雰囲気で読む話

塩バナナ

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義眼の少女

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「綺麗だね」

少年は笑って心から言った。
少女は皮肉そうに笑って答えた。

「硝子玉が?」

それもだけどと笑みに悲しみを馴染ませ、少女の二つの瞳を確と見つめた。
思考が動く度、コロコロと瞳が忙しなく動く。
ああ、やっぱり綺麗だ。

空色のすべてを溶かしたような透き通った瞳も、全部の色を包み込んだ深い闇の瞳も。
少年は少女のどちらの瞳が偽りなのかを知らない。
だが、どちらも少女だと思った。

だってほら、そのきゅっと結んだ口がきつい言葉を並べてもきっと相手を慮ったものだろうし、小さな耳が悪口を取り込んでも流さず包み込んでくれるんだろう?

それでも自分だとその強い視線が伝えるから。どんなに紛れても少女は少女なんだと少年は笑う。

「あのね、私の目は水色なの」

誰も信じないけど。

「何で?僕だって赤い目なのに」

少年は心底不思議そうにしている。少年が前髪をかき上げると確かに赤い硝子がそこに填まっていた。

「綺麗ね」
「そう?君のほうが綺麗だけどなぁ」

まるで恋人同士が愛を囁きあうように、少年は頬を少し上気させて微笑んだ。
少女の口は驚いたように少し開いた。

赤い瞳って色が変わるのね。
まるで日が照るような少年の瞳を少女はそう賞した。
夕焼け空は少年の瞳を金にしていた。

君も変わるよ。
同じ空で少女の瞳は優しい緑と神秘的な紫を見せた。

二人は光が沈むその瞬間まで互いを見つめた。
最後の一瞬まで見逃すまいかと、瞬きさえ億劫そうにして。

闇に染まった世界で少年は少女の漆黒の瞳を思い出す。少女の瞳に包まれている気がした。

「やっぱり綺麗だ」

暗闇の中で少年は少女の硝子玉に触れる。
神経などないのにむず痒く感じた。
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