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しおりを挟むその日を境に、愛すべき平穏な日常がガラガラと音を立てて崩れていった。
「転校生を紹介するぞー」
先生の気だるげな声が響く。ざわつく教室を冷たい目で見ていた。ただそれは、僕には関係のない話だと思っていたからこそだった。
その考えを、転校生の声が粉々に打ち砕く。
「永瀬海斗だ。よろしく」
なんで彼が、と驚きの声を上げそうになるのをぐっと堪える。瞬間、全身が彼を欲するような、そんな強烈な渇きを感じた。
「どうした? 体調悪いのか?」
「いや……大丈夫だ」
隣に座るクラスメイトの優しい言葉に、なんとか気力だけで返事をする。だが、体の状態はちっとも大丈夫ではない。そんな辛い状態だというのに、カイトの声が、存在が、ひどく大きく感じられた。転校生の紹介が終わると同時に、ホームルームも終わったようでざわつきが増す。彼らの中心にいたカイトは急に立ち上がって僕の方へと近付いた。
「辛いならこれを飲むといい」
そう優しい低音で耳打ちされた。それと同時に、僕の手に何かが握らされる。
「っ……!」
おそるおそる握らされたものを見れば、それは小さな小瓶だった。その小瓶から放たれる香りに、僕は本能的にその中身を知った。
その小瓶の中身を飲み干してしまいたい衝動に駆られるが、そんなことを僕自身が許せるはずがない。
「バカにすんな……!」
人間としてのプライドから、その小瓶をカバンの奥深くにしまった。本当は床に向かって投げつけたいところだが、こんなところで壊すわけにもいかない。
苦しい。喉が熱い。周りの声も、先生の声も。何も聞こえない。
「やっぱお前 保健室行った方がよくないか? 死にそうな顔してるぞ」
前の席の人が僕の方を見た。彼はとても驚いた様子で口をパクパクと動かしている。一体 僕に、何を言っているのかももう聞き取れない。視界がくらくらする。
ガタン。
身体が痛い気がした。不思議なことに、さっきまで座っていたはずなのに至近距離に床が見える。
「雨月!?」
「愁介くん!?」
みんなが驚く声が聞こえる。先生が近付いてきて、僕の身体が床から遠ざかった。
「素直に飲めばよかったのに」
そんなカイトの声だけがはっきりと耳に届いた。それをきっかけに意識が落ちる。
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