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病む病む令嬢
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フィン帝国の貴族にして伯爵のスタンと婚約を交わし、早一週間。幸せな日々が続いていた――はずだった。
ある日、わたしは伯爵の部屋の前へ通り掛かった。そのまま自分の部屋に戻ろうとしたのだけど、扉が半開きで独り言が聞こえてしまっていた。
「……レイアはもうダメだ」
え……わたし? どういう事?
「豪商のご令嬢だからというから気に入ったのだが、アイツは病みすぎだ……こんな変な女だとは思わなかった! 腕の切り傷は日々増えていくし……その度にナイフ捌きも上達している。不気味すぎる!」
そ、そんな……スタン様がそんな事を申されるだなんて……。わたしは信じられなかった。今までどんなわたしであろうとも受け入れてくれるって……そう言って下さったから、婚約を交わしたのに。
そして、次の言葉にわたしは言葉を失った。
「……婚約破棄だ。レイアとは婚約破棄し、新しい女性を迎えよう……。大変心苦しいが、まともな女性と幸せに暮らすためだ」
……婚約破棄?
……二回も言った。
婚約破棄とか許さないし。新しい女性? なにそれ、許すわけが無いでしょう。
ふざけないでふざけないでふざけないでふざけないでふざけないで。
踵を返し、わたしは自室へ走った。
部屋に戻ると、最近お父様から送られた魔導式チェーンソーを始動させた。ばるんばるんと激しい音が鳴り、刃がぎゅるぎゅると回転する。
「……スタン様、今向かいますからね」
そして直ぐに彼の元へ向かい、扉を蹴り破った。
「!? レ、レイア……起きていたのかい。今は深夜だ……もう寝る時間……って、その手の魔道具はなんだね!?」
「最新式のチェーンソーというものですわ、スタン様」
回転数が上がってギュウンギュウンと激しく鳴り続けるチェーンソー。わたしは彼に対し、威嚇する。
「ひぃ!! 馬鹿止めろ、レイア! そんな物騒なモノを向けてくれるな……!」
「では、婚約破棄は取り消してください」
「き、聞いていたのか! だがそれは無理だ。私はもうお前を愛していないし、気色悪いとさえ思っている。すまない……屋敷から出て行ってくれ」
その瞬間、わたしの心が狂った。もうダメ、我慢できない。彼を愛情を込めて抹殺するしかない。そして永遠の愛を手に入れるの。
「婚約破棄なんて許すわけないでしょう!! スタン様、ご覚悟を!!」
ばるんばるん、ぎゅうぃぃぃぃいん……と、刃が彼の腕を、胸を抉り削っていく。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
愛の返り血を浴び、その鮮血を味わった。
「…………うっとりする程の愛ですわ、スタン様。これで貴方はもうわたしのモノ……ふふ、ふふふふふ……あははははははははは」
わたしはスタン様を蝋人形に変え、永遠を共にした。すっごく幸せ――。
ある日、わたしは伯爵の部屋の前へ通り掛かった。そのまま自分の部屋に戻ろうとしたのだけど、扉が半開きで独り言が聞こえてしまっていた。
「……レイアはもうダメだ」
え……わたし? どういう事?
「豪商のご令嬢だからというから気に入ったのだが、アイツは病みすぎだ……こんな変な女だとは思わなかった! 腕の切り傷は日々増えていくし……その度にナイフ捌きも上達している。不気味すぎる!」
そ、そんな……スタン様がそんな事を申されるだなんて……。わたしは信じられなかった。今までどんなわたしであろうとも受け入れてくれるって……そう言って下さったから、婚約を交わしたのに。
そして、次の言葉にわたしは言葉を失った。
「……婚約破棄だ。レイアとは婚約破棄し、新しい女性を迎えよう……。大変心苦しいが、まともな女性と幸せに暮らすためだ」
……婚約破棄?
……二回も言った。
婚約破棄とか許さないし。新しい女性? なにそれ、許すわけが無いでしょう。
ふざけないでふざけないでふざけないでふざけないでふざけないで。
踵を返し、わたしは自室へ走った。
部屋に戻ると、最近お父様から送られた魔導式チェーンソーを始動させた。ばるんばるんと激しい音が鳴り、刃がぎゅるぎゅると回転する。
「……スタン様、今向かいますからね」
そして直ぐに彼の元へ向かい、扉を蹴り破った。
「!? レ、レイア……起きていたのかい。今は深夜だ……もう寝る時間……って、その手の魔道具はなんだね!?」
「最新式のチェーンソーというものですわ、スタン様」
回転数が上がってギュウンギュウンと激しく鳴り続けるチェーンソー。わたしは彼に対し、威嚇する。
「ひぃ!! 馬鹿止めろ、レイア! そんな物騒なモノを向けてくれるな……!」
「では、婚約破棄は取り消してください」
「き、聞いていたのか! だがそれは無理だ。私はもうお前を愛していないし、気色悪いとさえ思っている。すまない……屋敷から出て行ってくれ」
その瞬間、わたしの心が狂った。もうダメ、我慢できない。彼を愛情を込めて抹殺するしかない。そして永遠の愛を手に入れるの。
「婚約破棄なんて許すわけないでしょう!! スタン様、ご覚悟を!!」
ばるんばるん、ぎゅうぃぃぃぃいん……と、刃が彼の腕を、胸を抉り削っていく。
「ギャアアアアアアアアアアアア!!!」
愛の返り血を浴び、その鮮血を味わった。
「…………うっとりする程の愛ですわ、スタン様。これで貴方はもうわたしのモノ……ふふ、ふふふふふ……あははははははははは」
わたしはスタン様を蝋人形に変え、永遠を共にした。すっごく幸せ――。
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