婚約破棄28日後... 王子のせいで国が滅亡するようです...28日後に現れた王子はゾンビでした。白の聖女のわたしでもお手上げです!

夜桜

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#02 地下水道

「ご、ごめんなさい。ディルク」
「? いや、僕の方こそ、いきなり引っ張って悪かったよ。改めて宜しく……へえ、ローザは綺麗な銀髪をしているんだね。なんだ、体も細りとしているじゃないか」


 そう言われて、わたしは顔を真っ赤にした。


「わたしの自慢の髪を褒めて戴けるなんて……って、体もってどういう意味ですか!」
「そのまんまの意味だよ。大丈夫、重くはなかったよ。あれは冗談さ」


 な、なんだー…良かった。
 最近ちょっと甘い物を摂りすぎていたので、ちょっぴり心配だった。


「そ、それより、地上へ戻りましょう」
「分かった。ここからは無理だけど、このかなり先が僕の屋敷に繋がっている。実は、僕はそこから歩いて来たんだ。人々を避難させる為にね。それで、さっきはローザを見つけたんだよ」


 そうだったのね。
 そっか、このディルクもわたしのように人々を……うん。悪い人ではなさそうね。


 地上を目指して地下水路を歩いて行く。少しカビ臭くて湿気もあった。こんな場所はずっとは居たくない。


「ところで、ディルクはどうして天文学者になったんですか? 星が好きなんですか?」
「うん、そうだよ。星の力は偉大でね、このゾンビ騒動とは偶然なんだけど、共和国を守る為に月と太陽の研究をしていた」

「月と太陽……」

「ああ、ゾンビの前はモンスターの奇襲も多かっただろう? 自衛するには魔法の力を使うしかない。そこで共和国の王子テオバルドは、僕に目をつけた。この共和国をモンスターから守るバリアのようなものを作れないかってね。
 研究はあと少しで完成する所まで来ていたんだ……ところが、このゾンビ騒動が事態を急変させてしまったよ。残念だ」


 そう肩を落とすディルク。そっか、テオバルドは彼なりに国を守ろうとはしていたんだ。でも、結局はゾンビを呼び寄せてしまった。その事実はもう変えられない。その事を彼にも知って貰いたい。


「あの、ディルク、話があるんです」
「うん?」


 ――わたしは、テオバルドの所有している『不死王リッチー髑髏どくろ』の事を話した。ディレクは最後まで真面目に聞いてくれた。


「……『呪われた遺跡ゲフェングニス』の。しかも、王子は闇のマーケットに手を出していたのか。なんと愚かな。その結果がこれとは……民が苦しんでいるというのに、籠城しているとは許せないな」

「この事を生存者にも話しましょう。そして、共和国の平和を取り戻すんです。このままでは……国は滅びの道を歩むだけ。聖女として、そうはさせません」

「分かった。君の指示に従おう。……よし、もう直ぐ屋敷だぞ」


 随分と歩いてやっと縄はしごが見えた。あんな場所に吊り下げられいるという事は、地上ね。


「この上がディルクのお屋敷なのですね」
「そうだよ。さあ、先に上がって……あ、ちょっと高さがあるか」


 彼はわたしの体を持ち上げようとしたので――回避した。


「な、なんで普通に触れようとしているんですか!? わたし、まだそこまで気を許した覚えはありませんよ……」

「いや、君の体を持ち上げないと手が届かないだろう? 大丈夫だよ、ローザは軽いし、ひょいっと一発だよ」


 確かに、身長のせいでロープには手が届かないけど……まだ出会ってそれほど経っていない殿方に持ち上げられるとか……ちょっとフクザツ。

 何か良い方法はないかと思案すると――


「ああ、そうです! ディルク、さっきのように踏み台になって下さい。それで手が届きますから」
「ふ、踏み台……ちょっと酷いなぁ。でも、分かったよ。ほら、これでいい?」


 腕立てするような形でうつ伏せになるディルク。この背中に乗れば――届く! ていっと手を伸ばせばロープに届く。


「……よし。え、あぁぁッ」


 か弱いわたしは、握力が足りなくて、すってんころりん。ディルクの背中に落ちた。


「どふぅッ!!」
「きゃぁ!!」



 幸い、ディルクのおかげでケガはなかった。打ち付けた腰を擦りながら、彼を起こす。

「ご、ごめんなさい……せっかく台になって貰ったのに」
「いいよ、ローザが無事なら」

 痛そうに起き上がるディレクは腕を押さえていた。痛めてしまったようだ。……あ、あんな血が滲んで。わたしのせいだ。


「ディレク! その腕の傷!」
「あはは……擦り剥いちゃったね。でも、ローザのせいじゃない。これは僕が君を支えきれなかったから、僕が悪いんだ」


 わたしは首を横に振った。
 それは違う。

「本当にごめんなさい。治癒魔法のヒールをしますから」


 彼の腕を取って、わたしはヒールを施した。すると、彼の腕はみるみる内に回復していく。にじんでいた血も消えた。


「これは凄いね、ローザ。君は本当に聖女なんだ」
「信じていなかったんですか?」

「いや、信じていたよ。だって、君の瞳は星のように輝いて、嘘をついているようには見えなかったからね。ほら、ローザ、体を持ち上げるよ」


 彼は自然とわたしの体を持ち上げた。……どうしてだろう、今はもう嫌とかそういう感情も湧かなくなっていた。寧ろ……ディレクが気になり始めていた。

 ゆっくりと縄はしごを登っていく。後ろからディレクが支えてくれるから、今度は安定していた。こんな風に人から支えて貰えれば、こんなにも安定するんだ。
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