使い魔にご用心。

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愛してるぜご主人様

恐怖…

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 異世界から元の世界に戻った悪魔は屋敷の広間にいた。

そして震えていた。

恐怖に震えていた。

目の前にはソファでくつろいでいるご主人様。

相変わらずの無表情。

無表情のテオはルビーの方を見る。

テオは手首を動かした。

すると、ルビーは勢いよくテオの目の前まで引っ張られた。

なんて引力だ。抵抗ができない。抵抗しようとすること自体バカらしいのだが。

引っ張られた悪魔は座っているご主人様の前で正座をさせられた。

とても近い、フェラできそう。

いやいやそんなことを考えてる場合ではない。

どんな罰も受けようと胸に誓った悪魔は恐る恐る顔を上に向ける。

「う、ぅおはようご主人様。」

あぁ、自然と声が震えてしまう。

ビクビクと震えている悪魔の顔にテオはそっと両手を伸ばして包み込んだ。

テオが俺の顔に触れてる…

恐怖が喜びに変わる瞬間、

ガッと勢いよく顔を引っ張られる。

「イッ!!」

ルビーは首の痛みを感じながら、ふくらはぎにくっついていた太ももを離す。正座から膝をつく形になる。

刹那に芽生えた喜びが消え去り、恐怖に震え続ける悪魔にテオは静かに呟いた。

「甘やかしすぎたか。自由にさせすぎたな。俺はお前の願いを叶えることができない。だから、お前が溜まった欲求を他で発散していることには目をつぶってきた。」

鋭い目つきで呟きながら両手に力が込められていく。

「い、いたい」

「帰ってくるなら何も言わない。だが、どうした?俺はお前に魔力を送った。」

「痛い!わかってる!」

「わかってて無視したのか?」

「違う!寝ちゃったんだよ!」

「言い訳か。」

「悪かった!わざとじゃない!イッ!やめろ…!力を抜いてくれ!」

「強制召喚をしようと思ったんだ。だが、できなかった。お前が異世界にいたからだ。異世界にいるものを召喚することはできないわかっているな?」

「あぁ」

「異世界召喚は神の管轄だ。お前を連れ戻すには俺が自ら異世界に行きお前を探さなくてはいけなくなる。広い世界だ。砂漠に落ちた真珠をみつけるようなものだ。」

「悪かった。許してくれ…」

「俺から逃げたかったか。8年前みたいに。」

「違う!本当にただ寝ちまったんだ!」

「本当か?」

「本当だ、許してくれよ…」

お前が結婚するまでは絶対にそばにいると誓ったんだ。逃げるわけないだろ。

悪魔は目の前がぼやきだした。

瞼を閉じれば雫がたれていく。

ルビーの頬につたう涙をテオは親指で拭った。

「8年前約束したことを覚えているか?」

「約束?」

約束なんかしただろうか。8年前はひたすらテオから雷を撃たれた記憶しか残っていなかった。

テオはルビーの耳に口を近づけ囁いた。

「次に逃げたら俺の魔力を常に身に付けるって言ったよな。」

テオが囁いた瞬間逆の耳に痛みが走った。

「あっ!…あぁ!」

悪魔は目を見開きやっとの思いで声を上げた。痛みに耐えながらテオの服にしがみつく。

止まっていた涙が再び流れ出し、悪魔は泣きながら哀訴する。

「頼む!やめてくれ!痛い!」

涙だけでなく鼻水まで垂らしながら服を掴む手に力が入る。

「あ、あぁぁ!」

悪魔に同情することなくテオはルビーの頭を優しく撫でた。

「もう少しで痛みが引く。我慢しろ。」

「ゔぅ、いたい!痛い!」

泣きじゃくる悪魔にご主人様は手鏡を取り出した。それを悪魔に向ける。

「似合ってるよ。ルビー。」

鏡には顔が鼻水と涙でグチャグチャになった悪魔が写っている。

片方の耳にはテオと同じ瞳の色をしたサファイアのピアスが付いていた。





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