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愛してるぜご主人様
反省
しおりを挟む罰を受けた日から1週間が経った。
悪魔は己の部屋から出られるベランダにいた。
夜空には星があちらこちらに散らばっている。
この1週間は、常にテオのそばを離れる事を禁止された。
俺はピカ◯ュウかよ。
どこにいくも一緒、部屋も一緒、風呂も一緒。
嬉しかったけどな!幸せだったけどな!
でも毎回逃げるようなことをしてテオから罰を受けていたら身がもたない。あの時に受けた痛みは8年前よりも苦しかった。片方の耳にピアスをつけらたが、それだけではない。魔力も一緒に込められている分、体の半分が針で串刺しにされる感覚だった。その痛みが一気に来た時は思い出したくもない。
だが罰がアレだけだったのは幸いだった。俺はあの泣きじゃくった日にテオの魔力に縛られた。
使い魔として契約するにも段階ってものがある。
第1段階は仮契約だ。使い魔として使えるかどうかを試す期間だ。合わないと思ったら主人が使い魔を手放すし、使い魔も簡単に逃げることができる。
第2段階が契約だ。主人が契約を破棄しない限り使い魔は逃げられない。主人に呼ばれれば使い魔は主人の元に召喚されて従う。中には俺みたいに主人と暮らしている使い魔もいる。だが、召喚される際に俺みたいに異世界にいる場合は召喚が無効になる。だから契約している主人から逃げる手段としても異世界は有効だ。まぁ、異世界に行ける奴なんて俺みたいに強くなければ無理だがな。
今回の場合、テオからみれば俺は異世界に行って逃げたとみなされてしまった。
でも考えてみろよ。1日だぞ。たった1日帰らなかっただけだろう。それなのにこの仕打ちだ。
第3段階の命の契約をしちまった。これはどちらかが死なない限り契約が切れることの無いものだ。強い契約になるため、使い魔と主人の両方の承諾があって成り立つ。俺はどうやら8年前に承諾してしまっていたらしい。浅はかだった。
考えもなしに言ってしまったのか。逃げる望みが消えたのだ。自分から消し去ったのだ。
テオが結婚をしたら異世界に逃げようかと頭の片隅に入れていたのだが、その計画が1週間前に消え去った。
命の契約をされてしまえば、異世界に行こうと位置を特定されてしまう。
逃げられない。
あぁ。無情。
テオと死ぬまで一緒にいられるのは嬉しいが、幸せな家庭を他の人と築いていくテオを見ていくと考えれば苦しい。
さてさてどうしたもんか。
自害するか。
もう十分生きた。
悪魔としてやることはやり尽くしているし、テオに出会えた。結ばれたいと思うが、テオが俺の想いに応えることはない。
悪魔は胸の内がキュッとなる感覚がした。
こんな思いを10年か。
長く生きてきたがこんなに悶々とした月日は初めてだ。
誰かに使えたこともない、悠々自適な悪魔ライフをエンジョイしていたのにな。
ベランダのフェンスにもたれかかり、うなだれる。
「おいおいおいおい!」
「…!!」
悲しみに浸っていた悪魔の目の前に、突如として赤い瞳をギラギラと輝かせた別の悪魔がいた。
ルビーは叫んだ。
「ぎゃゃゃゃ!!ングッ!」
叫ぶルビーに突如現れた悪魔は己の尻尾を巧みに使い口を縛った。
口周りをぐるぐるにされたルビーはなすすべなく目の前の悪魔を見つめることしかできないでいた。
「騒ぐんじゃねぇぇし。お前に接触するために4日間も屋敷の外で様子を伺ってたんだぞ!」
声をなるべく抑えて、現れた悪魔はルビーに訴えた。
現れた悪魔の訴えにルビーは冷静を取り戻し、暗闇でよく見えていなかった顔を確認する。
「…!!ん!」
「おっ。わかったか。」
ルビーの反応をみた悪魔は尻尾を緩め口を解放する。
口を解放されたルビーは胸の高鳴りを抑えられずに両手を広げ悪魔にハグをした。
「ブラッド!!」
「おいおいおいおい!やめろし!悪魔同士で抱き合ったってなんも感じねぇよっ!全く、みない間に人間に毒されすぎだろ!」
辛辣な言葉を吐きながらも悪魔はルビーを抱き返した。
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