【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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39 さっさと血を飲んで下さい!

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 どうやら無事に、神聖力を女神様にお返しできたらしい。

 目が覚めると私を抱き込み、同じベットに横たわるレオンハルト様がいた。
 レオンハルト様は、上半身裸だった。
 そして、私は薄手のナイトドレスしか着ていない。

「レ…レオンハルト様!」

 こんなに男性と密着するのは初めてで、うろたえる私を彼がさらに抱き込んでくる。
 身体の凹凸をピタリと合わせるかのように、隙間なく強く。

「あぁ…アリーシアの身体、すべすべで気持ちいい」

 密着する胸と胸。
 あやしく背中を這いまわる手。
 頭からは、チュッチュッとリップ音が聞こえる。


 恥ずかしくて距離を取ろうと彼の腕に手をかけたら、ザラザラとした肌、火傷の肌。

「血! 血を飲んでないんですか?」
 血を飲めば……体力が戻れば、魔族の治癒力で治ると聞いた。

「うん。まだだよ」

「どうしてすぐに飲まないんですか!」

 はぁはぁと苦しそうな呼吸音。

「だってアリーシア寝てるんだもん。初めてはアリーシアが、ちゃんと意識があるときにしたいもん」

 実はちょっと怖いから寝てる間に、サクッとやって欲しかったんだけど。
 でも、ここは度胸だ!

「じゃ、どうぞ今飲んで下さい!」
 どこから飲むのかな? 首筋でいいの?

「え~まずは抱きたいな?」

「そんな体力あるんですか?」

 こんなボロボロなのに大丈夫なの?
 ベルツ男爵領で領民のおばちゃんが、言ってた言葉にあったっけ。
 え~っと……

「腹上死しませんか?」

「ぷっ! どこでそんな言葉覚えてきたの」

 密着したレオンハルト様のお腹が、笑いで揺れる。

「とにかく先にSEXしようよ。ボク上手いよ?」

「どうしてですか! まずは命の継続、 健康の確保でしょう!」

 なにが上手いんだ! いらない情報に思わず、むっとする。

「……」
 もごもごとレオンハルト様の口が動く。

「なんですか!」

「…だってアリーシア別にボクのこと好きじゃないでしょ?」

「……」

「ただボロボロなボクの姿を見て、同情しているだけでしょ?」

「SEXで気持ちよくなったらボクのこと、ちょっとはいいかな~って思うかもしれないじゃん!」

「そうしたら血が、ちょーっと美味しくなるかもだし……」

 そう言えば、相手に好意があると血が美味しくなるって言ってた。
 だから魅了魔法をかけるって。

「今は味なんて言ってる場合ですか!」
 好意ってどのレベル? レオンハルト様に夢中! って訳じゃまだないけど。

「『良薬口に苦し』です! 薬と思って飲んで下さい!」
 ずいっと首を差し出す。
 
「だって、それじゃあ、アリーシアには全く気が無いって舌で、感じることになるんじゃないか! そんな現実突きつけるなんてひどい……」

 うじうじ。
 あぁ~この弟はめんどくさい!

「さっさと飲みなさい!」
 もう口に、首筋をくっつけてやる。

 ごくりとレオンハルト様の喉が鳴ったと思ったら、首に食らいついてきた。

 べろりと首を舐められたらそこがじ…んと痺れて、ちくりとわずかな刺激を感じた。



 はぁはぁと聞こえる荒い息。
 ズルズルと血をすする音。
 痛いと思っていた吸血は、それではなく強烈な酩酊感と多幸感が私をつつむ。

 うっとりとしている私が我に返ったのは、肩まで流れる水分と嗚咽の声。

「アリーシアの血が美味しい。甘い。甘い……!」


 彼が牙をゆっくりと引き抜いて、私の顔を見つめる。
 そのレッドパープル・アメジストの瞳からは、大量の涙が宝石のようにこぼれ落ちる。

 落ちくぼんだ目もクマもなくなり、少しふっくらした頬はピンク色。
 キラキラ×キラキラ侯爵の復活だ。

「アリーシアは、ボクが好きなんだ!」

 本当に嬉しそうな笑顔。

「嬉しい…! 嬉しい…! ボクも大好きだよ!」

 ふわふわと肩をくすぐる髪が、頬を濡らす涙が、強く抱きすがる腕が、ドキドキと鼓動で私の胸を揺らすその行為が、可愛くて……

「ふふ…かわいい」
 ずいぶんと年上の彼に、ついもらしてしまう。
 そうしてしばらく、レオンハルト様の頭をなでていると、

「元気になったから、もういいよね?」

 涙がすっかり乾いた弟が、悪魔の笑みを浮かべていた。



 本当にひどい目にあった。
 私は初めてだったのに……1週間ベットから降ろしてもらえなかった!

 レオンハルト様の身体のやけどは、すっかり癒えて痩身だがしなやかな元の体形に戻ったのはもちろん、髪はつやつやお肌もピカピカ、レッドパープル・アメジストの瞳はキラキラ、唇、頬はピンク色でもはや直視できないほどの麗しさ。
 そうして満足に歩けない私を、喜々として自ら介護した。
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