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第24話 一方的な婚約
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聖域領地クォ・ヴァディスを出発。
カーリタースちゃんの背中に乗って、半日掛けて『帝国ウィスティリア』に到着した。変わらない風景が目の前にはあった。
「……久しぶりですね」
「ええ。赤き城壁、ポルフィルン城も健在です。さあ、参りましょうか。直に日が沈んでしまいますから」
カエルム様の言う通り、時は夕刻。もう間もなく太陽は沈み、闇が訪れる。その前にお屋敷に戻らないと、真っ暗になってしまう。
カーリタースちゃんにミニサイズになってもらい、わたしが抱いた。そう、この猫ちゃんは小さくもなれた。今は普通の猫のサイズと変わらない。
帝国一番の大通りを歩いていく。
まだ日没前だから、それなりに人の往来がある。若い男性貴族や女性も――うん? なんだか、見られているような。
ああ……。きっとカエルム様ね。彼が久しぶりに帝国に帰って来たから、皆注目しているようだ。やっぱり、どれだけ時間が経っても人気は変わらないみたいだった。本当に凄い。尊敬しちゃう。
◇
オーリム家のお屋敷の前に到着した。
そこには一か月前と変わらない景観があって、何も失われていなかった。あのユーデクス様の育てられている『イーオン』のお花も虹色に輝いていた。
「良かった、お屋敷は無事のようですね」
「そうですね、スピラ様。中へ参りましょう」
――オーリム家の玄関前。
そこで、わたしは嫌な予感がした。……なんだろう、心臓が妙にドキドキして、この扉を開けてしまったら……運命が変わってしまうのではないかと、そんな漠然とした不安に襲われた。
……気のせいだと思ったい。でも。
扉に手を掛けられるカエルム様。ギィっと軋む音を立てて、扉が開く――すると、そこには。
ウィンクルム母様がうつ伏せに倒れられていた。その瞬間、わたしは頭が真っ白になって、酷い眩暈に襲われた。
「――ウソ」
「母さん!! しっかりして下さい!」
わたしも一緒に駆け寄って、ウィンクルム母様の容態を確認した。すると、母様はムクッと起き上がられて――カッと開眼されると、
「ユ、ユーデクスが連れ去られたわ……!」
そう慌てられた。
あれ、無事だったんだ!?
「か、母さん。落ち着いて下さい……兄上に何があったんです?」
カエルム様が聞くと、ウィンクルム母様はまるで辛い記憶をフラッシュバックするかのように震えられ、頭を抱えられた。そんな青ざめて……いったい、何が。
「実はね、一週間前からペルソナ家のラクリマ帝領伯が現れて……ユーデクスと一方的に婚約を結んだのよ。でも、ユーデクスは望んでいなくて……拒絶していたの」
「兄上が……」
「ええ、今日またそのラクリマ帝領伯と、その護衛がお屋敷に無理矢理上がり込んで来たの……だから、私はユーデクスを庇ったのだけど、御覧の通り……強引に……ううっ」
涙を零される母様。
それで、連れて行かれちゃったんだ……そんな。ユーデクス様は望んでないのに、一方的すぎる。わたしは彼が心配になった。
「ねえ、カエルム様」
「ええ、分かっております。一方的な婚約は破棄させ、兄上は必ず僕が取り戻しますよ。今は、母さんをベッドへ連れて参ります。スピラ様は此処でお待ちを」
「分かりました」
ペルソナ家のラクリマ帝領伯……いったい、何者なのだろう。どうして、ユーデクス様を? 確かに彼は髪の色は虹色だけど、お優しいし……カエルム様のお兄さんだから、それだけでも魅力。けれど……一方的なのは許せないなって思った。
カーリタースちゃんの背中に乗って、半日掛けて『帝国ウィスティリア』に到着した。変わらない風景が目の前にはあった。
「……久しぶりですね」
「ええ。赤き城壁、ポルフィルン城も健在です。さあ、参りましょうか。直に日が沈んでしまいますから」
カエルム様の言う通り、時は夕刻。もう間もなく太陽は沈み、闇が訪れる。その前にお屋敷に戻らないと、真っ暗になってしまう。
カーリタースちゃんにミニサイズになってもらい、わたしが抱いた。そう、この猫ちゃんは小さくもなれた。今は普通の猫のサイズと変わらない。
帝国一番の大通りを歩いていく。
まだ日没前だから、それなりに人の往来がある。若い男性貴族や女性も――うん? なんだか、見られているような。
ああ……。きっとカエルム様ね。彼が久しぶりに帝国に帰って来たから、皆注目しているようだ。やっぱり、どれだけ時間が経っても人気は変わらないみたいだった。本当に凄い。尊敬しちゃう。
◇
オーリム家のお屋敷の前に到着した。
そこには一か月前と変わらない景観があって、何も失われていなかった。あのユーデクス様の育てられている『イーオン』のお花も虹色に輝いていた。
「良かった、お屋敷は無事のようですね」
「そうですね、スピラ様。中へ参りましょう」
――オーリム家の玄関前。
そこで、わたしは嫌な予感がした。……なんだろう、心臓が妙にドキドキして、この扉を開けてしまったら……運命が変わってしまうのではないかと、そんな漠然とした不安に襲われた。
……気のせいだと思ったい。でも。
扉に手を掛けられるカエルム様。ギィっと軋む音を立てて、扉が開く――すると、そこには。
ウィンクルム母様がうつ伏せに倒れられていた。その瞬間、わたしは頭が真っ白になって、酷い眩暈に襲われた。
「――ウソ」
「母さん!! しっかりして下さい!」
わたしも一緒に駆け寄って、ウィンクルム母様の容態を確認した。すると、母様はムクッと起き上がられて――カッと開眼されると、
「ユ、ユーデクスが連れ去られたわ……!」
そう慌てられた。
あれ、無事だったんだ!?
「か、母さん。落ち着いて下さい……兄上に何があったんです?」
カエルム様が聞くと、ウィンクルム母様はまるで辛い記憶をフラッシュバックするかのように震えられ、頭を抱えられた。そんな青ざめて……いったい、何が。
「実はね、一週間前からペルソナ家のラクリマ帝領伯が現れて……ユーデクスと一方的に婚約を結んだのよ。でも、ユーデクスは望んでいなくて……拒絶していたの」
「兄上が……」
「ええ、今日またそのラクリマ帝領伯と、その護衛がお屋敷に無理矢理上がり込んで来たの……だから、私はユーデクスを庇ったのだけど、御覧の通り……強引に……ううっ」
涙を零される母様。
それで、連れて行かれちゃったんだ……そんな。ユーデクス様は望んでないのに、一方的すぎる。わたしは彼が心配になった。
「ねえ、カエルム様」
「ええ、分かっております。一方的な婚約は破棄させ、兄上は必ず僕が取り戻しますよ。今は、母さんをベッドへ連れて参ります。スピラ様は此処でお待ちを」
「分かりました」
ペルソナ家のラクリマ帝領伯……いったい、何者なのだろう。どうして、ユーデクス様を? 確かに彼は髪の色は虹色だけど、お優しいし……カエルム様のお兄さんだから、それだけでも魅力。けれど……一方的なのは許せないなって思った。
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