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敗戦逃亡編
はじめての乗馬
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ゼンジロウは僕の名前を知っていた騎兵の喉元へ剣を深々と突き立てていた。刺された騎兵はゴボゴボという音を立てながら血の泡を吹いている。
「アルバ!残りを殺せ!!」
「は~い」
残った騎兵は僕の後ろの二騎だ。二人ともまだ呆気に取られている。僕は一番近いところにいる騎兵めがけて剣を抜きながら飛び跳ねると、馬上の首めがけて剣を思い切り横に薙いだ。
呆気にとられた表情のまま首が堕ちる。残りは一人。
「なっ!貴様ら!!」
残った一人もようやく状況が分かったみたいで戦闘態勢にはいった。もう遅いけどね。
ちょっと位置が遠かったから全力で剣を投げつけると、額に深々と突き刺ささり、そのまま死体が馬から転げ落ちる。
「大命中!ゼンジロウ、二人とも殺ったよ~」
ゼンジロウは剣についた血を払いながらこちらにやってくる。
「お疲れさん。計画変更だ、こいつらの馬に乗って急いでアルシアへ向かうぞ。こいつら兄王子側の物見なのは間違いねぇが、さっきの口ぶりからしてアルシアはまだ兄王子側に陥落してないみたいだ」
「それで、お前馬には乗れるか?」
「ううん、乗れない」
馬なんて乗ったことないよ。偉い人しか乗れないもん。
「じゃあ俺の前に乗れ、とにかく急ぐぞ!」
というかゼンジロウって馬に乗れるんだ……何者なんだろう……?
風を切るように僕とゼンジロウを乗せた馬は走り続けている。馬に乗るのなんて初めてだけど、気持ちがいいなぁ。偉い人が独り占めしたくなるのもなんだかわかるかも。
「なぁ、アルバ。お前ってもしかして有名人なのか?さっきの騎兵、お前のこと知ってるみたいだったが」
さっきから黙っていたゼンジロウが突然話し出したので、僕は首を上に向けた。ゼンジロウはずっと前を見ている。
間近で見ると結構ゼンジロウっておじさんだなぁ……変な髪形してるし。
「聞いてるか?」
「う…うん、聞いてるよ。でも有名人かはわからないよ。でも傭兵の中には初めて会ったのに僕のことを知ってる人は結構見たことあるかな……『お前があのアルバか』って。会ったこともないのに」
ゼンジロウは相変わらず無表情で前だけを見つめている。
「そうか……お前、まだガキなのに相当苦労してきたんだな……」
そういってゼンジロウは僕の頭を優しくなでた。
「ねぇ、ゼンジロウ怒ってる……?多分僕のせいだよね、親子のふりが失敗したのって」
「そんなこと気にすんな、最初から俺も若干無理があるんじゃねぇかと思ってたんだよ。第一親子にしては俺たち似てなさすぎるだろ」
そういうとゼンジロウは困ったように笑っていた。
「ならいいけど……、なんだか元気がなさそうだったから」
「いや、ふっと昔のことを思い出してたんだよ。故郷ではこうやって娘を前に乗っけてよく乗馬に出かけてたなと思ってな」
そういえばゼンジロウは遠い国からやってきたんだって、傭兵団に入った時の紹介で言ってたな。ヘンテコな名前だし、髪型だし。おまけにさっき騎兵を倒した腕を見ても、結構強いのはなんとなくわかる。このあたりじゃあんまり見かけない真っ黒な瞳と髪だし、こうやって馬にも乗れるし、ゼンジロウって本当に何者なんだろう。
「アルバ!残りを殺せ!!」
「は~い」
残った騎兵は僕の後ろの二騎だ。二人ともまだ呆気に取られている。僕は一番近いところにいる騎兵めがけて剣を抜きながら飛び跳ねると、馬上の首めがけて剣を思い切り横に薙いだ。
呆気にとられた表情のまま首が堕ちる。残りは一人。
「なっ!貴様ら!!」
残った一人もようやく状況が分かったみたいで戦闘態勢にはいった。もう遅いけどね。
ちょっと位置が遠かったから全力で剣を投げつけると、額に深々と突き刺ささり、そのまま死体が馬から転げ落ちる。
「大命中!ゼンジロウ、二人とも殺ったよ~」
ゼンジロウは剣についた血を払いながらこちらにやってくる。
「お疲れさん。計画変更だ、こいつらの馬に乗って急いでアルシアへ向かうぞ。こいつら兄王子側の物見なのは間違いねぇが、さっきの口ぶりからしてアルシアはまだ兄王子側に陥落してないみたいだ」
「それで、お前馬には乗れるか?」
「ううん、乗れない」
馬なんて乗ったことないよ。偉い人しか乗れないもん。
「じゃあ俺の前に乗れ、とにかく急ぐぞ!」
というかゼンジロウって馬に乗れるんだ……何者なんだろう……?
風を切るように僕とゼンジロウを乗せた馬は走り続けている。馬に乗るのなんて初めてだけど、気持ちがいいなぁ。偉い人が独り占めしたくなるのもなんだかわかるかも。
「なぁ、アルバ。お前ってもしかして有名人なのか?さっきの騎兵、お前のこと知ってるみたいだったが」
さっきから黙っていたゼンジロウが突然話し出したので、僕は首を上に向けた。ゼンジロウはずっと前を見ている。
間近で見ると結構ゼンジロウっておじさんだなぁ……変な髪形してるし。
「聞いてるか?」
「う…うん、聞いてるよ。でも有名人かはわからないよ。でも傭兵の中には初めて会ったのに僕のことを知ってる人は結構見たことあるかな……『お前があのアルバか』って。会ったこともないのに」
ゼンジロウは相変わらず無表情で前だけを見つめている。
「そうか……お前、まだガキなのに相当苦労してきたんだな……」
そういってゼンジロウは僕の頭を優しくなでた。
「ねぇ、ゼンジロウ怒ってる……?多分僕のせいだよね、親子のふりが失敗したのって」
「そんなこと気にすんな、最初から俺も若干無理があるんじゃねぇかと思ってたんだよ。第一親子にしては俺たち似てなさすぎるだろ」
そういうとゼンジロウは困ったように笑っていた。
「ならいいけど……、なんだか元気がなさそうだったから」
「いや、ふっと昔のことを思い出してたんだよ。故郷ではこうやって娘を前に乗っけてよく乗馬に出かけてたなと思ってな」
そういえばゼンジロウは遠い国からやってきたんだって、傭兵団に入った時の紹介で言ってたな。ヘンテコな名前だし、髪型だし。おまけにさっき騎兵を倒した腕を見ても、結構強いのはなんとなくわかる。このあたりじゃあんまり見かけない真っ黒な瞳と髪だし、こうやって馬にも乗れるし、ゼンジロウって本当に何者なんだろう。
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