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第3章「柊南帆は凄く頑張り屋」
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特にこれといった問題もなく、昼休みになった。
柊も多少は警戒しているのか、登校してからというもの休み時間になる度にオレの近くに避難してきている。
それにしても。
「あんなあからさまに避けられるもんか?」
まるで見えない壁でもあるかのように机に座って昼飯を食べる蟻塚の周りには人がいなかった。
というか、喋らない。
始業式の日とは見違えるくらいに蟻塚はまったく誰とも喋らないのだ。
取り巻きの男たちがいないせいもあるだろうが、普段はこんなものなのか?
「なーんか変?」
矢渕も異変を察しているらしく、眉をひそめている。
「最近俺のスマホ充電の減りが早くてさ」
「そっちかよ」
くだらない話についツッコんでしまった。
「冗談だって。わかってるよ、蟻塚の事でしょ?」
「やけに大人しくないか?中学の時はどうしてた?」
「どうしたも何も1人で騒いでたら頭おかしいでしょ」
「それはそうか……。何もなければいいけどな」
「……」
「なんだよ、その目は」
「今世話焼こうとしてなかった?」
「焼くわけないだろ。そもそも焼くほど困ってるようにも見えん」
スマホをいじりながらただ黙々と手作りらしき弁当を食べる蟻塚。
周りに誰もいないことを特に気にした様子もなく、自分だけの世界に入り浸っていた。
「まあ、突っかかってこないって事は反省したってことじゃん?俺らも学食行くべ」
「一人で行け」
「うわ~、最近返しが雑~」
傷ついたふりをしつつ教室から出ていく矢渕を見送り、オレは再び蟻塚を見る。
心配しすぎ、か。
最後に4人ほどのグループとなって弁当を囲む柊を見届け、教室を出る。
さて、パンでも買いに購買部にでも行くか。
と、思っていた矢先。
「おぉ、結城。丁度良いところで会ったな」
どうやらオレを探していたらしい五十嵐先生に見つかった。
「お前に手伝って欲しいことがあるんだ。来てくれるな?」
「先生、オレ今から昼飯なんすけど」
「教師の頼みより大事な昼飯があるのか?そうかそうか。なら仕方ないな。今からでも指導室へ行って反省文を500枚ほど……」
「いやー、丁度先生方のお手伝いを何かしたかった気分なんですよねー。超嬉しー」
明後日の方向を見つつ心にもないことを言う。
棒読みなのはご愛嬌だ。
「気が乗らないのはわかるが昼飯くらい奢ってやる。だから、頼まれてくれ」
「マジで?」
願ってもない提案だった。
ただ昼休みが終わるまでに食べられるかは怪しい気もするが。
「そういえばどうして蟻塚だけ停学期間が短いんすか?」
五十嵐先生に連れられて歩く中で、ふとした疑問をぶつける。
「気になるか?アイツはな、結城には一切手を出してないと必死に抗議したらしい。ただ、あの場所で見ていただけだと」
「……、なるほど」
「お前に暴力を振るった他の連中も蟻塚と同じ事を言っていたからアイツだけ特別に期間を短くしたんだが、何か問題があったか?」
「いや、事実です」
蟻塚は確かに、オレには一切暴力を振るっていない。
だが、柊には……と思ったところで考えるのをやめる。
当の本人である柊が教師に報告していないのだから、オレが余計なことを話す必要はないだろう。
柊にも柊なりの考えがあるんだろうし。
それに、強い。
オレが想像している以上に柊は芯の強い女の子である。
下手したら蟻塚なんかよりもずっと。
「聞いたぞ。学級委員長になったんだってな。頑張れよ」
そう言って何故か嬉しそうに笑う五十嵐先生。
オレは途端に恥ずかしくなり、顔を背ける。
「ただの暇潰しっすよ」
「それでも嬉しいもんだぞ?生徒が成長していく姿というのは」
そういうものなんだろうか。
オレにはまだよくわからないが。
「そのうちわかるさ。大人になればな。あっという間だぞ?時間が過ぎるのは」
「むしろ今は長すぎて嫌気さしてますけどね」
「俺からすれば贅沢な悩みって奴だな。後悔しない人生をとまでは言わないが、せめて誰かに誇れるような人生を送れるようにな」
柊も多少は警戒しているのか、登校してからというもの休み時間になる度にオレの近くに避難してきている。
それにしても。
「あんなあからさまに避けられるもんか?」
まるで見えない壁でもあるかのように机に座って昼飯を食べる蟻塚の周りには人がいなかった。
というか、喋らない。
始業式の日とは見違えるくらいに蟻塚はまったく誰とも喋らないのだ。
取り巻きの男たちがいないせいもあるだろうが、普段はこんなものなのか?
「なーんか変?」
矢渕も異変を察しているらしく、眉をひそめている。
「最近俺のスマホ充電の減りが早くてさ」
「そっちかよ」
くだらない話についツッコんでしまった。
「冗談だって。わかってるよ、蟻塚の事でしょ?」
「やけに大人しくないか?中学の時はどうしてた?」
「どうしたも何も1人で騒いでたら頭おかしいでしょ」
「それはそうか……。何もなければいいけどな」
「……」
「なんだよ、その目は」
「今世話焼こうとしてなかった?」
「焼くわけないだろ。そもそも焼くほど困ってるようにも見えん」
スマホをいじりながらただ黙々と手作りらしき弁当を食べる蟻塚。
周りに誰もいないことを特に気にした様子もなく、自分だけの世界に入り浸っていた。
「まあ、突っかかってこないって事は反省したってことじゃん?俺らも学食行くべ」
「一人で行け」
「うわ~、最近返しが雑~」
傷ついたふりをしつつ教室から出ていく矢渕を見送り、オレは再び蟻塚を見る。
心配しすぎ、か。
最後に4人ほどのグループとなって弁当を囲む柊を見届け、教室を出る。
さて、パンでも買いに購買部にでも行くか。
と、思っていた矢先。
「おぉ、結城。丁度良いところで会ったな」
どうやらオレを探していたらしい五十嵐先生に見つかった。
「お前に手伝って欲しいことがあるんだ。来てくれるな?」
「先生、オレ今から昼飯なんすけど」
「教師の頼みより大事な昼飯があるのか?そうかそうか。なら仕方ないな。今からでも指導室へ行って反省文を500枚ほど……」
「いやー、丁度先生方のお手伝いを何かしたかった気分なんですよねー。超嬉しー」
明後日の方向を見つつ心にもないことを言う。
棒読みなのはご愛嬌だ。
「気が乗らないのはわかるが昼飯くらい奢ってやる。だから、頼まれてくれ」
「マジで?」
願ってもない提案だった。
ただ昼休みが終わるまでに食べられるかは怪しい気もするが。
「そういえばどうして蟻塚だけ停学期間が短いんすか?」
五十嵐先生に連れられて歩く中で、ふとした疑問をぶつける。
「気になるか?アイツはな、結城には一切手を出してないと必死に抗議したらしい。ただ、あの場所で見ていただけだと」
「……、なるほど」
「お前に暴力を振るった他の連中も蟻塚と同じ事を言っていたからアイツだけ特別に期間を短くしたんだが、何か問題があったか?」
「いや、事実です」
蟻塚は確かに、オレには一切暴力を振るっていない。
だが、柊には……と思ったところで考えるのをやめる。
当の本人である柊が教師に報告していないのだから、オレが余計なことを話す必要はないだろう。
柊にも柊なりの考えがあるんだろうし。
それに、強い。
オレが想像している以上に柊は芯の強い女の子である。
下手したら蟻塚なんかよりもずっと。
「聞いたぞ。学級委員長になったんだってな。頑張れよ」
そう言って何故か嬉しそうに笑う五十嵐先生。
オレは途端に恥ずかしくなり、顔を背ける。
「ただの暇潰しっすよ」
「それでも嬉しいもんだぞ?生徒が成長していく姿というのは」
そういうものなんだろうか。
オレにはまだよくわからないが。
「そのうちわかるさ。大人になればな。あっという間だぞ?時間が過ぎるのは」
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