【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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28 あたしに逆らう子には罰をあたえなきゃ 【SIDEビアンカ⑤】

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 婚約者として屋敷に居座るアリーシアを、いびり倒して追い出してやろうとしたが、使用人たち、家令へと出世したクルトを中心にアリーシアを守り、あたしから遠ざけようとする。
 それでも隙を見つけて嫌がらせを繰り返したら、なんとあの女はレオンに告げ口をしやがった!
 するとレオンはあたしを屋敷から追い出し、使用人棟に追いやったんだ!
 信じられない!

「幼少期、血をくれたことには感謝してる。だから追い出さないでおいてやる」

 そう告げるレオンの瞳に、何の感情も浮かんでいない。

「ビアンカお前は私の身内ではない。父の連れだったかもしれないが、リヒター侯爵家とは全く関係のない、かつて乳母だっただけのただの使用人だ。私はお前を自由にさせ過ぎた。今後は立場をわきまえろ」

 くやしい! くやしい! またあたしを捨てる気なのレオン!



 悶々とした日々を過ごしていたら、屋敷からレオンの気配を感じなくなった。

 耳にした使用人たちの噂ばなしによると、隣国フリージアと小競り合いがあり、戦争に発展しそうとか。
 それを阻止すべくレオンが王宮に詰め、対応しているらしい。

 そんな日々が2カ月も過ぎると、屋敷内を包んでいたレオンの魔力にゆらぎを感じ取った。
 長期不在のためレオンがかけていた魔法が、弱まってきたのだ。
 すると使用人たちを魅了で支配することはできなかったが、服従させることはできるようになった。



 この屋敷で、今一番魔力が強いのはあたし。
 力の強い魔族に、力の弱い魔族は平伏するもの……!
 
「ふふっ、使用人が魔族の血の濃いものばかりだったのが、あだになったね」

 そして、屋敷に張られた結界を消し去るのは無理だったが、許可者の上書きには成功した。

「これは逆に好都合じゃないか。あたしの許可がないと誰も屋敷を出ることも入ることもできない」
 あたしが支配する牢獄の完成だ!
 レオンが帰ってくる前に、あの女に思い知らせてやる!


 初めはさっさとアリーシアを殺してやろうと思っていた。
 だが、その胸に輝くペンダントに異常な量の魔力が見える。

「『守りのペンダント』だね。あれがあると簡単に殺せないか……」

 使用人に上手く言わせて外させるかと思ったが、良い事を思いつく。


 アリーシアはレオンの番だ。
 だが、あの女は獣人ではないから、番は認識できない。
 つまり、アリーシアは盲目的に、レオンを愛しているわけではないのだ。

「番に心底軽蔑され、嫌われたらレオンはどうなるんだろ」

 しかもまだレオンは自分が魔族、バンパイアだと伝えていないようだ。

 あたしにムチで尻を叩かれ、ひんひん泣いていた小さなレオンを思い出して、笑いが止まらない。

「ふふふ、あたしにあんなひどい事を言った子に、罰を与えなきゃね」
 

 そうだ、いいコマもいたね。
 身の程知らずにもレオンに、何度も何度も求婚してきた、バカ王女が!

「あの王女も利用して、アリーシアにレオンを最低なクズ男と教えてやろう!」

 小汚い使用人棟の部屋から、屋敷の南館にあったかつての自室に戻り、王女宛てに手紙を書き始めた。
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