【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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29 一緒にいても不幸になる未来しか見えない

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 ベティに就寝の準備をしてもらった私は、ゆっくりとベットに横たわる。

 レオンハルト様の告白が、あまりのも衝撃的すぎて……
 全く頭が働かない!



 よし、情報を整理してみよう!
 太古はいた魔族も獣人、エルフなどは人間と交わり、すっかり血が薄くなってその特徴を持つものは、ほぼいなくなった今の世の中で……


 レオンハルト様は半分魔族――

 しかもバンパイア族で、食事は血と体液?
 血……体液って唾液? だからハービット伯爵令嬢とキスしてた??
 魔力と神聖力は相反するもの。
 その為、神聖力を持つ聖女の私の血を飲むのはもちろん、触れることも出来ない。


 レオンハルト様は半分獣人――

 お母さまは狼の獣人だったのよね?
 獣人らしいが、お姿にその特徴はないように見える。
 獣人は一生に一人だけ唯一無二の存在、番だけを愛する種族で、その番がいなくなれば衰弱死するとか。


「なのにその番が私で、聖女だからレオンハルト様は触れることも、できない……」

 焼け爛れた彼の手のひらを思い出す。

「触れられないということは、一生初夜がない……」

 それは子どもを持てないということだ。
 大家族、ベルツ男爵家の暖かな食事風景が頭をよぎる。


「そして私の血が飲めないから、これからもレオンハルト様は、浮気し続けることになる……」



  …………。
 不毛……なんて不毛な関係なんだ私たち……!


 これはもう、悲劇を通り越して喜劇でしょう??
 一緒にいても、不幸になる未来しか見えない!


「やっぱり、離婚かぁ~」

 確かにレオンハルト様に、恋をし始めていた。
 でも、それはまだ小さな小さな蕾のような恋で……

「今なら忘れられる」

 そう、忘れられるはずだ。
 でも……



 プライドをかなぐり捨てて、こんな小娘に泣きながら、必死に愛を伝えるレオンハルト様の姿を思い出す。
 国じゅうの憧れの貴公子が私を気遣い、いつも見せるのは笑顔だけ。

 ベルツ男爵領でジャガイモを収穫して喜ぶ泥だらけの笑顔、昼食を食べる私を嬉しそうに見つめる瞳、『嫌わない?』なんて弟のように上目使いで懇願する姿、もじもじと両手をすりあわせ『ボク』と言う姿……


 あこがれの貴公子に執着されて、優越感いっぱいで心地いい?

 こんなにも無条件に愛されて嬉しい?

 子どものように慕ってくる姿が、弟のようで可愛くてほだされた?

 分からない……分からない
 ただ……

 こぼれ落ちる、この涙は何なのか。

 どうしたらいいのか。

 私はどうしたいのか。


 私は、私のことが分からない……!





 何時の間に眠ってしまったが、早朝の喧騒に目を覚ました。

「ビアンカが行方不明です!」

 大声でレオンハルト様の寝室に飛び込み、報告する声は隣の部屋で眠る私の耳にも届いた。
 どうやら、地下牢に移送するはずのビアンカがいなくなったらしい。

「結界があるから、外には出れないはずだ!」

 そう叫ぶレオンハルト様の声とともに、バタバタとみんなが、階下に移動する音が響く。


 呆然としていたら、ノックもなく二人の男が入ってきた。

「旦那様が、奥様に避難せよとのご命令です。」

「え?」

 突然目の前で霧状の液体をまかれると、私の意識はそこで途絶えた。
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