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しおりを挟む階段を上がった先の部屋に先に行っていて、と告げられたので言われた通りにその部屋へと行く。見た目や噂に似合わず、その部屋は生活感のないさっぱりとした部屋だった。
「もっと片づけられないタイプかと思ってた」
「俺、微妙に完璧主義でさ。部屋の物とかは決まった位置に置かないと気が済まないの」
誰もいない部屋の中で言ったはずなのに急に後ろから声が被さってきて驚く。
「はは、そんなにびっくりしないでよ」
テーブルの上に冷たいお茶が2つ置かれ、向き合う形で座ることになる。苦手な人と対面、しかも相手の家の中というシチュエーションは、まだ何も話していない段階から緊張感を高めた。
「じゃあ本題に入ろうか」
早く帰りたいと思ったのを受け取ってくれたかのように、彼が話を始める。
「まず始めに、この写真をよーく見てくれる?」
そう言って彼はスマホを取り出し、机の上に置く。カメラロールをタップしたかと思うと、最新の写真は肌色で埋まっていた。
「な、に、これ……」
その写真が何かが分からなくて出てきた問いではない。それは、なぜ彼がこんな写真を自分に見せるのかが全く理解できなくて出てきた問いだった。
「見てわかんない? 凛ちゃんのハメ撮り写真でーす!」
恐怖に震える自分とは対照的に、目の前の男はテンションを上げていく。何がしたいのか全く分からなかった。
「いやー、あの女が『彰斗には近づかないで』なんてメール送るからさ、警戒心が解けるまで待つの苦労したよ。思ったより警戒心ガバガバだったから、すぐでもいけそうだったけどね。いやぁ、惜しいことしたなぁ」
全く理解できない僕を置いて、彼はなおもしゃべり続ける。
「でもあの女もバカだよね。俺の計画にいち早く気付いて邪魔した気になって、結局は圭が断れなくなる材料自分で作るんだもん。あ、理解してないって顔だね?」
声高らかにご機嫌にしゃべっていた声が、やっと自分の方を向く。
「簡単に言うとね。彼女は君のために僕と付き合ったってわけ。そして、そんな献身的な彼女のハメ撮り写真を流出させたくなかったら、君は僕の言いなりになって、ってこと」
情報量が多すぎて、脳が停止しそうになる。というより、停止させてしまいたかった。
彼女が他の男に抱かれたというショック。それが自分のためだったという罪悪感。彼女の忠告をちゃんと聞いておくべきだったという後悔。目の前の男への、恐怖。
色んな感情がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくなる。
「まぁこの家に来た時点で答えは出てるんだけどね。逃がすわけないし」
彼が立ち上がって自分の方へと近づいてくる。その目は標的を定めた獣のようで、無意識に体が後ろへと動いていた。
「逃げても無駄だから。ベッドとソファどっちがいい? おすすめはベッドなんだけど」
伸びてくる手を交わそうとするも、がっちりと手首をつかまれてしまう。今日ほど鍛えておけばよかったと思う日はない。
「あは、捕まえた。せっかくだからベッド行こうね」
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