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バース検査。過去⑴。

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 自分の体調を振り替えって見た。
 多少の気分乱高下、若干の腹痛(ただの食あたりかと思った)発熱と言えないまでの熱。

(あ~、これってそうだよな)
 もうすぐ来る、発情期のサインのようだった。言われてやっと気がついた。

「ありがとう、中山くん、最近忙しかったから、ただの体調不良だと思ってた」
  「気づいてなによりです、でも資料作成とか大丈夫ですか?」
「たぶんまだ大丈夫、アプリも見たけど、来るとしたら今月末あたりかな」
 
 そう、今はまだ月の始め。月末ま二十日くらいある。それまでに合わせて、会議資料を作ってあとの二人に渡しておけば、なんとかなる。
 いや、いっそのこともっと早くしておけば
 いけるんじゃ····。
 ただし、かなりキツい。でもそれまでになんとか、だけど·····。

「私も手伝いますから」
「ありがとうございます、山本さん」
 そんな会話をしているときに、画面の向こうから、ガッシャーンと、とてつもなく派手な音がした。それに伴い、山本さんの派手な悲鳴がした。

「きゃー!!」
「?、大丈夫ですか?」
「すみません!、子どもがたくさんグラス割ったようで」
「こっちはもう大丈夫なので、みて上げてください」
 画面の向こうからガシャガシャと音がした。
 なんだか、話ができそうじゃない······。

「あとは、また会社で」
「それでは、これで失礼します」
 忙しいそうに、山本さんの通信が切れた。

「····大変そうでしたね」
「····そうだね」
 お互いにそんな言葉がでた。

「とりあえず、俺のは今すぐにって、わけじゃないと思うから」
「なら、また会社で」
「うん」
「お疲れ様でした」
 中山くんの通信も切れた。

 ·····発情期か、また来るんだな。
 わかってはいるが、辛くて苦しい。
 なんで自分が。····わかってる。俺はオメガなんだから。



 検査結果がわかった、あの時に、自分に言い聞かせたはずなのに。なにがなんでも、後ろ指を指されないよう、がんばるって。

 14才頃から始まる、バース検査。本人が望まなければ、16才まで伸ばすことができる。
 自分は大丈夫。変な自信と共に、自分自身に特に変わった様子もなかったから、まだ大丈夫。
 と唱えるように、少しでも後にと、ギリギリまで延ばしていた。

 本当は、なんとなく気づいていたのかも。自分自身のバースに。

「嫌になる·····」
 次々と浮かぶのは、あの時からの苦しいことばかりだ。
 誰かが悪いわけじゃない。けど、誰かを恨みたい時もある。思うのは、どうして俺ばかりと。

 自分だけが、苦しいわけじゃない。ほかのオメガだって、苦しいはずだ。けど、でも、そればかりか頭に浮かぶ。
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