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34 愛する番が神聖力を持っているなんて! 【SIDEレオンハルト②】
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ビアンカ……あいつには本当に困った。
赤ん坊の頃、死にかけていた私に、血を与えてくれたことには感謝している。
だが、小便を漏らした私にムチをふるったり、些細な理由で血をくれなかったり、幼少期の私にとって、彼女は慈悲の女神であり、恐怖の審判者だった。
気まぐれに優しくされ、意味の分からない理由で断罪される。
『血』という絶対的なカードを持つ彼女を前に、私は服従し完全に支配されていた。
だが少し大きくなると霧が晴れたように、その気持ちは消えた。
どうやら私は、彼女に魅了魔法をかけられ、心を操られていたらしい。
きっと彼女の魔力より、私の方が大きくなったのだろう。
血だって彼女に頼らずとも、手に入れられるようになった。
そして本能的に理解した、私には長い、とてつもなく長い、寿命があると……!
濃い魔族と、濃い獣人の血のせいで。
そして自分の未来を想像する。
今は王家が庇護してくれているが、それはいつまで?
何代まで?
国が亡べばどうなる?
私の魔力でできることなど、たがが知れてる。
この翼で空を飛べたところで?
蒸気機関車が開通したこの時代に、そんなものが何になる?
魅了魔法?
一度に数人はかけれるけど、国を支配するほどの力はない。
結界魔法にしろ、せいぜいこの屋敷くらいの大きさしか維持できないし、
爆薬をどこまで防げるか未知数で、戦争にこの力は使えないだろう。
そして私が出した結論は
…魔力なんかで人生は豊かにならない!
そう、私は魔族とはいえ所詮人間とそう変わらない、ただ途方もなく長生きなだけだ。
「必要なのは金だ!」
途方もない長い人生を、貧しい暮らしで這いつくばって生きていくなんて、どんな拷問だ?
幸せに生きていくには金がいくらでもいる。
そうして私はいくつもの事業を始め、金儲けに専念する。
将来を見越して……
そこを邪魔をしてきたのが、ビアンカだ。
やれ私に色目を使ったやつがいる! あんな女に興味があるのか? やら色恋の話ばかりで、私の事業の足を引っ張ってきて、頭が痛い。
うんざりして、逃げ出した。
そうしていろんな国を旅した。
結果的に、これは本当にいい経験だった。
書物や教授されるものではなく、生の経験は私の人生を180度変えた。
そんな充実した日々を過ごしていたある日、まさに雷のような衝撃が身体を駆け巡った。
「番が産まれた……!」
ほとんど継いでいないと思っていた獣人の本能、それが唯一無二の存在を察知したのだ。
生まれたのは分かった、だがどこかは曖昧にしか分からない。
必死に探っているうちに、母国デリウスに戻っていた。
番はデリウス国の片田舎、ベルツ男爵領の小さな屋敷に住んでいた。
歌を歌いながら花をつんでいる。
まだ、2歳ほどの幼女。
「あぁ、なんてかわいいんだ!」
ぷっくりとしたピンク色の頬にくちびる。
大きな琥珀色の瞳にくるくる巻いた栗色の髪。
「あなたはめがみさま? そふいあさま?」
小さなくちびるが言葉を紡ぐ。
「きれい! きれいね! そふいあさま!」
頬を紅潮させ、満面の笑みで私に抱き着いてくる。
なんという多幸感!
これが番。
私だけの大切な存在!
しかし何故この子は私を、女神ソフィアだと勘違いしたのかと、ふと自分の服装を見下ろす。
その時着ていた私の服は、砂漠の民の民族服で、髪は大きな白い布で覆い隠し、裾の長いシンプルなワンピースのようなものを着ていた。
デリウス国の男性はみなズボンを履く。
だからかと納得しつつ、男だと知られれば警戒されるかもしれないし、女と思われている方が無難だと、このかわいらしい誤解をそのままにすることにした。
番の名はアリーシア。
ベルツ男爵家の小さなお姫様。
近くに宿をとり、毎日見守りに行く。
幼女の彼女は、なかなか一人になることがない。
でもわずかなチャンスを狙い、言葉を交わし交流を深める。
気付いたのは、いつものようにアリーシアの頭をなでていた時だ。
ぴりぴりと手のひらに、静電気のような痛みを感じる。
「まさか……!」
彼女は神聖力を持っていた。
神聖力は魔力と相反する力、幼少期でこれなら成人すれば、大きな力をもつようになるかもしれない!
このままでは私は、彼女に触れられなくなる!
なんてことだ! 最愛の番が、神聖力を持つ聖女だなんて!
赤ん坊の頃、死にかけていた私に、血を与えてくれたことには感謝している。
だが、小便を漏らした私にムチをふるったり、些細な理由で血をくれなかったり、幼少期の私にとって、彼女は慈悲の女神であり、恐怖の審判者だった。
気まぐれに優しくされ、意味の分からない理由で断罪される。
『血』という絶対的なカードを持つ彼女を前に、私は服従し完全に支配されていた。
だが少し大きくなると霧が晴れたように、その気持ちは消えた。
どうやら私は、彼女に魅了魔法をかけられ、心を操られていたらしい。
きっと彼女の魔力より、私の方が大きくなったのだろう。
血だって彼女に頼らずとも、手に入れられるようになった。
そして本能的に理解した、私には長い、とてつもなく長い、寿命があると……!
濃い魔族と、濃い獣人の血のせいで。
そして自分の未来を想像する。
今は王家が庇護してくれているが、それはいつまで?
何代まで?
国が亡べばどうなる?
私の魔力でできることなど、たがが知れてる。
この翼で空を飛べたところで?
蒸気機関車が開通したこの時代に、そんなものが何になる?
魅了魔法?
一度に数人はかけれるけど、国を支配するほどの力はない。
結界魔法にしろ、せいぜいこの屋敷くらいの大きさしか維持できないし、
爆薬をどこまで防げるか未知数で、戦争にこの力は使えないだろう。
そして私が出した結論は
…魔力なんかで人生は豊かにならない!
そう、私は魔族とはいえ所詮人間とそう変わらない、ただ途方もなく長生きなだけだ。
「必要なのは金だ!」
途方もない長い人生を、貧しい暮らしで這いつくばって生きていくなんて、どんな拷問だ?
幸せに生きていくには金がいくらでもいる。
そうして私はいくつもの事業を始め、金儲けに専念する。
将来を見越して……
そこを邪魔をしてきたのが、ビアンカだ。
やれ私に色目を使ったやつがいる! あんな女に興味があるのか? やら色恋の話ばかりで、私の事業の足を引っ張ってきて、頭が痛い。
うんざりして、逃げ出した。
そうしていろんな国を旅した。
結果的に、これは本当にいい経験だった。
書物や教授されるものではなく、生の経験は私の人生を180度変えた。
そんな充実した日々を過ごしていたある日、まさに雷のような衝撃が身体を駆け巡った。
「番が産まれた……!」
ほとんど継いでいないと思っていた獣人の本能、それが唯一無二の存在を察知したのだ。
生まれたのは分かった、だがどこかは曖昧にしか分からない。
必死に探っているうちに、母国デリウスに戻っていた。
番はデリウス国の片田舎、ベルツ男爵領の小さな屋敷に住んでいた。
歌を歌いながら花をつんでいる。
まだ、2歳ほどの幼女。
「あぁ、なんてかわいいんだ!」
ぷっくりとしたピンク色の頬にくちびる。
大きな琥珀色の瞳にくるくる巻いた栗色の髪。
「あなたはめがみさま? そふいあさま?」
小さなくちびるが言葉を紡ぐ。
「きれい! きれいね! そふいあさま!」
頬を紅潮させ、満面の笑みで私に抱き着いてくる。
なんという多幸感!
これが番。
私だけの大切な存在!
しかし何故この子は私を、女神ソフィアだと勘違いしたのかと、ふと自分の服装を見下ろす。
その時着ていた私の服は、砂漠の民の民族服で、髪は大きな白い布で覆い隠し、裾の長いシンプルなワンピースのようなものを着ていた。
デリウス国の男性はみなズボンを履く。
だからかと納得しつつ、男だと知られれば警戒されるかもしれないし、女と思われている方が無難だと、このかわいらしい誤解をそのままにすることにした。
番の名はアリーシア。
ベルツ男爵家の小さなお姫様。
近くに宿をとり、毎日見守りに行く。
幼女の彼女は、なかなか一人になることがない。
でもわずかなチャンスを狙い、言葉を交わし交流を深める。
気付いたのは、いつものようにアリーシアの頭をなでていた時だ。
ぴりぴりと手のひらに、静電気のような痛みを感じる。
「まさか……!」
彼女は神聖力を持っていた。
神聖力は魔力と相反する力、幼少期でこれなら成人すれば、大きな力をもつようになるかもしれない!
このままでは私は、彼女に触れられなくなる!
なんてことだ! 最愛の番が、神聖力を持つ聖女だなんて!
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