聖女の千里眼は万能のようですよ?

夜桜

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視えない未来

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 隣国ベガを目指しつつ、静かに歩いていた。

 危機的状況を助けてくれた少年騎士・レーグル。
 どうして、わたしなんかを助けてくれたのだろうか。

「あの……」
「うん、そろそろ聞いてくる頃かなって思った。どうして聖女様を助けたか聞きたいんでしょ?」
「そ、そうなんです。見知らずのわたしをどうして?」
「そりゃ、女の子が困っているんだから助けるよ。僕は騎士だからね」

 当然の理由だった。
 そうだよね。

 理由はなんて単純。

 わたしは徐々にレーグルに信頼を寄せていた。

 小さな男の子ではあるけれど、強いし優しい。


「あのレーグルさん」
「僕の事は呼び捨てでいいよ」
「じゃ、じゃあ……レーグル君」
「うん」

「ベガの事聞いていい?」

「そうだね、実は僕はベガの出身なんだ」
「あー…そうだったのですね。帝国に用があったのですか?」
「そ。さっきまで僕も帝国に居たんだよ」

 そうだったんだ。
 もしかしたら、彼は帝国と縁があったのかな。
 招待された……とか。

 彼の身なりは普通の騎士とは違った。
 位もかなり上のように見えた。


 でも護衛とかいないし、ひとりぼっち。


 う~ん……。


 たまたまね。


 ◇


 ――――それから二日間。

 レーグル君と一緒に旅をして、ずっと守って貰っていた。必死にわたしを守ってくれる姿が素敵で、いろいろ話すうちに打ち解けて――彼が好きになっていた。


「レーグル君、強いね」
「えっへん。僕はそこらの騎士には負けないくらいの力を持っているからね」

 胸を張り、勝ち誇るレーグル君。
 ちょっと子供っぽいところが母性をくすぐられる。


「アムール様、もうすぐ大国・ベガに到着だよ」
「あの大きな街ですよね」
「そ、あの砂漠の向こうにある国がベガ」

 そっか……。
 やっと辿り着いたんだ。

 これでレーグル君との旅も終わりかな。


 ちょっと寂しいなって思った。


 出来ることならレーグル君と一緒に居たい。


「あの、レーグル君は国に到着したら……家に帰っちゃうんですか?」
「そうだね、家に帰って両親に挨拶しないとね。僕、姉ちゃんの事を報告しないといけないから」

「お姉さんがいたのね」

「うん、大切な姉だよ」

 ニコっと笑うレーグル君は、姉の事を話すと今までで一番の笑顔になった。どうやら、姉の事が大好きのようだ。

 そんな素敵なお姉さんなんだなーってわたしは思った。

 でもそれよりも。

 わたしはこれからどうすれば……。

「うーん……」
「アムール様、困ってるの?」
「うん。わたし追放されてどうすればいいか分からないの」

「あー…辛かったよね」

「いきなり何もかも失っちゃって……辛い」


「そうだよね、でもさ――」


 レーグル君は、わたしの傍に寄って来る。


 ――おかしい。


 なんか表情が冷たい。


 いつもの彼ではなかった。



 そして、



 クレイモアが、




 わたしのお腹を貫通・・していた。




「………………ぇ」



 ポタポタと血がしたたる。

 お腹に感じた事のない灼熱しゃくねつを感じた。


「…………れーぐる……くん?」


 レーグルはニタリと笑って……


 でも、わたしは地面に倒れた。


 浅くなる呼吸。
 虫の息。

 そんな朦朧もうろうとする意識の中、彼は言った。


「……姉ちゃんは、ラフィネ姫・・・・・さ」


「…………う、そ」


「この時をずっと待っていた。大国・ベガで聖女を殺す瞬間を……。だって、キミには未来を見通す千里眼があったからね。警戒していたんだ。信頼させて、使わないところを確認して……グサッってね」


(…………)


 視界が真っ暗になった。


 ……ああ、


 ……わたし、最初からだまされていたんだ。


 千里眼を使わなかった事を後悔した。
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