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ぼっちの登校
しおりを挟む「黒鳶。練習はいいわけ?」
「あ、もしかして黒鳶。音くんのバッグ持ってきてくれたの?いい子いい子してあげるから、こっちおいで。」
「それは遠慮します。それに、これ届けにきただけなんで。練習は、これからです。」
カーテンの間から入ってきた奴は、名前と同じで真っ黒で。俺の鞄を渡すと、さっさと保健室から出ていった。
「あ、お礼いうの忘れてた。」
「うぅ~んっ。」
「何て声出してんのよ。」
「いや、だって黒鳶が練習後回しにしてまで鞄持ってくるのなんて珍しいなって思ってさ。ファンの子でも練習前とか塩対応中の塩じゃん?」
「それもそうね。」
俺を置いてきぼりにして、さっきの黒い奴のことを議論する不審者と暴力女の会話を聞き流しながらとっとと帰ろうと思っていたら、またしても、襟首を掴まれて首を絞められた。
「ぐえっ。………………っだから、ヒトの首締めるのやめてもらえますか。」
「前に、黒鳶と会ったことあるんじゃない?」
「はい?」
「だって、音楽以外に全く興味ないのよ。」
「それは、あれですよ。ほら、あまりにも無様に俺が倒れてたとか。可愛い子犬が雨の日に倒れてたら、助けるでしょ。そういうアレ。………それに、俺は音楽と無縁な生活送ってた素人なんで。」
「確かに、音くん。小ちゃいもんね」
「アンタ、絶対に俺に喧嘩売ってるだろう!?アンタがでかいだけで俺は、これでも平均はあるんっすよ!!………まぁ、そういうことなんで。今日は、どうもあざっした。」
あの黒なんとかが持ってきたバッグを肩にかけて、まぁまぁ苛々しながらその勢いのまま保健室を出たのはいいが、どこをどう歩いても校舎の外に出れる気がしない。
「絶対に、迷った。確実に、遭難した。だぁぁっ、めんどくせぇ。」
この迷路を抜ける方法を探し出す方法はないかと、辺りを見回していたら、凄い勢いで何かが廊下を走り抜けていった。
「あ。………ちょっ、ま。」
話しかける間もないほどの勢いで走って行った何かは、無様にも少しミスをしたらしく、俺の目の前にピックを落としていった。それを拾いたいらしく、廊下の角から俺をチラチラと見てくる。
「アレで、バレないと思ってんのかよ。」
そのピックを拾い上げて近づくと、びくりと肩を震わせてまた、走っていこうとしたのを見越して呼び止める。
「ウェイト。………このピックがどうなってもいいのか。今、来なかったらこのピックを」
「だ………ダメだよっ!」
突進する勢いで、このピックを奪い取ろうとしてきた
俺より、背の小さい奴はマジで泣きそうな顔をしながら俺の前でこけた。
「え。………あの、ダイジョウブ?イタイ?え、や、ごめん。え?俺のせい?」
本気で泣くとは思わないけど、その身体を揺するとむくりと起き上がったやつは俺の持つピックを恨めしそうに見ていた。
「あー。っと、いや。何もしないから。本当に。ただ、この校舎から出る方法を教えて欲しいだけだからさ。」
悪いことをしてる気分になって、そのピックを手渡すと子供かと言いたくなるほどにパアッと表情を明るくさせた。
「あのさ、校舎から出る方法教えて欲しいんだけど。」
「え、あ。………ここを真っ直ぐ行ったら保健室があるからそこの階段を降りたらすぐに玄関だよ。」
「へぇ、あのさぁ。………少し聞きたいんだけど、保健室って2つぐらいあるよな。」
「………………ううん。保健室は一つしかないよ。」
「あぁ~っ。………やだ。通りたくない。会ったら恥ずか死ぬ」
「大丈夫ですか?」
顔を覆いながら、蹲った俺を心配してそいつは顔を覗き込んでくる。
「なぁ、暇つぶししよう。こうなったら、夜まで学校にいてやる。そうしたら、絶対に会うことはないだろうしな。」
「え、いや。………僕、練習があって。」
「あ?練習。………まぁ何でもいいよ。夜までつき合うから、その練習って奴。」
「本当?!」
「本当、本当。」
この時の俺は完全に失念していた。何で、ピックをこいつが持っているのかってことも。何なら、その背中にしょっていたでかいバッグのことも。
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