IF~もし未知の能力を持った異世界人が来たらあなたはどうしますか?~

そらしろ

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プロローグ

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学生棟の一階に着く。
見慣れたそこは授業中という時間帯であるにも関わらず人が居た。
立っているのは数人で他の者は倒れている。

「アリサ!アリサ!」

一人の女子学生が友達と思わしき人の名前を呼びながら懸命に彼女を揺すっている。
彼女の周りにいる人は見て見ぬふりなのか見向きもしない。

「あの。そんなゆすらない方がいいと思いますよ?」

そう声をかけていた。

「アリサが……アリサが起きないの」

涙目に上目遣いでこちらを見る彼女はとても顔立ちは整っていた。
肩まで伸ばした髪は明るく染められ、青色の瞳になっていた。可愛いと思ってしまった。それに目をジッと見つめること自体女性に慣れていない俺にはできなかった。つまり視線をさらに下にしたことで見える谷間に釘付けになる。
うっ。目のやり場に困る。
パッと目を上に向け

「多分重度の貧血だと思います。あまり揺らさない方がいいはず」

「そっか……。そうだよね……私も気怠いもの」

少し落ち着きを取り戻した彼女納得したようだった。

「えっとその、ありがとう」

「いや、僕は何もしてないから」

ありがとうなんて言われ慣れてないからつい否定してしまったし顔の前でパタパタと腕を振る。

「何にもしてないなんて……」

ボソッと呟かれたその言葉に一瞬悪いことをしたかのように慌てて言い訳をしてしまう。

「えっと、いや、なんていうか、その、ああ……ありがとうなんて言われたのがその……余りなくて……それに俺、声かけただけだし、それだけでありがとうって言われたことなかったから……」

「そうだったの?」

ちゃんと話を聞いてもらえることに心臓が跳ねる。何を話せば良いのかわからず暫しの無言。

「……でもありがとね。おかげで少し冷静に慣れたから。あっ私は真里、橘真里よ。それでこっちの子が亜里沙。私の妹」

髪を撫でながらの自己紹介だった。

「俺、あっえっと僕は一ノ瀬慎一。さっき起きて動画を見てて、それで今の状況が結構重たい貧血だろうって思って……なにか食べ物と飲み物を買いに来たんだけど……」

何を口走っているのだろう。
こんなに喋ったことなんてないから逃げ出したい。けど今誰かといられることに安心感を抱いているのも頷ける。

「私も同じような感じよ。変な動画を見てよくわからないからほっておいたのよ。そしたら激しい頭痛はするわ。亜里沙は倒れるわで混乱してたの。でもなんでこれが貧血だと思ったの?」

「えーと。動画は最後まで観てないんだよね?あれから僕はずっと観てて、そこでヴィクティムって奴が最後に注意を話して動画が終わったんだ。それで今たぶん金属生命体?みたいのが体の中にいて、血をエネルギーにするみたいで、えっと、その……」

しどろもどろになるのにもっと喋りたいと思ってしまう。女の人苦手だと思ってた。

「あーうん。なんとなくわかった。それで貧血だって思ったんだ」

「そうそう!それでジッとしているよりは何か食べ物とか飲み物を買おうと思って来たらさっきの状況だったからほっておけなくて」

話をしだしたら止まらなくなったけど、周りの起きている人が近くづいてきてビックリした。

「あのーさっき聞こえたんだけど実は俺も今の状況がわからなくて、その助かった」

俺も俺もと瞬く間に囲まれてしまって質問責めにあってしまう。知っていることはさっき一通り真里に話をしたので困惑する。頭痛もさっきより痛い。
なんだよ。急に。絶対に俺とお前らに接点なんかないのに。肌の色が濃くてガタイのいい奴、茶髪にヒョロッとした奴、ピアスをたくさんつけてる奴と様々だが同じ学生という範囲にはいるが俺みたいに引きこもりの奴からしたらまず間違いなく付き合わない奴らばかり。
こんな状況じゃなきゃ話すらしない連中にうんざりしていると

「……ん。おねぇ、ちゃん?」
「そうよ!貴方の姉の真里よ!」

気を失っていた妹が起きたことで周りも亜里沙に釘付けであった。
ヒシッと抱きつく真里にも興味深いものがあるのだろう。それに今、起きた亜里沙のことから自分たちの周りにも起きてるものがいるかもしれない事実に気がついて、その場を離れる。

「その、一ノ瀬さん、貴方のおかげで頭の整理が出来た。俺は健司。もし良かったらアドレスの交換しておかないか?」

最後まで残っていたガタイのいい奴がそう言った。俺からしたらアドレス交換を人から言われることなんて滅多にない。
戸惑っていると隣から、

「なら私も亜里沙も交換しておかないとね」

次々とだされるスマホ。
お互いのアドレス交換が終わると健司は部室に行くといって去っていった。
なんとなく義理堅いなと思った。
それはそうと女の子のアドレスを二つもゲットしちゃったよ。どうしよう。
もう頭の中はパニックだらけ。

「亜里沙が目を覚ましたことだし、今後のことについて話しなきゃならないの」

俺の方を向いてそう語る真里に俺はついに来たと思った。だっておかしいと思うだろ?髪は伸ばし放題、見た目を気にしていないから無地のTシャツにジーパン。イケメンからほど遠いのを理解している。拒絶の一言が言い終わる前に俺は話す。

「あっそうだよね!俺はまだ食べ物とか飲み物買ってなかったから。お邪魔な俺は退散するね!じゃ」

ああ。あんなに可愛い子だもの。
それにしっかりした人そうだからたぶん大丈夫だろう。
俺が居なくても平気だ。
そう自分に言い聞かせる。
そうでなきゃ俺のみじんこ並の心がブレイクハートだぜ。
早く帰りたい。
離れようとした時に服は裾を掴まれて前につんのめってしまった。

「えっと、服離して貰えます?」

「えっと、あの、私も自分が何をしているのか分かってないの。ただその、今後について話したいのは私と亜里沙と貴方の三人で話ししたいと思ったの」

顔を真っ赤に染めた彼女の言い訳に俺は混乱した頭がさらに混乱する。
何を言っているのだろうか?話?
HANASHIAIならご遠慮願いたい。
ええそうですとも。こんなおかしい状況が普通な訳ない。もう俺のライフがゼロのことも知らないで彼女は語る。

「べ、別に貴方のことなんて普通なら頼りにするわけないんだからね!こんな状況だから仕方なくよ。良い?このままどっかに行ったりしたらただじゃおかないんだからね!」

お、おう。
俺もこんな状況じゃなきゃこんな子にこんなことを言わせる前に退散しているさっ。つまりまだ俺は必要にされていると思って良いのだろうか?

「えっと、その俺はまだ必要ってことなのか?」

真里の顔が青ざめている。俺は何かまずいことを言ったのだろうか?

「違うの!そうじゃなくて!私が言いたいのは……」

「お姉ちゃん。かっこ悪い。それから慎一さん?でいいのかな?貴方も悪い。てか貴方が悪い。その言い方じゃ誰だって泣きたい気持ちになる」

起きて間もない亜里沙からの一言に俺はいつの間にか悪者になっていた。
何も悪い気持ちにするつもりはなかったのにだ。ずーんとした落ち込む。

「その。ごめん。別に泣かせたい訳じゃなかった」

「いいの。気にしないで。悪いのは私だから」

泣きながらそう言われると罪悪感に苛まれる。うーん。困った。対処の仕方がわからない。

「だ・か・ら男なら男らしく女の子の涙くらい拭ってあげなさいよ!そう、落ち着くまで頭を撫でたり、側にいたりしたらいいの。まったくこれだからヘタレは……」

亜里沙の剣幕に俺は衝撃を受けた。
なぜこうまで責められなきゃならないのだろうか。ヘタレなのは分かっているけど。
頭を撫でろって言われても女の子に触ることすら経験したことがないのにどうしたらいいかなんて分かる訳がない。

「なんだよ……そこまで言わなくたっていいじゃないか……」

「っう……でもヘタレはヘタレでもいいからこうやって」

手を掴まれ、真里の頭に触らされる。

「もう!なんなのよ!女心がまるで分かってない!お姉ちゃんも何嬉しそうにしてるのよ!」

隣でわーわーいっているのだが俺には聞こえない。
だってこんなに近くに女の子がいることが少ない。
それにいい匂いがするし、頭がぼーっとする。
うん。
なんだが何もかもどうでもいい気がしてきた。
それに真里さんも泣き止んだようだし、これはこれでひとまず良しとしたらいいらしい。

そこまでの思考に至って時に校内放送のチャイムがなる。

「お知らせします。本日の全授業は休講に致します。授業を終えた生徒は速やかに帰宅をしてください。繰り返します。本日の……」

校内の放送から帰宅が促されたことが判明した。
ならやることは決まった。
今は兎に角、落ち着ける家に帰ることが先決だ。

「聞いたよね?俺はもう家に帰ろうと思うけど真里さん達はどうする?」
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