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2週目 [告白]
第14話 ~拓海Side~
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デートの日を使うのは最終手段。それまでに絶対、彼女を千秋ちゃんから引き離す。
趣旨が変わっていることには目を瞑って、僕はさっそく計画を実行に移し始めた。
「ごめん遅くなっちゃった」
そのためにまず、カースト上位の女の子と帰ることにした。
「大丈夫だよ」
香水でもつけているのか、甘ったるい香りを連れて彼女が近づく。
「拓海と帰るの久しぶりだよね」
そいつは、我が物顔で僕の腕に絡みついた。イライラする気持ちを必死に抑えながら、自分に有利となる彼女の言葉を待つ。
「また新しい彼女できたの? 今度は美穂なんじゃないかって、みんな騒いでる」
待っていた話題は、すぐに来た。
彼女が色恋にしか興味のない人間であることに、今だけは感謝をする。
「はぁ……やっぱりそう見られてるのか」
わざと困っているような素振りを見せれば、予想通り話に食いついてきた。
「なにそれ、違うってこと?」
思い通りすぎて笑ってしまいそうになる口元に力を入れながら、なるだけ自然に嘘をつく。
「違うよ。むしろ付き纏われて困ってるくらい」
僕は自分の見せ方も、周りからの見られ方もよく知っている。彼女のような人間にとって僕は、言っていることがある程度真実だと補正される人間であると知っていた。
「めずらし。拓海って来るもの拒まず、って感じなのに」
「断るのが苦手なだけだよ」
「……それは、私に対しても?」
「ううん。そんな相手に、俺は一緒に帰ろうなんて自分から誘わないよ」
彼女は「よかった」と、余裕のある態度で答える。よほど自分に自信を持っているのか、僕がそういうと分かっていたかのように。
「私も。拓海だから断らないんだからね」
いつもは心の隙間をほんの少しだけ埋めてくれる恋愛ごっこも、今はただただ鬱陶しい。
早く、僕のために動くと言ってくれ。
「ありがとう……。それで、相談なんだけど」
もっと甘い言葉の応酬があると彼女は予想していたんだろう。若干不服そうな顔をして「何?」と尋ねられる。
「どうやって彼女を突き放せばいと思う? 俺だけじゃなくて、千秋ちゃんにまで付き纏うようになっちゃってさ。さすがに迷惑してるんだ」
人に強く言えない無垢な人間を演じながら、それでも困っているんだと主張する。私が助けてあげたいと、助けられるのは私しかいないと、思わせるために。
案の定、彼女は少し考えたあとにニヤリと笑った。僕に恩を売れる、絶好の機会だとでも思ったんだろう。
「私が解決してあげようか?」
計画通りに動くその女を内心で見下しながら、もちろん僕はその話に乗った。
森山美穂が、拓海くんの迷惑も考えずに彼に付き纏っている。
そんな噂は瞬く間に広がって、他人づてに僕の耳にまで聞こえてくるようになった。
さすがはカースト上位者の拡散力だと感心する。そして僕はその噂を千秋ちゃんの耳に入れさせないために、彼の側にいる時間をいつもより長くした。
僕が千秋ちゃんといるときに彼女が声をかけてくれれば噂の裏付けにもなる。一石二鳥の作戦だった。
そんな小細工をしながら、彼女が諦める日を今か今かと待った。でも、彼女は一向にその兆しを見せない。それどころか、僕と千秋ちゃんが話している間にも普通に入り込んでくる。
どうして。彼女には、この噂が届いていないのだろうか。それとも、届いた上で千秋ちゃんから離れようとしないのだろうか。
前者ならバカだと思うだけだが、後者ならば笑ってはいられない。
そうしてイライラしきっていた木曜日。彼女は予想外の行動をとった。
僕が千秋ちゃんと帰ろうとしてた時、こんなことを言いだしたのだ。
「拓海くんに、聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
辛うじて寄せ集めた建前の欠片を繋ぎ合わせて、いつも通りの態度でそう返した。
そうすれば彼女は千秋ちゃんの方をちらちらと見ながら言い淀む。どうやら彼には聞かれたくない話らしかった。
ならばこれは好都合だろうと、僕のズルい部分が応え方を導き出した。
「いいよ、待ってて。ごめん、千秋ちゃんは先に帰っててくれる?」
捉えようによっては浮気かと思ってもらえないだろうか。そんな願いを込めながら、「ごめん」なんて言葉を使う。彼は鈍感だから、僕の意図には気づかないかもしれないけど。
千秋ちゃんは「わかった」と一言だけ言って、教室を出ていった。まだ教室には人が残っていて、中には彼女を睨んでいる女子も数人いる。
「場所、移動してもいい?」
このままの方が好都合ではあったが、断る正当な理由も見つからないので彼女に従った。
放課後にはあまり人が来ないであろう教室に、2人で入る。
「それで聞きたいことって?」
促せば、彼女は少し言いにくそうにしながらも話し始めた。
「噂のことなんだけど……。拓海くんも知ってるんだよね? 私が拓海くんに付きまとってるって言われてること」
やはり耳に入っていないわけではなかったのかと少し驚く。さて、どう返すべきか。悩んでいるうちに、彼女はもう一言付け加えた。
「ねぇ、どうしてそんな嘘をついたの?」
趣旨が変わっていることには目を瞑って、僕はさっそく計画を実行に移し始めた。
「ごめん遅くなっちゃった」
そのためにまず、カースト上位の女の子と帰ることにした。
「大丈夫だよ」
香水でもつけているのか、甘ったるい香りを連れて彼女が近づく。
「拓海と帰るの久しぶりだよね」
そいつは、我が物顔で僕の腕に絡みついた。イライラする気持ちを必死に抑えながら、自分に有利となる彼女の言葉を待つ。
「また新しい彼女できたの? 今度は美穂なんじゃないかって、みんな騒いでる」
待っていた話題は、すぐに来た。
彼女が色恋にしか興味のない人間であることに、今だけは感謝をする。
「はぁ……やっぱりそう見られてるのか」
わざと困っているような素振りを見せれば、予想通り話に食いついてきた。
「なにそれ、違うってこと?」
思い通りすぎて笑ってしまいそうになる口元に力を入れながら、なるだけ自然に嘘をつく。
「違うよ。むしろ付き纏われて困ってるくらい」
僕は自分の見せ方も、周りからの見られ方もよく知っている。彼女のような人間にとって僕は、言っていることがある程度真実だと補正される人間であると知っていた。
「めずらし。拓海って来るもの拒まず、って感じなのに」
「断るのが苦手なだけだよ」
「……それは、私に対しても?」
「ううん。そんな相手に、俺は一緒に帰ろうなんて自分から誘わないよ」
彼女は「よかった」と、余裕のある態度で答える。よほど自分に自信を持っているのか、僕がそういうと分かっていたかのように。
「私も。拓海だから断らないんだからね」
いつもは心の隙間をほんの少しだけ埋めてくれる恋愛ごっこも、今はただただ鬱陶しい。
早く、僕のために動くと言ってくれ。
「ありがとう……。それで、相談なんだけど」
もっと甘い言葉の応酬があると彼女は予想していたんだろう。若干不服そうな顔をして「何?」と尋ねられる。
「どうやって彼女を突き放せばいと思う? 俺だけじゃなくて、千秋ちゃんにまで付き纏うようになっちゃってさ。さすがに迷惑してるんだ」
人に強く言えない無垢な人間を演じながら、それでも困っているんだと主張する。私が助けてあげたいと、助けられるのは私しかいないと、思わせるために。
案の定、彼女は少し考えたあとにニヤリと笑った。僕に恩を売れる、絶好の機会だとでも思ったんだろう。
「私が解決してあげようか?」
計画通りに動くその女を内心で見下しながら、もちろん僕はその話に乗った。
森山美穂が、拓海くんの迷惑も考えずに彼に付き纏っている。
そんな噂は瞬く間に広がって、他人づてに僕の耳にまで聞こえてくるようになった。
さすがはカースト上位者の拡散力だと感心する。そして僕はその噂を千秋ちゃんの耳に入れさせないために、彼の側にいる時間をいつもより長くした。
僕が千秋ちゃんといるときに彼女が声をかけてくれれば噂の裏付けにもなる。一石二鳥の作戦だった。
そんな小細工をしながら、彼女が諦める日を今か今かと待った。でも、彼女は一向にその兆しを見せない。それどころか、僕と千秋ちゃんが話している間にも普通に入り込んでくる。
どうして。彼女には、この噂が届いていないのだろうか。それとも、届いた上で千秋ちゃんから離れようとしないのだろうか。
前者ならバカだと思うだけだが、後者ならば笑ってはいられない。
そうしてイライラしきっていた木曜日。彼女は予想外の行動をとった。
僕が千秋ちゃんと帰ろうとしてた時、こんなことを言いだしたのだ。
「拓海くんに、聞きたいことがあるんだけど」
「なに?」
辛うじて寄せ集めた建前の欠片を繋ぎ合わせて、いつも通りの態度でそう返した。
そうすれば彼女は千秋ちゃんの方をちらちらと見ながら言い淀む。どうやら彼には聞かれたくない話らしかった。
ならばこれは好都合だろうと、僕のズルい部分が応え方を導き出した。
「いいよ、待ってて。ごめん、千秋ちゃんは先に帰っててくれる?」
捉えようによっては浮気かと思ってもらえないだろうか。そんな願いを込めながら、「ごめん」なんて言葉を使う。彼は鈍感だから、僕の意図には気づかないかもしれないけど。
千秋ちゃんは「わかった」と一言だけ言って、教室を出ていった。まだ教室には人が残っていて、中には彼女を睨んでいる女子も数人いる。
「場所、移動してもいい?」
このままの方が好都合ではあったが、断る正当な理由も見つからないので彼女に従った。
放課後にはあまり人が来ないであろう教室に、2人で入る。
「それで聞きたいことって?」
促せば、彼女は少し言いにくそうにしながらも話し始めた。
「噂のことなんだけど……。拓海くんも知ってるんだよね? 私が拓海くんに付きまとってるって言われてること」
やはり耳に入っていないわけではなかったのかと少し驚く。さて、どう返すべきか。悩んでいるうちに、彼女はもう一言付け加えた。
「ねぇ、どうしてそんな嘘をついたの?」
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