【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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21 浮気の理由

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「彼女に……ハービット男爵令嬢にアトレアホテルの庭園で、愛を乞っておられましたよね? 愛して欲しいと」

「うん……」

 ちらちらレッドパープル・アメジストの瞳が私の顔色をうかがう

「怒らない?」

 秘密を告白できて安心したのか、彼の口調が気安いものに変わった。

「……お話される気がないなら、私は部屋に戻りますが」

「いやだ! あのね…」

 もじもじと包帯まみれの手をすり合わせる、10以上年上の男のその行動に、ため息を吐く。
 これが社交界で評判の貴公子? 貴族女性憧れのリヒター侯爵閣下なんだろうか。
 ベルツ領にいる弟を思い出す。

「……あの子たちには、魅了の魔法をかけているんだ。ボクらバンパイア族は、魅了と忘却の魔法が得意なんだ」

 ボク? 『私』がボクになった。

「あのね……吸血する時は、無理やり血を奪うのは抵抗されて面倒くさいし、何より嫌われているとその血はまずくてイヤだから、絶対魅了魔法をかけるんだけど~強引に魅了魔法をかけると、言うことをきく人形みたいになって、心が伴わないんだよ」

 するとレオンハルト様は、何故か少し恥ずかしそうに、話しを続ける。

「だけど~愛の言葉を囁きながら、少しずつ魅了魔法をかけるとね、自我そのままに本当にボクを愛するようになるんだよ。でね、ボクを好きになった人の血は甘くて美味しいんだ~!」

 次はうっとり表情だ。

「だからいつもはボクを好きにさせて、血を頂いて~その後、魅了魔法を解いて~忘却魔法で全てを忘れさせて~ってするんだけど……アリーシアと結婚したのに、いくら血のためとはいえ、他の子を魅了するのは抵抗があってね、しばらく吸血を我慢してたの」

 今度はハの字眉毛になった。

「そうしたら体力が無くなって魔力が弱くなって、忘却魔法がかけれなくなっちゃってさ~気が付いたら社交界で、ウワサになっちゃってた……ゴメンね」


 あっけにとられるとは、正にこのこと!

 それではハービット男爵令嬢は、単なる被害者ではないか!
 他の令嬢たちも……

「あ……でも安心して! 令嬢たちとは最後までしてないから!」

 だからといって許されるのか?

「貴方は人の心を、何だと思っているんですか!」

「あ…ご、ごめん! それとアリーシアには魅了魔法かけてないからね! だって、そんなので好きになられても嬉しくないもん」

 もんときたか。

「忘却魔法をかけれた、かけれなかったなんて、正直どうでもいいです! でも人の好意を操るなんて、最低です!」

「ごめん! ごめん! 許して…! でもボクは血がなければ生きていけないんだ!」
 ボロボロとその瞳から涙がこぼれる。

「…謝る相手が違います」

 蒼白なまま謝る姿に、レオンハルト様だって好きで魔族として、生まれたわけじゃないと思い至り、攻める言葉が小さくなった。


 血は彼の食事だ。


 ビアンカによって閉じ込められた時、一日一食にされただけでも、日々は辛かった。
 レオンハルト様はその飢えに、何日耐えたんだろう。


「…ちょっと頭の中を整理しますから、しばらくお時間を頂けますか?」

「もちろんだよ! ボクは君の……番の言うことは何でも聞くよ!」

 ベットから上目づかいで私を見上げてくる姿は、弟と言うより……これはわんこだ。

「ただ……離縁はやだ! 嫌いでもいいから側にいて! じゃないとボク死ぬよ?」

 しっかり、クギも差してくる。




 もやもやを抱えたまま、部屋に戻る私に付き添うベティが、口を開く。

「旦那様を、見捨てないであげて下さい」
 そういえばあなたは、前にもそう言っていたわね。

「旦那様は、私たち使用人にとっては、救いの神なんです。……実はこの屋敷にいる使用人はみな、魔族の血を引いたものなんです」

「えぇ? それなら貴女たちもレオン様と同じように、私に触れられないはずじゃ!」

 でもベティは私の着替えを手伝ってくれたり、マッサージもしてくれていたわよね?

「あぁあ! とは言っても、私たちの血はものすごく、うっすーいですから奥様に触れても大丈夫なんです!」

 私が慌てて距離を取ろうとすると、ベティが焦り声で告げてくる。

「ただ、魔法も使えないし、魔族としての特徴もないのに、私たちは不老で長命なんです。長命って言っても血は薄いですから、せいぜい200年ほどしかないと思うんですけど。ただ、不老ではあるので、普通に市井で暮らすのは難しいんです。気味悪がられちゃうんで」

 ベティは寂しそうに笑う。

「そんな私たちを拾って下さったのが、旦那様なんです。結界だって魔族が住む屋敷だなんて情報が漏れないように、施したものだと思うんです。決して奥様を閉じ込めるつもりではないかと……だからどうか、旦那様を許して差し上げて下さい」
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