17 / 27
第17話 婚約を懸けた決闘
しおりを挟む
「ちょっと待ってくれ」
「あっ……その声はユーデクス様……! どうして……」
「すまないね、スピラ様。でも、話は聞かせてもらった。悪いがカエルム、俺もスピラ様が好きになってしまったんだ」
……?
「ええぇッ!?」
思わずビックリする。
ユーデクス様がわたしにご好意を? 嘘……何も考えられなくなって、呆然と立ち尽くしていると――
「兄上、どういう事ですか」
「言っただろう。俺もスピラ様が好きだと。だから婚約をかけて決闘だ……カエルム!」
「なっ……」
カエルム様は驚かれ、わたしも両手で口を塞ぐ。……決闘ですって!?
あんな仲の良い二人がわたしを巡って決闘だなんて……止めに入ろうと思ったその時。
「カエルム、ユーデクス。スピラ様に相応しいのはどちらか、決闘で決めるというのですね。勝った方が彼女と婚約できると……ふむ、父は反対しませんが」
「ちょ、ちょっと勝手に決めないで下さい」
「いえ、決めるのは二人です」
「え……」
「私は二人の父。どちらも贔屓できないんですよ。これでも平等に扱ってきたつもり。カエルムがインペリアルガーディアンになったのも彼の実力です。なら今回もきっとその実力でアナタを手にするでしょう。
それとも……スピラちゃんはカエルムを信じておられぬと?」
……もちろん、カエルム様を信じている。
誰よりも。
ユーデクス様もそりゃ嫌いじゃないし、素敵な一面もある。――でも、決闘だなんて……。
「……」
心が辛くなってわたしはお屋敷の中へ走る。
――自室へ戻り、枕を濡らす――
「カエルム様、わたし……」
・
・
・
翌朝。あのまま眠ってしまったみたい。ベッドから起き上がると、扉をノックする音が響く。返事をすると、カエルム様だった。
「そのまま聞いて下さい。僕は兄上を超えて見せます。これはそう……試練なんです。きっと兄上は僕に敢えてこのような決闘を申し込んできたに違いない。……だから、僕は敬愛する兄が立ちはだかろうとも、きっと勝利し、大好きなスピラ様をこの手にお迎えします。だから、必ず勝って帰ります……では行って参ります」
気配が消えた。
決闘に向かわれたのね……。
見守らなくちゃ……。
いえ、止めなくちゃ。
そうしなければ、わたしはきっと後悔する。
直ぐに仕度を済ませ、わたしは外へ向かう。
階段を下りていく途中、呼び止められた。
「スピラちゃん、行くのね」
「その声……ウィンクルム様」
振り向くと、とても心配そうで深刻な表情でこちらを見られるウィンクルム様のお姿があった。
「辛いかもしれないわよ」
「ええ。それでも、わたしは行きます」
「そう……今日のフロース市場、バーゲンセールで大騒ぎだからね。お洋服を求めてやってくる女性客で大変よ。そりゃあもう取り合いで~地獄の果てとか言われちゃってて~」
そっち~~~!?
――――聞かなかった事にしよう。
わたしはそのまま階段を下りていく。
◆
庭へ出ると……
「……」
カエルム様とユーデクス様が睨み合っていた。
剣を構えられ――
「……あ」
凄い。あのカエルム様の右手に持たれている黄金の光を放つクリスタルの剣はいったい……見惚れていると、ヌッと背後から気配が。
「あれは、カエルムがインペリアルガーディアンの地位を授かった際に皇帝陛下より拝領した『星剣アウレア』ですよ」
「ひゃっ!? びっくりした……エキャルラット辺境伯……!」
「驚かせてしまいましたね」
「ええ、心臓が口から飛び出るかと思いました……って、皇帝陛下より……」
「認められた者だけがあの剣を生成できる。星々より万物の力を借り、内包し、そしてあの輝きを解放する。だが、必要な力はそれだけではないのです」
どういう事? と、わたしは首を傾げる。
「愛です。愛の力が強ければ強いほど、剣はその愛の力に応えてくれるのです」
「愛……」
対してユーデクス様は――普通の剣。
何処にでもありそうな剣だった。いや、でもあの鋭さはレイピアかな。
「カエルム、よく逃げないで兄の前に立ったな。褒めてやろう」
「兄上……。決闘を始める前にひとつだけ言っておきます」
「ほう、なんだ。言ってみろ」
「僕は手加減はできません」
黄金の剣を構えられるカエルム様は、実の兄に対し、恐ろしいまでの殺気を放った。……あ、あのお優しいカエルム様が……あんな怖い表情をされるなんて。
「……マシな顔になったな、カエルム。そうでなくては面白くない……インペリアルガーディアンであるお前に勝ち、蹴落とし、プライドをズタズタにしてやった後、今度こそ俺がその地位に成り代わってやる。そして、聖女となったスピラ様を俺の嫁にしてやる。毎日、惨めなお前の目の前でイチャイチャしまくってやるさ」
「…………兄上!!」
ユ、ユーデクス様はきっと……煽っているだけよね。あんな事、普通は言わないわよね。まさか本心じゃ……。
「言っておくが、俺は本気だ」
――その瞬間、決闘は始まった――
「あっ……その声はユーデクス様……! どうして……」
「すまないね、スピラ様。でも、話は聞かせてもらった。悪いがカエルム、俺もスピラ様が好きになってしまったんだ」
……?
「ええぇッ!?」
思わずビックリする。
ユーデクス様がわたしにご好意を? 嘘……何も考えられなくなって、呆然と立ち尽くしていると――
「兄上、どういう事ですか」
「言っただろう。俺もスピラ様が好きだと。だから婚約をかけて決闘だ……カエルム!」
「なっ……」
カエルム様は驚かれ、わたしも両手で口を塞ぐ。……決闘ですって!?
あんな仲の良い二人がわたしを巡って決闘だなんて……止めに入ろうと思ったその時。
「カエルム、ユーデクス。スピラ様に相応しいのはどちらか、決闘で決めるというのですね。勝った方が彼女と婚約できると……ふむ、父は反対しませんが」
「ちょ、ちょっと勝手に決めないで下さい」
「いえ、決めるのは二人です」
「え……」
「私は二人の父。どちらも贔屓できないんですよ。これでも平等に扱ってきたつもり。カエルムがインペリアルガーディアンになったのも彼の実力です。なら今回もきっとその実力でアナタを手にするでしょう。
それとも……スピラちゃんはカエルムを信じておられぬと?」
……もちろん、カエルム様を信じている。
誰よりも。
ユーデクス様もそりゃ嫌いじゃないし、素敵な一面もある。――でも、決闘だなんて……。
「……」
心が辛くなってわたしはお屋敷の中へ走る。
――自室へ戻り、枕を濡らす――
「カエルム様、わたし……」
・
・
・
翌朝。あのまま眠ってしまったみたい。ベッドから起き上がると、扉をノックする音が響く。返事をすると、カエルム様だった。
「そのまま聞いて下さい。僕は兄上を超えて見せます。これはそう……試練なんです。きっと兄上は僕に敢えてこのような決闘を申し込んできたに違いない。……だから、僕は敬愛する兄が立ちはだかろうとも、きっと勝利し、大好きなスピラ様をこの手にお迎えします。だから、必ず勝って帰ります……では行って参ります」
気配が消えた。
決闘に向かわれたのね……。
見守らなくちゃ……。
いえ、止めなくちゃ。
そうしなければ、わたしはきっと後悔する。
直ぐに仕度を済ませ、わたしは外へ向かう。
階段を下りていく途中、呼び止められた。
「スピラちゃん、行くのね」
「その声……ウィンクルム様」
振り向くと、とても心配そうで深刻な表情でこちらを見られるウィンクルム様のお姿があった。
「辛いかもしれないわよ」
「ええ。それでも、わたしは行きます」
「そう……今日のフロース市場、バーゲンセールで大騒ぎだからね。お洋服を求めてやってくる女性客で大変よ。そりゃあもう取り合いで~地獄の果てとか言われちゃってて~」
そっち~~~!?
――――聞かなかった事にしよう。
わたしはそのまま階段を下りていく。
◆
庭へ出ると……
「……」
カエルム様とユーデクス様が睨み合っていた。
剣を構えられ――
「……あ」
凄い。あのカエルム様の右手に持たれている黄金の光を放つクリスタルの剣はいったい……見惚れていると、ヌッと背後から気配が。
「あれは、カエルムがインペリアルガーディアンの地位を授かった際に皇帝陛下より拝領した『星剣アウレア』ですよ」
「ひゃっ!? びっくりした……エキャルラット辺境伯……!」
「驚かせてしまいましたね」
「ええ、心臓が口から飛び出るかと思いました……って、皇帝陛下より……」
「認められた者だけがあの剣を生成できる。星々より万物の力を借り、内包し、そしてあの輝きを解放する。だが、必要な力はそれだけではないのです」
どういう事? と、わたしは首を傾げる。
「愛です。愛の力が強ければ強いほど、剣はその愛の力に応えてくれるのです」
「愛……」
対してユーデクス様は――普通の剣。
何処にでもありそうな剣だった。いや、でもあの鋭さはレイピアかな。
「カエルム、よく逃げないで兄の前に立ったな。褒めてやろう」
「兄上……。決闘を始める前にひとつだけ言っておきます」
「ほう、なんだ。言ってみろ」
「僕は手加減はできません」
黄金の剣を構えられるカエルム様は、実の兄に対し、恐ろしいまでの殺気を放った。……あ、あのお優しいカエルム様が……あんな怖い表情をされるなんて。
「……マシな顔になったな、カエルム。そうでなくては面白くない……インペリアルガーディアンであるお前に勝ち、蹴落とし、プライドをズタズタにしてやった後、今度こそ俺がその地位に成り代わってやる。そして、聖女となったスピラ様を俺の嫁にしてやる。毎日、惨めなお前の目の前でイチャイチャしまくってやるさ」
「…………兄上!!」
ユ、ユーデクス様はきっと……煽っているだけよね。あんな事、普通は言わないわよね。まさか本心じゃ……。
「言っておくが、俺は本気だ」
――その瞬間、決闘は始まった――
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
98
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる