2 / 6
#02 地下水道
「ご、ごめんなさい。ディルク」
「? いや、僕の方こそ、いきなり引っ張って悪かったよ。改めて宜しく……へえ、ローザは綺麗な銀髪をしているんだね。なんだ、体も細りとしているじゃないか」
そう言われて、わたしは顔を真っ赤にした。
「わたしの自慢の髪を褒めて戴けるなんて……って、体もってどういう意味ですか!」
「そのまんまの意味だよ。大丈夫、重くはなかったよ。あれは冗談さ」
な、なんだー…良かった。
最近ちょっと甘い物を摂りすぎていたので、ちょっぴり心配だった。
「そ、それより、地上へ戻りましょう」
「分かった。ここからは無理だけど、このかなり先が僕の屋敷に繋がっている。実は、僕はそこから歩いて来たんだ。人々を避難させる為にね。それで、さっきはローザを見つけたんだよ」
そうだったのね。
そっか、このディルクもわたしのように人々を……うん。悪い人ではなさそうね。
地上を目指して地下水路を歩いて行く。少しカビ臭くて湿気もあった。こんな場所はずっとは居たくない。
「ところで、ディルクはどうして天文学者になったんですか? 星が好きなんですか?」
「うん、そうだよ。星の力は偉大でね、このゾンビ騒動とは偶然なんだけど、共和国を守る為に月と太陽の研究をしていた」
「月と太陽……」
「ああ、ゾンビの前はモンスターの奇襲も多かっただろう? 自衛するには魔法の力を使うしかない。そこで共和国の王子テオバルドは、僕に目をつけた。この共和国をモンスターから守るバリアのようなものを作れないかってね。
研究はあと少しで完成する所まで来ていたんだ……ところが、このゾンビ騒動が事態を急変させてしまったよ。残念だ」
そう肩を落とすディルク。そっか、テオバルドは彼なりに国を守ろうとはしていたんだ。でも、結局はゾンビを呼び寄せてしまった。その事実はもう変えられない。その事を彼にも知って貰いたい。
「あの、ディルク、話があるんです」
「うん?」
――わたしは、テオバルドの所有している『不死王の髑髏』の事を話した。ディレクは最後まで真面目に聞いてくれた。
「……『呪われた遺跡』の。しかも、王子は闇のマーケットに手を出していたのか。なんと愚かな。その結果がこれとは……民が苦しんでいるというのに、籠城しているとは許せないな」
「この事を生存者にも話しましょう。そして、共和国の平和を取り戻すんです。このままでは……国は滅びの道を歩むだけ。聖女として、そうはさせません」
「分かった。君の指示に従おう。……よし、もう直ぐ屋敷だぞ」
随分と歩いてやっと縄はしごが見えた。あんな場所に吊り下げられいるという事は、地上ね。
「この上がディルクのお屋敷なのですね」
「そうだよ。さあ、先に上がって……あ、ちょっと高さがあるか」
彼はわたしの体を持ち上げようとしたので――回避した。
「な、なんで普通に触れようとしているんですか!? わたし、まだそこまで気を許した覚えはありませんよ……」
「いや、君の体を持ち上げないと手が届かないだろう? 大丈夫だよ、ローザは軽いし、ひょいっと一発だよ」
確かに、身長のせいでロープには手が届かないけど……まだ出会ってそれほど経っていない殿方に持ち上げられるとか……ちょっとフクザツ。
何か良い方法はないかと思案すると――
「ああ、そうです! ディルク、さっきのように踏み台になって下さい。それで手が届きますから」
「ふ、踏み台……ちょっと酷いなぁ。でも、分かったよ。ほら、これでいい?」
腕立てするような形でうつ伏せになるディルク。この背中に乗れば――届く! ていっと手を伸ばせばロープに届く。
「……よし。え、あぁぁッ」
か弱いわたしは、握力が足りなくて、すってんころりん。ディルクの背中に落ちた。
「どふぅッ!!」
「きゃぁ!!」
幸い、ディルクのおかげでケガはなかった。打ち付けた腰を擦りながら、彼を起こす。
「ご、ごめんなさい……せっかく台になって貰ったのに」
「いいよ、ローザが無事なら」
痛そうに起き上がるディレクは腕を押さえていた。痛めてしまったようだ。……あ、あんな血が滲んで。わたしのせいだ。
「ディレク! その腕の傷!」
「あはは……擦り剥いちゃったね。でも、ローザのせいじゃない。これは僕が君を支えきれなかったから、僕が悪いんだ」
わたしは首を横に振った。
それは違う。
「本当にごめんなさい。治癒魔法のヒールをしますから」
彼の腕を取って、わたしはヒールを施した。すると、彼の腕はみるみる内に回復していく。滲んでいた血も消えた。
「これは凄いね、ローザ。君は本当に聖女なんだ」
「信じていなかったんですか?」
「いや、信じていたよ。だって、君の瞳は星のように輝いて、嘘をついているようには見えなかったからね。ほら、ローザ、体を持ち上げるよ」
彼は自然とわたしの体を持ち上げた。……どうしてだろう、今はもう嫌とかそういう感情も湧かなくなっていた。寧ろ……ディレクが気になり始めていた。
ゆっくりと縄はしごを登っていく。後ろからディレクが支えてくれるから、今度は安定していた。こんな風に人から支えて貰えれば、こんなにも安定するんだ。
「? いや、僕の方こそ、いきなり引っ張って悪かったよ。改めて宜しく……へえ、ローザは綺麗な銀髪をしているんだね。なんだ、体も細りとしているじゃないか」
そう言われて、わたしは顔を真っ赤にした。
「わたしの自慢の髪を褒めて戴けるなんて……って、体もってどういう意味ですか!」
「そのまんまの意味だよ。大丈夫、重くはなかったよ。あれは冗談さ」
な、なんだー…良かった。
最近ちょっと甘い物を摂りすぎていたので、ちょっぴり心配だった。
「そ、それより、地上へ戻りましょう」
「分かった。ここからは無理だけど、このかなり先が僕の屋敷に繋がっている。実は、僕はそこから歩いて来たんだ。人々を避難させる為にね。それで、さっきはローザを見つけたんだよ」
そうだったのね。
そっか、このディルクもわたしのように人々を……うん。悪い人ではなさそうね。
地上を目指して地下水路を歩いて行く。少しカビ臭くて湿気もあった。こんな場所はずっとは居たくない。
「ところで、ディルクはどうして天文学者になったんですか? 星が好きなんですか?」
「うん、そうだよ。星の力は偉大でね、このゾンビ騒動とは偶然なんだけど、共和国を守る為に月と太陽の研究をしていた」
「月と太陽……」
「ああ、ゾンビの前はモンスターの奇襲も多かっただろう? 自衛するには魔法の力を使うしかない。そこで共和国の王子テオバルドは、僕に目をつけた。この共和国をモンスターから守るバリアのようなものを作れないかってね。
研究はあと少しで完成する所まで来ていたんだ……ところが、このゾンビ騒動が事態を急変させてしまったよ。残念だ」
そう肩を落とすディルク。そっか、テオバルドは彼なりに国を守ろうとはしていたんだ。でも、結局はゾンビを呼び寄せてしまった。その事実はもう変えられない。その事を彼にも知って貰いたい。
「あの、ディルク、話があるんです」
「うん?」
――わたしは、テオバルドの所有している『不死王の髑髏』の事を話した。ディレクは最後まで真面目に聞いてくれた。
「……『呪われた遺跡』の。しかも、王子は闇のマーケットに手を出していたのか。なんと愚かな。その結果がこれとは……民が苦しんでいるというのに、籠城しているとは許せないな」
「この事を生存者にも話しましょう。そして、共和国の平和を取り戻すんです。このままでは……国は滅びの道を歩むだけ。聖女として、そうはさせません」
「分かった。君の指示に従おう。……よし、もう直ぐ屋敷だぞ」
随分と歩いてやっと縄はしごが見えた。あんな場所に吊り下げられいるという事は、地上ね。
「この上がディルクのお屋敷なのですね」
「そうだよ。さあ、先に上がって……あ、ちょっと高さがあるか」
彼はわたしの体を持ち上げようとしたので――回避した。
「な、なんで普通に触れようとしているんですか!? わたし、まだそこまで気を許した覚えはありませんよ……」
「いや、君の体を持ち上げないと手が届かないだろう? 大丈夫だよ、ローザは軽いし、ひょいっと一発だよ」
確かに、身長のせいでロープには手が届かないけど……まだ出会ってそれほど経っていない殿方に持ち上げられるとか……ちょっとフクザツ。
何か良い方法はないかと思案すると――
「ああ、そうです! ディルク、さっきのように踏み台になって下さい。それで手が届きますから」
「ふ、踏み台……ちょっと酷いなぁ。でも、分かったよ。ほら、これでいい?」
腕立てするような形でうつ伏せになるディルク。この背中に乗れば――届く! ていっと手を伸ばせばロープに届く。
「……よし。え、あぁぁッ」
か弱いわたしは、握力が足りなくて、すってんころりん。ディルクの背中に落ちた。
「どふぅッ!!」
「きゃぁ!!」
幸い、ディルクのおかげでケガはなかった。打ち付けた腰を擦りながら、彼を起こす。
「ご、ごめんなさい……せっかく台になって貰ったのに」
「いいよ、ローザが無事なら」
痛そうに起き上がるディレクは腕を押さえていた。痛めてしまったようだ。……あ、あんな血が滲んで。わたしのせいだ。
「ディレク! その腕の傷!」
「あはは……擦り剥いちゃったね。でも、ローザのせいじゃない。これは僕が君を支えきれなかったから、僕が悪いんだ」
わたしは首を横に振った。
それは違う。
「本当にごめんなさい。治癒魔法のヒールをしますから」
彼の腕を取って、わたしはヒールを施した。すると、彼の腕はみるみる内に回復していく。滲んでいた血も消えた。
「これは凄いね、ローザ。君は本当に聖女なんだ」
「信じていなかったんですか?」
「いや、信じていたよ。だって、君の瞳は星のように輝いて、嘘をついているようには見えなかったからね。ほら、ローザ、体を持ち上げるよ」
彼は自然とわたしの体を持ち上げた。……どうしてだろう、今はもう嫌とかそういう感情も湧かなくなっていた。寧ろ……ディレクが気になり始めていた。
ゆっくりと縄はしごを登っていく。後ろからディレクが支えてくれるから、今度は安定していた。こんな風に人から支えて貰えれば、こんなにも安定するんだ。
あなたにおすすめの小説
追放された役立たず聖女、実は国家の回復システムでした。私が消えた途端に国は崩壊、今さら泣いても戻りません。元勇者の魔王様に独占されています
唯崎りいち
恋愛
「役立たずの聖女はいらない」と国王に追放された私。
だがその瞬間、国中の“宿屋で一晩寝れば全回復する仕組み”は崩壊した。
――それは、私の力で成り立っていたから。
混乱する人間たちをよそに、私は元勇者だった魔王様に連れ去られる。
魔王様はかつて勇者として魔物を虐げていた過去を持ち、
今は魔物を守るために魔王となった存在だった。
そして私は気づく。
自分の力は、一人を癒すだけでなく――世界そのものを支えていたのだと。
やがて回復手段を失った勇者たちは崩壊し、
国王は失脚、国は混乱に陥る。
それでも私は戻らない。
「君は俺のものだ。一生手放さない」
元勇者の魔王様に囲われ、甘やかされ、溺愛されながら、
私は魔王城で幸せに暮らしています。
今さら「帰ってきて」と言われても、もう遅いのです。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
実家も国も私を捨てたが、私を愛さないと国が滅びる。絶望する人々を特等席で眺め、冷徹な王子の腕の中で思考停止する。
唯崎りいち
恋愛
持参金がないという理由で家族と祖国から追放された私は、実はこの国を支える“加護”そのものだった。
私が去った瞬間、王都の結界は崩れ、国は崩壊へ向かい始める。
そんな私を拾ったのは、冷徹と噂される隣国の王子。
「やっと見つけた。お前は俺のものだ」
捨てられたはずの私は、気づけば滅びゆく祖国を背に、彼の腕の中で溺愛されていた。
ゴースト聖女は今日までです〜お父様お義母さま、そして偽聖女の妹様、さようなら。私は魔神の妻になります〜
嘉神かろ
恋愛
魔神を封じる一族の娘として幸せに暮していたアリシアの生活は、母が死に、継母が妹を産んだことで一変する。
妹は聖女と呼ばれ、もてはやされる一方で、アリシアは周囲に気付かれないよう、妹の影となって魔神の眷属を屠りつづける。
これから先も続くと思われたこの、妹に功績を譲る生活は、魔神の封印を補強する封魔の神儀をきっかけに思いもよらなかった方へ動き出す。
聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路
藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。
この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。
「聖女がいなくても平気だ」
そう言い切った王子と人々は、
彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、
やがて思い知ることになる。
――これは、聖女を追い出した国の末路を、
静かに見届けた者の記録。
[完]出来損ない王妃が死体置き場に捨てられるなんて、あまりにも雑で乱暴です
小葉石
恋愛
国の周囲を他国に囲まれたガーナードには、かつて聖女が降臨したという伝承が残る。それを裏付ける様に聖女の血を引くと言われている貴族には時折不思議な癒しの力を持った子供達が生まれている。
ガーナードは他国へこの子供達を嫁がせることによって聖女の国としての威厳を保ち周辺国からの侵略を許してこなかった。
各国が虎視眈々とガーナードの侵略を図ろうとする中、かつて無いほどの聖女の力を秘めた娘が侯爵家に生まれる。ガーナード王家はこの娘、フィスティアを皇太子ルワンの皇太子妃として城に迎え王妃とする。ガーナード国王家の安泰を恐れる周辺国から執拗に揺さぶりをかけられ戦果が激化。国王となったルワンの側近であり親友であるラートが戦場から重傷を負って王城へ帰還。フィスティアの聖女としての力をルワンは期待するが、フィスティアはラートを癒すことができず、ラートは死亡…親友を亡くした事と聖女の力を謀った事に激怒し、フィスティアを王妃の座から下ろして、多くの戦士たちが運ばれて来る死体置き場へと放り込む。
死体の中で絶望に喘ぐフィスティアだが、そこでこその聖女たる力をフィスティアは発揮し始める。
王の逆鱗に触れない様に、身を隠しつつ死体置き場で働くフィスティアの前に、ある日何とかつての夫であり、ガーナード国国王ルワン・ガーナードの死体が投げ込まれる事になった……………!
*グロテスクな描写はありませんので安心してください。しかし、死体と言う表現が多々あるかと思いますので苦手な方はご遠慮くださいます様によろしくお願いします。
婚約破棄されたので、隠していた聖女の力で聖樹を咲かせてみました
Megumi
恋愛
偽聖女と蔑まれ、婚約破棄されたイザベラ。
「お前は地味で、暗くて、何の取り柄もない」
元婚約者である王子はそう言い放った。
十年間、寡黙な令嬢を演じ続けた彼女。
その沈黙には、理由があった。
その夜、王都を照らす奇跡の光。
枯れた聖樹が満開に咲き誇り、人々は囁いた。
「真の聖女が目覚めた」と——