使い魔にご用心。

リー

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愛してるぜご主人様

始まりの前に

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 ブラッドはベランダの柵の上に座った。

「お前に会うのも8年ぶりだなブラッド。」

「あぁ、あの日以来だしな。」

「そっちの様子はどうだ?」

「お前の評判ガタ落ちだぜ。魔法使いに捕まって使い魔にされた犬。主人にけつを振るオナホ。悪魔の劣等代表。みんな言ってるよ!俺も言ってる。」

コイツ…

昔から変わらない友の肩を殴る。

肩を殴られたブラッドはあまりの強さに身体を支えることができず柵から落ちてしまう。

だが、数秒とすれば翼の音がバサバサ聞こえ柵の上に座り直した。

「なんだし!当たり前のことを言ったんだし!」

「虫が喚いたって小さくて聞こえねぇよ。」

「俺も虫か!?」

「他の奴らはアリだ。でもお前はミツバチにしてやるよ。」

「かわんねぇし!」

「お前は昔から甘い蜜を吸うためならなんでもするヤツだろ。」

「まぁ。そうだけどよー。でも8年前のやつは許してねぇーからな。ひどい目にあった。2度とお前の言うことなんか聞かないって誓ったよ。悪魔の黒い魂に誓って!2度とだ!」

「悪かったって。あの時はすぐにでも逃げ出したかったんだよ。」

「お前の顔なんて2度と見たくなかったぜ。」

ブラッドは悪態をこれでもかとついた。

「じゃあなんで来たんだ?」

「ステンノ様に言われて来た。」

「……!?」

ステンノ様だと?使い魔にされてからとっくに見捨てられたのかと思っていたのに!

「ステンノ様はお前を甘やかしすぎだよな。これをお前に渡せって。面白い遊びは終わりにして土産話を持って帰って来いだってよ。」

ルビーはブラッドから解呪の指輪を貰った。

「これは!ある騎士が湖の女神から貰った伝説の指輪か?どんな魔法も解除ができるやつか?」

「ん~それの劣化版みたいなもん。でも効果は保証する。バッチグーよ。」

ルビーは驚いたが指輪を握りしめ、ブラッドに突き返した。

「悪りぃけど帰るつもりはねぇ。」

「は!?」

ブラッドはルビーの顔を掴み、瞼を引っ張りあげ目玉を除いた。

「正気か?一生使い魔でいるつもりかよ。」

「解呪の指輪の劣化版って言うなら使えねぇよ。命の契約をしたんだ。」

「なに、?はぇ?お前契約に承諾したのか?どこまで落ちぶれたら気がすむんだし。俺は悲しいよ。またお前と人間を弄ぶ日々を夢見てたってのによー。」

「お前に説明したってわかるわけねぇよ。」

「はぁ?俺をそんじゃそこらの悪魔と一緒にしないでくれよな。お前と対等な関係を築いて来たつもりだし。」

ルビーは、ジトッとした目でブラッドを見た。

「その目は、コイツに何を言っても無駄って目だな。そうだろう。そうなんだろう?」

「さっさと指輪を持って帰ってくれ。テオに見つかったら次こそ殺されるぞ。」

「あぁ~やだやだ。その名前を聞くだけであの時の記憶が蘇るぜ。なんであんな人間に肩入れしてんだよ。」

「それを説明したってお前はわかんねぇだろって、さっきから言ってんだろ。」

「まぁまあ、そんなこと言うなよ。聞かせてくれよお前の話を。この10年あの人間といてどうだったかを。さぁ!」

ハァ…どうせ途中で寝るだろ。

ルビーはため息を吐きながらしつこいブラッドに話し始めた。

この10年を。悔しみ、喜び、楽しみ、怒り、悲しみ、幸せだった日々を。

「あれは晴れ渡ってた空に舌打ちをしながら人間で遊ぼうとしてた日から始まった。突然ルーンが足元に現れたんだ。そして気づいたらサファイアの瞳をしたテオに出会った。」


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