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ラッキーボーイ
似ている誰か。
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ポルさんという街の名医から帰っても大丈夫と言ってもらい屋敷へ戻った。
メルトは街に食料調達で寄っただけなのでとポルさんに言い残して旅立った。
旅立ったというか天界に戻ったのだ。
見守っていると暖かい手で頭を撫でられ別れた。
屋敷に戻ったらお叱りをうけるだろうと想定しているのだが。いや、もしかしたら心配が先行して雷は落ちないかもしれない。
重い足を一歩、また一歩と動かして執事と召使いに出迎えられる。そのまま父の書斎に向かった。
「ただいま戻りました。父上。」
「あぁ。大体のことはポルさんから聞いている。」
リウは服の袖をギュッと掴んでいた。
父の声がいつもより低く聞こえ恐縮してしまったのだ。
「リウ、俺の言いたいことはわかるか?」
「はい。安易に森に入ってしまい、多くの人に迷惑と心配をかけてしまいました。すみません。」
「そうだ。お前はおごったな?己と敵の力量を見誤り、他の子供達も危険に晒した。」
「はい。叱責されて同然の行いでした。以後反省して己の行動の不甲斐なさを見つめ直して精進します。」
案の定、父のハロルドから森に行ったことをこっぴどく怒られてしまった。
社会人で培った謝罪の極意を淡々と並べて父に向き合う。
だが、どうしたことかハロルドはぽかんとしてしまっていた。
あれ?
「リウ。俺は厳しくし過ぎたか?」
「?。と言いますと?」
突然どうしたのだろうかと疑問に思いながらも父の発言の意図を考える。
父の厳しさには俺を鍛えるための温かみがある。それはとても心地よく何も不満なんてない。
「いやな。お前があまりにも感情を出さずに今ここに立っていることが俺は心配で仕方がないんだ。」
ハロルドは小さくため息を吐いて、強張った表情を和らげた。
「はぁ。怖い思いをしたのだろ?反省する前にべそのひとつくらいかいてもいいんじゃないか?」
父の眉間に柔らかく皺がよって、困った子だと言わんばかりにリウを見つめる。
ほろりと。涙が一粒。
そうか。父に甘えてもよかったのか。
メルトのそばでいっぱい泣いたはずなのに、そんな言葉をかけられたら止まった雫がまた溢れてしまうではないか。
「父上ありがとうございます。ですが、私はもう大丈夫です。」
キリッとした目線を父におくれば、相わかったと言わんばかりに目線を返される。
「ならよし!母さんのところにも行ってやれ。」
「はい!失礼します!」
踵を返して部屋を後にしようとすると父の声が背後から聞こえてきた。
「それと!罰を受けてもらうからな!」
えっ!
とズッコケそうになったが、うまく体勢を立て直して振り向く。
「‥‥なんですって?」
罰として下ったのは3ヶ月間の訓練禁止だった。
父の放った声は力強くしっかりと耳に入った。演説をするためには大きくハッキリとした発声が必要不可欠だ。
人の上に立つのなら身に付けないわけにはいけないスキルをリウは食らった。
リウは父の言葉を信じたくないあまりに聞き返した。
「訓練‥禁止?‥」
「そうだ。お前にはこれが1番堪える。」
「うぅ‥」
全くその通りなのだ。他の罰なら受け入れることができたが、こればかりはいただけない!
「なぜです!訓練を倍にする罰の方がまだ納得できます!」
異議を申し立てながらヅカヅカと父に近づいていく。
書類仕事をするためのドローリーフテーブルがリウの行先を阻む。
職人が丹精込めて作り上げた最高級のテーブルは美しい光沢を帯びていた。
「お前の体が壊れてしまうぞ、ハハっ。全くこんな事が罰になるなんて傑作だぞ。」
ハロルドはニヤニヤが止められず。口を大きく開き笑ってしまっていた。開かれた口からきれいに整えられた白い歯があらわになる。
豪快に笑うのも仕方がないことだ。普通の子なら鍛錬よりも外の野原で駆け回っていたいだろう。勉学に励むよりも色恋に飛び跳ねていたいだろう。
だが、リウには遊びや恋よりも鍛錬だった。もう少し成長すれば青い春が待っているというのに。
そんなことには目もくれずに、次の魔王との対峙に闘志を燃やしている。
だからこそ、心に宿る熱さを冷ましてしまう罰が許せない。
「お前がなんと言おうと決定事項だ。」
ハロルドは机の引き出しから紙を取り出す。
契約時に使われる魔法紙だった。これに契約内容を記しサインをすればルーンが成立してしまう。罰から逃げることができなくなる。
リウはわずか数秒で脳内にあらゆるルートをシュミレーションしてしまう。失敗をした時に人は反省よりも先に誤魔化せないだろうかと考えてしまう者が大半だろう。
それと同じように罰への逃げ道を探す。
「わ、私が弱くなってしまったら父も困るでしょう!」
「なんら困らんが?」
「3ヶ月なんて期間は怠惰な生活の習慣化につながります!!筋力は低下してしまいます!取り戻すのに倍の時間がかかってしまう!」
次にいつ魔王に会うかもわからないのに!
「まずは休みない。これ以上の言い訳は聞かん。契約書にサインをしろ。まだぐちぐちと話していたいなら母さんの魔法を使うぞ。」
‥!!!
「母上を出されたら私は何もできません!」
母の魔法はリウにとってあまりにも恐ろしいものなのだ。転生して初めて恐怖を覚えたのが母なのだ。母は強し。
リウは撤退を余儀なくされた。
契約書にサインした後、小指に黒い輪が浮かびあがる。これは成立したことを意味する印。
それは指切りげんまんを喚び起こした。
やぶったら針千本を飲まされるのか?
いいや。リウにとってはそっちの方が死なないギリギリの訓練になるかもしれない。
父が課した契約内容によると訓練に該当する行為。すなわち筋力の強化。身体能力が向上した時にルーンが発動する。
発動したらペナルティとして契約期間が延びてしまう。さらには鍛えた分の数値も没収だ。
契約期間だけ延びるなら馬鹿みたいに鍛え続けて死ぬ年齢になるまで長くしてしまえば‥なんて捻くれた発想は父にはお見通しだった。
あぁ‥メルトはこの状況を見ているのだろうか?
メルト(ばっちり見てるわ☆)
こんな俺を情けないと思ってるかもな。
メルト(そんなことないわよ☆)
強くならなきゃいけないのに見放されたらどうしょうか‥
メルト(逆に安心よ。あんたは休まな過ぎるわ☆)
父の書斎を後にして母の元へ。
色々と小言を言われたが何も頭に入ってこなかった。
母から解放された後は自分の部屋に戻り、ベットにうつ伏せに倒れ夢の住人となる。
翌朝の目覚めは爽快とはいかなかった。
朝食を済ませた後に、屋敷を目的もなく彷徨っていた。最初は召使いや執事のお手伝いをしようかと声をかけていたのだが。苦い顔をされ嫌がられてしまう。
そうだよな。人の仕事を奪っちゃいけないよな。
いつもなら鍛錬や父と町の見回りをしている。もしくはシセル達と遊ぶかだ。
遊ぶことといったらチャンバラごっこや鬼ごっこや誰かにイタズラすことくらい。契約した今では体を動かして体力が上がるのが怖いためできない。とても不便である。
学舎はあるが、それはリウが14歳にならないと入学できない。それまではこの町でスクスクと成長するほかない。
「うぅ~ん‥勉強‥予習的な?あぁ‥やりたくない。」
勉学に励む行為は転生前と後でも変わらず苦手だ。
屋敷と廊下で唸るリウを見かけ、不憫に思ったのか執事のクリスが声をかけてくる。
「坊ちゃん。私と共に図書館まで散歩に行かれますか?丁度本を返しに行く予定でしたが沢山借りてしまいました。お手伝いをお願いしても?」
クリスの言葉にリウはパァーと顔を輝かせ大きく頷いた。
「うん!」
こうして俺はクリスと町にある図書館へ向かった。
屋敷には図書室と呼べるほどの部屋がない。貴重な書物は町全体で管理すべきだと主張する父が、所持していた本をほとんど寄付したのだ。
読書家のクリスが読む本は難しい言葉が規則正しく並び目を向けるのが億劫になるほどの行数が紙に記されている。
表紙は何らかの動物の革が使われており、留め金で閉じられていた。
町の少し外れにあるレンガ造の図書館へ到着して受付のお爺さんに本を返却する。
「これはこれは珍しい組み合わせだ。」
お爺さんは元々目尻にあった放射線状のシワをさらに深くしてリウに話しかける。
「クリスと来るのは初めてじゃないか?いつもはハロルド様と見回りに来るのに。」
「うん。色々ありまして‥」
リウが冷や汗をかいているとクリスが助け舟を出した。
「坊ちゃん。ここの室内をすべて見たことはないでしょう。いい機会ですから探索してはいかがですか?きっと素晴らしい本に出会えるかもしれません。」
クリスの言葉に大きく首を上下に振り、受付のお爺さんに軽く挨拶を済ませる。少し早歩きになりながら木目調の床に足音を軽く鳴らし進む。
スタスタ‥‥
地理、歴史、言語、魔術とあらゆる分野を通り過ぎていく。
早歩きを続けていたが受付にいる2人が見えなくなった後はいつものペースに戻した。
スタスタ‥‥
植物学、動物学、芸術と続きもっと奥へ歩いていく。
誰もいない室内をペールアクアが柔らかく包み込み、窓にかかる美しいベールからツンと光が差し込んでいる。
時刻はまだ午前。
暗闇で眠っていた本達も目を覚ましたのだろうか。カビ臭い匂いがリウの鼻を襲う。
だが、決して嫌いになれない古い紙とインクの香りはほんの僅かな懐かしさを残した。
結構歩いただろうか。ついに奥の壁にたどり着き文学の文字を視界に入れる。
最後の通路に目を向けるとドキッした。
いないと思っていた客人がいたのだ。
先客がいたなんて思わず、一瞬幽霊なのではと疑う。その人物をしっかりと捉え、生きてる誰かだと認識する。
「わ!‥ぁ‥」
リウは2回驚いた。1回目は人がいることに。2回目はその人の髪の色がリウよりも真っ黒だったことに。
この世界に来て初めて黒髪に出会ったのだ。前世の自分よりも綺麗な漆黒。
その人物はリウの声に反応して顔をあげた。リウはこの後3回目の驚きをくらう。
合わさった目線の先に全てを飲み込むほど恐ろしい瞳があったのだ。
メルトは街に食料調達で寄っただけなのでとポルさんに言い残して旅立った。
旅立ったというか天界に戻ったのだ。
見守っていると暖かい手で頭を撫でられ別れた。
屋敷に戻ったらお叱りをうけるだろうと想定しているのだが。いや、もしかしたら心配が先行して雷は落ちないかもしれない。
重い足を一歩、また一歩と動かして執事と召使いに出迎えられる。そのまま父の書斎に向かった。
「ただいま戻りました。父上。」
「あぁ。大体のことはポルさんから聞いている。」
リウは服の袖をギュッと掴んでいた。
父の声がいつもより低く聞こえ恐縮してしまったのだ。
「リウ、俺の言いたいことはわかるか?」
「はい。安易に森に入ってしまい、多くの人に迷惑と心配をかけてしまいました。すみません。」
「そうだ。お前はおごったな?己と敵の力量を見誤り、他の子供達も危険に晒した。」
「はい。叱責されて同然の行いでした。以後反省して己の行動の不甲斐なさを見つめ直して精進します。」
案の定、父のハロルドから森に行ったことをこっぴどく怒られてしまった。
社会人で培った謝罪の極意を淡々と並べて父に向き合う。
だが、どうしたことかハロルドはぽかんとしてしまっていた。
あれ?
「リウ。俺は厳しくし過ぎたか?」
「?。と言いますと?」
突然どうしたのだろうかと疑問に思いながらも父の発言の意図を考える。
父の厳しさには俺を鍛えるための温かみがある。それはとても心地よく何も不満なんてない。
「いやな。お前があまりにも感情を出さずに今ここに立っていることが俺は心配で仕方がないんだ。」
ハロルドは小さくため息を吐いて、強張った表情を和らげた。
「はぁ。怖い思いをしたのだろ?反省する前にべそのひとつくらいかいてもいいんじゃないか?」
父の眉間に柔らかく皺がよって、困った子だと言わんばかりにリウを見つめる。
ほろりと。涙が一粒。
そうか。父に甘えてもよかったのか。
メルトのそばでいっぱい泣いたはずなのに、そんな言葉をかけられたら止まった雫がまた溢れてしまうではないか。
「父上ありがとうございます。ですが、私はもう大丈夫です。」
キリッとした目線を父におくれば、相わかったと言わんばかりに目線を返される。
「ならよし!母さんのところにも行ってやれ。」
「はい!失礼します!」
踵を返して部屋を後にしようとすると父の声が背後から聞こえてきた。
「それと!罰を受けてもらうからな!」
えっ!
とズッコケそうになったが、うまく体勢を立て直して振り向く。
「‥‥なんですって?」
罰として下ったのは3ヶ月間の訓練禁止だった。
父の放った声は力強くしっかりと耳に入った。演説をするためには大きくハッキリとした発声が必要不可欠だ。
人の上に立つのなら身に付けないわけにはいけないスキルをリウは食らった。
リウは父の言葉を信じたくないあまりに聞き返した。
「訓練‥禁止?‥」
「そうだ。お前にはこれが1番堪える。」
「うぅ‥」
全くその通りなのだ。他の罰なら受け入れることができたが、こればかりはいただけない!
「なぜです!訓練を倍にする罰の方がまだ納得できます!」
異議を申し立てながらヅカヅカと父に近づいていく。
書類仕事をするためのドローリーフテーブルがリウの行先を阻む。
職人が丹精込めて作り上げた最高級のテーブルは美しい光沢を帯びていた。
「お前の体が壊れてしまうぞ、ハハっ。全くこんな事が罰になるなんて傑作だぞ。」
ハロルドはニヤニヤが止められず。口を大きく開き笑ってしまっていた。開かれた口からきれいに整えられた白い歯があらわになる。
豪快に笑うのも仕方がないことだ。普通の子なら鍛錬よりも外の野原で駆け回っていたいだろう。勉学に励むよりも色恋に飛び跳ねていたいだろう。
だが、リウには遊びや恋よりも鍛錬だった。もう少し成長すれば青い春が待っているというのに。
そんなことには目もくれずに、次の魔王との対峙に闘志を燃やしている。
だからこそ、心に宿る熱さを冷ましてしまう罰が許せない。
「お前がなんと言おうと決定事項だ。」
ハロルドは机の引き出しから紙を取り出す。
契約時に使われる魔法紙だった。これに契約内容を記しサインをすればルーンが成立してしまう。罰から逃げることができなくなる。
リウはわずか数秒で脳内にあらゆるルートをシュミレーションしてしまう。失敗をした時に人は反省よりも先に誤魔化せないだろうかと考えてしまう者が大半だろう。
それと同じように罰への逃げ道を探す。
「わ、私が弱くなってしまったら父も困るでしょう!」
「なんら困らんが?」
「3ヶ月なんて期間は怠惰な生活の習慣化につながります!!筋力は低下してしまいます!取り戻すのに倍の時間がかかってしまう!」
次にいつ魔王に会うかもわからないのに!
「まずは休みない。これ以上の言い訳は聞かん。契約書にサインをしろ。まだぐちぐちと話していたいなら母さんの魔法を使うぞ。」
‥!!!
「母上を出されたら私は何もできません!」
母の魔法はリウにとってあまりにも恐ろしいものなのだ。転生して初めて恐怖を覚えたのが母なのだ。母は強し。
リウは撤退を余儀なくされた。
契約書にサインした後、小指に黒い輪が浮かびあがる。これは成立したことを意味する印。
それは指切りげんまんを喚び起こした。
やぶったら針千本を飲まされるのか?
いいや。リウにとってはそっちの方が死なないギリギリの訓練になるかもしれない。
父が課した契約内容によると訓練に該当する行為。すなわち筋力の強化。身体能力が向上した時にルーンが発動する。
発動したらペナルティとして契約期間が延びてしまう。さらには鍛えた分の数値も没収だ。
契約期間だけ延びるなら馬鹿みたいに鍛え続けて死ぬ年齢になるまで長くしてしまえば‥なんて捻くれた発想は父にはお見通しだった。
あぁ‥メルトはこの状況を見ているのだろうか?
メルト(ばっちり見てるわ☆)
こんな俺を情けないと思ってるかもな。
メルト(そんなことないわよ☆)
強くならなきゃいけないのに見放されたらどうしょうか‥
メルト(逆に安心よ。あんたは休まな過ぎるわ☆)
父の書斎を後にして母の元へ。
色々と小言を言われたが何も頭に入ってこなかった。
母から解放された後は自分の部屋に戻り、ベットにうつ伏せに倒れ夢の住人となる。
翌朝の目覚めは爽快とはいかなかった。
朝食を済ませた後に、屋敷を目的もなく彷徨っていた。最初は召使いや執事のお手伝いをしようかと声をかけていたのだが。苦い顔をされ嫌がられてしまう。
そうだよな。人の仕事を奪っちゃいけないよな。
いつもなら鍛錬や父と町の見回りをしている。もしくはシセル達と遊ぶかだ。
遊ぶことといったらチャンバラごっこや鬼ごっこや誰かにイタズラすことくらい。契約した今では体を動かして体力が上がるのが怖いためできない。とても不便である。
学舎はあるが、それはリウが14歳にならないと入学できない。それまではこの町でスクスクと成長するほかない。
「うぅ~ん‥勉強‥予習的な?あぁ‥やりたくない。」
勉学に励む行為は転生前と後でも変わらず苦手だ。
屋敷と廊下で唸るリウを見かけ、不憫に思ったのか執事のクリスが声をかけてくる。
「坊ちゃん。私と共に図書館まで散歩に行かれますか?丁度本を返しに行く予定でしたが沢山借りてしまいました。お手伝いをお願いしても?」
クリスの言葉にリウはパァーと顔を輝かせ大きく頷いた。
「うん!」
こうして俺はクリスと町にある図書館へ向かった。
屋敷には図書室と呼べるほどの部屋がない。貴重な書物は町全体で管理すべきだと主張する父が、所持していた本をほとんど寄付したのだ。
読書家のクリスが読む本は難しい言葉が規則正しく並び目を向けるのが億劫になるほどの行数が紙に記されている。
表紙は何らかの動物の革が使われており、留め金で閉じられていた。
町の少し外れにあるレンガ造の図書館へ到着して受付のお爺さんに本を返却する。
「これはこれは珍しい組み合わせだ。」
お爺さんは元々目尻にあった放射線状のシワをさらに深くしてリウに話しかける。
「クリスと来るのは初めてじゃないか?いつもはハロルド様と見回りに来るのに。」
「うん。色々ありまして‥」
リウが冷や汗をかいているとクリスが助け舟を出した。
「坊ちゃん。ここの室内をすべて見たことはないでしょう。いい機会ですから探索してはいかがですか?きっと素晴らしい本に出会えるかもしれません。」
クリスの言葉に大きく首を上下に振り、受付のお爺さんに軽く挨拶を済ませる。少し早歩きになりながら木目調の床に足音を軽く鳴らし進む。
スタスタ‥‥
地理、歴史、言語、魔術とあらゆる分野を通り過ぎていく。
早歩きを続けていたが受付にいる2人が見えなくなった後はいつものペースに戻した。
スタスタ‥‥
植物学、動物学、芸術と続きもっと奥へ歩いていく。
誰もいない室内をペールアクアが柔らかく包み込み、窓にかかる美しいベールからツンと光が差し込んでいる。
時刻はまだ午前。
暗闇で眠っていた本達も目を覚ましたのだろうか。カビ臭い匂いがリウの鼻を襲う。
だが、決して嫌いになれない古い紙とインクの香りはほんの僅かな懐かしさを残した。
結構歩いただろうか。ついに奥の壁にたどり着き文学の文字を視界に入れる。
最後の通路に目を向けるとドキッした。
いないと思っていた客人がいたのだ。
先客がいたなんて思わず、一瞬幽霊なのではと疑う。その人物をしっかりと捉え、生きてる誰かだと認識する。
「わ!‥ぁ‥」
リウは2回驚いた。1回目は人がいることに。2回目はその人の髪の色がリウよりも真っ黒だったことに。
この世界に来て初めて黒髪に出会ったのだ。前世の自分よりも綺麗な漆黒。
その人物はリウの声に反応して顔をあげた。リウはこの後3回目の驚きをくらう。
合わさった目線の先に全てを飲み込むほど恐ろしい瞳があったのだ。
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