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まずいと思ったのは、もう脱け出せなくなってからだった。
「今日はどんなことを書こう」
授業中にそう考える時間がどんどん増えていって。気付けば四六時中、頭の中は先生でいっぱいだった。
まるで中毒症状のように、書く文字数はどんどん増えていく。酷い日には1日1ページを使い切るようになってしまって、さすがにダメだと思い始めた。
それでも、僕は狡い。
『さすがに毎日この量は迷惑ですかね……?』
そんな聞き方をすれば断れる人間がいないと分かっていて聞くのだから。先生が肯定したという事実を盾にするために、そう聞くのだから。
『忙しかったら調節するから。読むのは楽しいし、好きなだけ書けばいい』
勝手にしろと言われているような、一見すれば冷たい返答。でもその冷たさには、気を遣わせない温かさがあった。
いつも先生はそうだ。「授業なんてめんどくさい」なんて先生にとっての禁句を平気で言うくせに、先生の作る社会のプリントはどの先生よりも細かくて分かりやすい。
生徒の目線に立ってくれると評判だったのは、きっとこういうことの積み重ねだったのだと思う。
結局僕はそんな先生の優しさに甘えて、どんどん依存していった。
『日々の足跡』には、僕から先生への言葉。先生から僕だけへの言葉。2人だけの言葉が詰まっている。寂しかった僕がそれを救いに思ったのは、きっと必然だった。
いつしか僕の秘密を一番知っているのは、親でも友達でもなく、先生になっていて。
でも、そんなの永遠には続かないことも、僕は分かっていた。
ページが減るごとに、僕の卒業式が刻々と近付いていること。先生とはもう、文字ですら話すことが出来なくなるということ。
寂しいけれど、それは仕方のないことで、受け入れなければいけないことだ。
『先生とこうやって話せるのも、あと1ヶ月だと思うと寂しいですね』
だから別に、何も期待なんてしていなかった。充分、先生からは幸せをもらったから。
むしろここで離れないと、僕はもっと先生のことを好きになってしまう。
『お前が欲しいなら、メアドくらいなら教えてやれるけど』
そう思っていたのに、先生は意外にもそう言った。もちろん先生は僕の気持ちなんて知らないのだから、本当に善意だったのだと思う。
それが分かっているから苦しくて嬉しくて……依存の波に溺れていた僕は、その藁にすがった。
「今日はどんなことを書こう」
授業中にそう考える時間がどんどん増えていって。気付けば四六時中、頭の中は先生でいっぱいだった。
まるで中毒症状のように、書く文字数はどんどん増えていく。酷い日には1日1ページを使い切るようになってしまって、さすがにダメだと思い始めた。
それでも、僕は狡い。
『さすがに毎日この量は迷惑ですかね……?』
そんな聞き方をすれば断れる人間がいないと分かっていて聞くのだから。先生が肯定したという事実を盾にするために、そう聞くのだから。
『忙しかったら調節するから。読むのは楽しいし、好きなだけ書けばいい』
勝手にしろと言われているような、一見すれば冷たい返答。でもその冷たさには、気を遣わせない温かさがあった。
いつも先生はそうだ。「授業なんてめんどくさい」なんて先生にとっての禁句を平気で言うくせに、先生の作る社会のプリントはどの先生よりも細かくて分かりやすい。
生徒の目線に立ってくれると評判だったのは、きっとこういうことの積み重ねだったのだと思う。
結局僕はそんな先生の優しさに甘えて、どんどん依存していった。
『日々の足跡』には、僕から先生への言葉。先生から僕だけへの言葉。2人だけの言葉が詰まっている。寂しかった僕がそれを救いに思ったのは、きっと必然だった。
いつしか僕の秘密を一番知っているのは、親でも友達でもなく、先生になっていて。
でも、そんなの永遠には続かないことも、僕は分かっていた。
ページが減るごとに、僕の卒業式が刻々と近付いていること。先生とはもう、文字ですら話すことが出来なくなるということ。
寂しいけれど、それは仕方のないことで、受け入れなければいけないことだ。
『先生とこうやって話せるのも、あと1ヶ月だと思うと寂しいですね』
だから別に、何も期待なんてしていなかった。充分、先生からは幸せをもらったから。
むしろここで離れないと、僕はもっと先生のことを好きになってしまう。
『お前が欲しいなら、メアドくらいなら教えてやれるけど』
そう思っていたのに、先生は意外にもそう言った。もちろん先生は僕の気持ちなんて知らないのだから、本当に善意だったのだと思う。
それが分かっているから苦しくて嬉しくて……依存の波に溺れていた僕は、その藁にすがった。
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