまえ!)
「あの、結局のところどれぐらいここにいたんですか?」
「この部屋にってこと?」
「そうです」

 指を折って数えているけど、かなり長かったとか。

「そろそろ1ヶ月近くかな」
「!!」

「そう、熱が出る前も含めて、全部入れればそれくらいになるかな」
「ソウナンデスカ…」
(嘘だろ~、なんでそんな…)

「それでね…」
 その話の続きを聞こうとしたら、ドアのノックが聞こえた。ドアの向こうから声がする。


「お食事をお持ちしました」
 そう言ってドアを開けて、トレーに何かを乗せたものを持って、メイドさんが入ってきた。

(ありがたいけど、今のタイミングじゃない……)
 すべてに置いて、間の悪いタイミングで来るメイドさんに、一瞬イラッとしたのは、悪くないと思う。
(ほんとにもう!!)

 まだ話は続きそうだ…。











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