だって僕は君だけのモノ

沙羅

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2週目 [告白]

第23話 ~拓海Side~

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――もう、後のことなんてどうでもいい。

彼の服を捲り上げ、現れた肌に指を這わせる。
「な、に」
「許してくれるんでしょ?」
大切なものを撫でるように、触れるか触れないかの力加減で。

「くすぐったいから……!」
彼の頭上でガチャガチャと鎖の擦れる音が響く。
必死に身をよじる千秋ちゃんの姿が可愛くて、もっと彼のいろんな表情が見たいと思った。

そう思って、今度は彼の肌に顔を近づける。
「ひっ!」
舌で触れれば、彼の身体がひときわ大きくビクついた。
「なんで、そんなこと」
彼の質問には答えずに、腹部から心臓あたりに向かって舐め上げる。
いくら言葉では「愛する」を受けれたとしても、実際に幼馴染からこんなことをされるのは恐怖だったはずだ。そのせいか、はたまた別の感情からか。舌越しにはっきりと動いているのが分かるほど、彼の鼓動が大きい。
その動きを、彼を生かす器官を。自分のものに出来ればいいのにと、僕はそこへ口づける。そのままキツく吸えば、彼の肌に紅い跡が残った。
「綺麗……」
僕は思わずそう呟き、この後が一生残ってくれればいいのにと願いながら、その跡を優しく手でなぞる。

……ここまでしても、千秋ちゃんは『やめろ』と言わなかった。
「言わなくてもいいの?」
もう一度尋ねる。
「僕がこれから千秋ちゃんに何をしようとしているか、ちゃんと分かってる?」
ベッドの上で、1人は拘束されながら服を乱し、かたやもう1人は愛しげに見下ろしている。いくら千秋ちゃんがそういうことに疎いとしても、この先の展開には察しがつくだろう。

「分かんないよ」
彼が答える。
「拓海が僕にどうしてほしいのか、分かんない」
それは千秋ちゃん自信の気持ちを知りたい僕にとっては予想外で、でも僕を優先してしまいがちな千秋ちゃんらしい答えでもあった。
「本当に僕に、『やめろ』って言ってほしいの?」

僕はそれに答えられない。黙っていると、さらに質問が飛んできた。

「今泣いてる意味はなに?」
そう言われて、自分が泣いていたことにやっと気が付く。意識してしまったことで、辛うじて耐えられていた涙が止まらなくなった。

「どうして? なんで千秋ちゃんはそんなに優しいの……? 諦めさせてほしいのに、千秋ちゃんがそんな風だから……」
涙と同時に、言葉までも抑えが効かなくなる。
「あの時だってそう。最期に傍にいてほしかっただけなのに。愛してるなんて、そんな嘘の言葉欲しいなんて思ってなかった……!」

まるで子供みたいに、理不尽な怒りが湧きあがってくる。彼が1つも悪くないことくらい、これまで彼の言葉に支えられてきた僕は十分に知っているのに。

「本心じゃない優しさなんて要らないんだよ……。今だって、本当は嫌なんでしょう? なんでいつも言ってくれないの。どうして、僕がやることを受け入れちゃうの」

その理由くらい分かっている。千秋ちゃんは僕の小さな頃からの境遇を知っているからだ。あまりにも不幸な目に遭ってきた僕を見続けて、さらに僕が千秋ちゃんばかりに依存していたものだから、ある種の義務感で傍にいてくれる。
それはさながら、親が子に無償の愛を与えるように。

でもそれは、僕が千秋ちゃんに向ける気持ちとは決定的に違う。
この気持ちを言葉に当てはめるなら、僕はずっと怖かった。

そんな僕に彼は笑って答える。特別に飾ったものじゃない、いつもの何気ない会話の時にも向けてくれる笑顔。

「バカだなぁ。そんなことずっと思ってたの?……嫌だと思ってないから、嫌って言う必要がないだけ。それ以外に理由がある?」
彼はその大きな心で、僕の弱くて苦い部分を優しく包んでいく。

「それに、この前はちゃんと言っただろ? キスはやめろって。まぁ、結局守ってもらえなかったわけだし、今はもう美穂ちゃんとも別れたからいいんだけどさ」

だから、『やめろ』って言わないのが僕の本心だと思っていいんだよ。

信じた? と彼が得意げに笑うから、すすり泣く音が大きくなった。
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