【完結】可愛そうなアリンコ聖女に可哀そうなキラキラ侯爵様が離縁したくないと泣きついてきたんだけど⁉ 【番外編あり】

水星 とも

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41 世間知らずな女への罰 【SIDEレオンハルト⑤】

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 乱暴にドアを蹴り破ってやると、赤黒いものがびくりと動いた。

「おぉ! さすが魔族の血が濃いな。死んでなかったかビアンカ」

 アリーシアが閉じ込められていた廃屋の地下室の床に、あの日のままビアンカは転がっていた。
 両腕は焼け爛れ、顔も下半分は黒く変色していて、火傷だらけの身体に服が張り付いている。

「レ…オン…たす…けて…」

「あぁ助けてやるとも! 私は優しいからな」

 ビアンカの前に二人の男をさしだす。

 この二人は今市井を騒がしている婦女暴行犯だ。
 幻覚魔法をかけてやったので、焼け爛れたビアンカが絶世の美女に見えていることだろう。

「この女を好きにしていいぞ」これは二人の男への言葉。

「しっかり食事をして直すといい」こっちはビアンカへの言葉。




 次の日の夜また地下室に訪れると半裸のビアンカがほこりまみれの木箱に座っていた。
 その顔や身体はきれいな色に戻っている。

「遅いよレオン! こいつら私の服を引きちぎりやがった! これじゃ外に出れないじゃないか!」

 ビアンカの足元には下半身を丸出しにし、枯れ枝のようになった二人の男が転がっている。
 二人とも目を見開き、絶命していた。

「あぁ早く湯に入って服を着替えたい! 早く私を屋敷に連れ帰って!」

 バカかこいつ。

「お前、私の番に何をしたのか忘れたのか?」

「…ちょっと閉じ込めただけだろ? 結局何もしてないし! むしろひどい目にあったのはあたしの方じゃないか!」

 こいつはいつもそう。
 悪いのは周りで、自分は悪くない。
 他人が自分を優先するのは当たり前。
 何様のつもりだってんだ?
 ほんと救いようがない。

 その気持ちのまま、侮蔑の表情で見つめる。

「レ、レオンはそんなあたしを助けようと、この男たちをくれたんだろ? ありがとうね。やっぱりレオンは優しい『あたしのレオン』だ」

「お前を屋敷に入れるつもりはない。私は私の番を傷つけたお前を絶対許さない。ここでお前とは永遠にさよならだ。これからは一人で生きていけ」

「そんな! ならどうしてあたしを助けたんだ!」

「それがお前の罰になるからさ」

 微笑む私を不思議そうに見るビアンカ。

 こいつは本当に、もの知らずだ。




 50年間の旅で私は、色々な人間と出会った。
 争ったり、危害を加えるような者もいたが、家族のように迎えられたり、仲間と言える友ができたり、親友と呼べる者たちもできた。

 各国をめぐり、再会を約束した彼らをまた訪ねたら、そこにはすっかり年老いた友の姿があった。

「…お前はレオンの息子か? あぁそっくりだな? レオンはどうしたんだ?」

 何も答えられなかった。

 尋ねた友の中には、亡くなっている者が幾人もいた。

 私は絶望した。



 いくら親しくなっても、いくら友になっても、私と彼らでは生きている時間軸が違う。
 私は人間の理(ことわり)から外れた生き物で、この世では異端なのだ。

 はっきりと自覚した。

 彼らとともに生きることは、できない。
 私はたった一人で生きるしかない、孤独な存在なんだと。
 人間は黄泉に向かってどんどん進んで行く、不老長命な魔族の私はただ一人取り残される……

 その現実が辛くて悲しくて、誰か助けて欲しいそう願っていたら、獣人の本能が感じ取ったのだ、番の誕生を……『人間の番』の誕生を!


 それは私に愛するものを与えられた喜びと同時に、いずれその番にも置いていかれるという恐怖を与えた。



 ビアンカは全くの世間知らずだ。

 人間の世界での25年は親に扶養され、100年の旅の間は私の父に庇護され続け、その後は侯爵邸で、我が侭放題でぬくぬくと暮らし……

「無駄に年をくっただけの、箱入り女…」

 働いたこともない……金は湧いてくるものだと思っているだろう。

 異端なお前がたった一人で人間の世界で生きていくのは、どんな絶望と恐怖が待っているんだろう。

「くくくくっ」
 楽しみだ。


 あっけに取られるビアンカをおいて、さっさと地下室から出る。
 星々がまたたく夜空に向かって飛び立つ。

 愛しい番が待っている、箱庭に向かって。
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