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しおりを挟む「なぁ、いいか?」
先ほどのクールな雰囲気とは一転、僕を見つめる目に欲望の色が宿る。
「なにが?」
少しだけ海斗の言葉の先を予想しつつも、わかってないフリで答えた。
「こういうこと」
海斗の顔が近付く。そう思っている間に、唇に柔らかい感触を感じた。
「っ……!」
それがキスだと気付けば、恥ずかしさで一気に身体の体温が上がる。唇が離れてもなお、顔は近付いたままで余計に恥ずかしい。
「嫌だったか?」
疑問形な言葉とは反対に、彼の表情に映るのは余裕の表情。
このとききっと僕は、間抜けな顔を晒していたことだろう。急にキスをされたからじゃない。嫌だったかと問われて、大嫌いなはずの吸血鬼にキスをされても全く嫌悪感を感じない自分にびっくりしていたのだ。
「そんな顔するなよ。止められなくなる」
海斗の手が僕の頰をなぞる。少しヒヤリとするその手が心地よくて僕は目を閉じた。
「……逃げないのか?」
意外そうな声に笑みがこぼれる。僕は、ずっと求めていたのだ。甘えさせてくれる存在を。僕のせいで居なくなったりしない存在を。だからその理想に当てはまるその人から、僕が自分から逃げるなんてありえない。
「逃げてほしいの?」
海斗の好意に応えてもいいだろうか。そんなことをしたら、天の一族を裏切ることになるのだろうか。少しだけ、まだ揺れるけれど。
「……その言い方、誘ってんのか?」
いや、きっと大丈夫だろう。祖父も母も、僕の意志で決めたことなら許してくれる。それに祖父や母は、吸血鬼も人間も関係なく人の本質を見れる人たちだ。
「海斗は本当に、吸血鬼らしくないね」
「どういう意味だよ」
「優しい、ってこと」
僕は海斗の胸のあたりの服を掴んでぐっと引き、触れるだけのキスをした。
「なっ、」
今まで余裕そうな海斗しか見ていなかったため驚いた顔が新鮮に映る。次いで、余裕を失っていく彼の表情。彼は僕の顎を掴んでぐっと固定し、荒々しく口を塞いだ。
「っ……ん、」
さっきとは違ってぬるりとしたものも入ってきた。酸素がもっていかれる感覚もする。キスが、こんなに苦しいものだなんて。
「っ、やっと、らしくなった」
「うるせ。襲われたいのかよ」
そういうことを聞くから、海斗は海斗なのだと思った。思えば、名前を呼び合うようになったときから、海斗はずっと優しかった。僕を守ろうとしてくれて、リュウキの所までも助けに来てくれた。
「海斗、ありがと」
小さく呟いて抱きしめれば、
「……愁介のせいだからな」
ふわりと身体が浮いて寝室へと連れて行かれる。
顔に触れる服には海斗の匂いが染み付いていて、それだけで身体が熱くなった。全身から水分が蒸発してしまうようで、思い出したかのように喉が強烈な渇きを訴える。
「かい、と……」
柔らかいベッドの上に押し倒される。僕の意図を汲み取ったのか、それとも海斗も同じ気持ちになったのか。
チクリと右肩に走る痛み。海斗の柔らかい髪の毛にくすぐったさを感じながらも海斗の方へ顔を向け、彼の首筋へと牙をたてた。
……美味しい。
数分の間、無言で互いの血液を飲みあう。僕の血と海斗の血が身体の中で混ざり合っているかのような錯覚を起こした。それにさえ変な気持ちが高まって、息が荒くなっていく。僕の上に被さる海斗の息もまた、荒くなっていた。
「かわいい」
ようやく顔をあげた海斗は、僕の目をじっと見てそういった。
「可愛くなんか、」
ない。と言おうとしたところでまた口が塞がれる。意識がキスに向いている間にだんだんと脱がされていく服。
「怖い?」
無意識に震える身体。あんなことがあった後なのだ。怖くないと言えば嘘になるが、仄かな期待が混ざっていることも自分でわかっていた。
「怖く、ない」
「……嫌だって言っても止めないからな」
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