海に溺れる

沙羅

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そんな中で、僕は今の家に海斗と住むことになった。
「ほんとに引っ越さなくて大丈夫なのか?」
「あぁ。陸の王の能力の前ではどこに逃げたってあまり変わらないんだ」
「陸の王の能力?」
「あぁ。あいつは自分の血を動物や人間に飲ませることによって支配下に置くことのできる能力を持っている」
「血を? だったらそんなに大規模なことはできないんじゃないのか?」
「ところがそうでもない。陸の王の血は濃すぎて、ほんの少し飲んだだけでも子孫にまで伝わってしまうんだ」
「つまり、先祖で誰か1人でもリュウキの血を飲んでいたらアウトってこと?」
「そうなるな。だから、あいつが本気で俺らを探そうとすればすぐに見つかるってことだ。なら何もせず、ここで待ち受けていたって一緒だろ?」
「それもそうだな。僕らには? 何か能力があったりするのか?」
「天は……確か物体を自由に動かす能力だったはずだ。ほら、俺を助けたときナイフがまっすぐにあいつに飛んでいっただろ?」
確かに、今思い出せば不思議な現象だった。あれが何かしらの能力のおかげだったと言われれば納得だ。

「俺は、自分の血から武器を作る能力だ」
「あの赤い、不思議な形の剣か?」
「あぁ。どんな魔物、吸血鬼にも攻撃が通用する優れものだ」
「なるほどな……。となると、一番厄介なのはリュウキの能力か。人が人質に取られる可能性だって……」
「そんな心配すんなって。俺がみんな守ってやるからさ」
「……根拠があって言ってるのか?」
「いや、根拠はないな。でもあんなお子様には負けないさ。俺は、お前も含めてみんなを守るよう努力する。だから、俺が死にそうな時は前見たいに秀介が助けてくれ」
「っ、あれは、海斗が死んだら僕の身が危うくなるから仕方なくで……!」
「それでもいい。俺は嬉しかったんだ」
そう言って海斗は僕の左手を優しく掴み、片膝をついた姿勢になる。それはまさに、騎士のようであった。

「俺は、愁介に会うまで天の一族のことは大嫌いだった。裏切って、みんなに迷惑をかけて。それなのにのうのうと生きてる最低な奴ら。そう思ってたよ」
僕の左手を海斗は自分の右手にのせ、言葉を続ける。

「でも愁介は違った。大切なものを守ろうと、1人で戦ってた。強くて優しい愁介を、俺は守りたいと思ったんだ」
海斗の声が波になって僕の心にぶつかる。それが徐々に体全体へと広がり、目から少量の水滴となって流れ出た。
「俺は一生、雨月愁介を守り抜くと誓うよ」
静かに泣く僕を見て優しげに笑った海斗は、僕の左手の甲に口付けた。
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