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それからの生活は本当に幸せな日々だった。
一緒にご飯をつくったり、一緒にゲームをしたり、たまにデートに行ったり。
我慢すると言ったのは自分だから身体的接触まではしないようにしていたが、啓介が熱を込めた目で見つめてくることも増えていて、もう少しでその段階にも進めるのではと感じていた。
兄弟としてではなく最初からこう出会っていたら、きっと記憶をなくす前の啓介ともこんな風に過ごせていたのだろう。それくらい、恋人と呼ぶに違和感のない関係だった。
「遥。少し、俺の話を聞いてほしい」
ある日のお風呂上がり、啓介が急にそんなことを言いだした。いつもはこんな前置きなんかなく話し始めるのになんだろうと思って振り向くと、そこには真剣な目をした彼が立っていた。
「どうしたの?」
「今のままでも楽しいけど、もっと遥と先に進みたいから……。記憶はなくしちゃったけど、今の俺も遥のことが好きになったって、ちゃんと伝えないとって思って」
啓介の、言いづらいことでもちゃんと逃げない性格が好きだ。今まではそれも少し憎らしいところになっていたけれど、自分に好意が向けられた状態ではこんなにも心地いい。
「僕のこと、好きになってくれたの……?」
「うん。自分が同性を好きになるなんてっていう葛藤はあったけど。でも、遥と暮らすのは全然ストレスがなくて、愛してくれてるなってのも伝わってきて何しても楽しくて。だから、もうとっくに好きなんだろうなって思った」
「ほんとに?嘘じゃない?」
「そんな質の悪い嘘なんかつかないって。待たせてごめんね。待ってくれてありがとう。もう、我慢しなくていいから」
待ち望んでいた言葉をまっすぐに伝えられて、泣きそうになる。啓介と兄弟になって、ほんの1か月で好きになって、それから数年間、とても長かった。
「好き。啓介、大好き。ずっと伝えたかった」
「俺も好きだよ」
顔を近づければ、僕の意図を察した啓介が目をつむる。触れ合うだけのキスをして目を開けば、目の前で彼も微笑んでいた。心が通い合ったキスは、こんなにも幸せな気分にさせてくれる。
「最後まではしないから、もっと啓介に触れたい……」
キスだけでは止まりそうにない。体のすみずみまで啓介のことを愛したくなる。
「俺も、もっとイチャイチャしたい」
2人で狭いベッドに寝転んで、どちらからとなくキスをする。啓介はまた触れ合うだけのつもりらしかったが、頭を押さえて離れられなくしてやった。少し経つと苦しそうになって僕の胸を叩いてくるのは、記憶をなくす前の彼と全く同じ仕草だった。
「何笑ってるの」
「行動が一緒だなーって思ってさ。やっぱりキスしながら息するの下手なんだね」
「バカにすんなって」
「可愛いって言ってるんだから気にしないで」
上に被さってじっと目を見つめると、そんなに見ないでとでも言うように啓介が目をそらす。でも全部見てほしくて、目があったままでいてほしくて、彼の視線を追いかける。
「恥ずかしいから」
「でも目が合ってた方が興奮するでしょ?」
片方の手を啓介の股間へともっていく。可愛いそれはまだふにゃふにゃとしていて、早く育ててあげようと思った。
「下、脱いでほしいな。直接触りたい」
脱がせることもできるが、どうせなら脱いでいる姿を見たい。そう思ってお願いをすれば、啓介が恨めしげに睨んでくる。それでも折れることはせず、目で早く早くと訴える。
「……ちょっとだけ目、そらしてて」
本当はずっと見ていたいが、さすがに最初からいじめすぎてしまってはかわいそうだとも思い、目をそらしてあげる。ぱさっと落ちるズボンの音にさえ興奮の材料になった。
「もういいよ」
そう呼んだ啓介は、恥ずかしかったのか下半身に布団を身にまとっている。でもそんなの許すはずもなく、ぱっと剝ぎ取って、さきほどは触れなかった可愛いそこへと手を伸ばす。
しかしやわやわと握ったその瞬間、啓介の体がこわばるのを感じた。
「やめろって兄貴!!」
手が強い力で払いのけられる。数秒肩で息をした後、啓介は目を見開いていた。
「え、俺なんで……?」
発言やこちらに対して憎悪をむき出しにしないところを見ると、無意識でやったことみたいだった。記憶が戻ってしまったのかと不安になったが、それは杞憂であったと分かり安堵する。
「ごめん、遥。大丈夫だった?手痛くない?」
「大丈夫だよ。やっぱりまだ記憶が混同してたりするのかな」
「自分でもよくわかんない。なんか急に反応しちゃって……。でももう大丈夫だと思う。続けてほしい」
身体からの警告を無視してしまうほどに、今の啓介が自分を好きだと思ってくれていることが嬉しい。でも、こんな風にふとした瞬間に思い出してしまうことがあるというのは怖いなと感じた。おそらく特に記憶に刻まれている強烈な出来事に類似した出来事が起こると、記憶が戻りやすくなるということなのだろう。
「怖がらないように、めいっぱい優しくするから」
「うん、ありがとう」
記憶をなくす前は無理やりなことが多かったから、きっと大事に大事に優しくすれば大丈夫だろう。何回も繋がって愛を確認すれば、記憶が戻ってしまったとしても育った気持ちは無視できなくなるかもしれない。
「大好きだよ、啓介」
せっかく神様がくれたチャンスなんだ。
めいっぱい愛を注ぎ込んで、絶対に逃がさない。
一緒にご飯をつくったり、一緒にゲームをしたり、たまにデートに行ったり。
我慢すると言ったのは自分だから身体的接触まではしないようにしていたが、啓介が熱を込めた目で見つめてくることも増えていて、もう少しでその段階にも進めるのではと感じていた。
兄弟としてではなく最初からこう出会っていたら、きっと記憶をなくす前の啓介ともこんな風に過ごせていたのだろう。それくらい、恋人と呼ぶに違和感のない関係だった。
「遥。少し、俺の話を聞いてほしい」
ある日のお風呂上がり、啓介が急にそんなことを言いだした。いつもはこんな前置きなんかなく話し始めるのになんだろうと思って振り向くと、そこには真剣な目をした彼が立っていた。
「どうしたの?」
「今のままでも楽しいけど、もっと遥と先に進みたいから……。記憶はなくしちゃったけど、今の俺も遥のことが好きになったって、ちゃんと伝えないとって思って」
啓介の、言いづらいことでもちゃんと逃げない性格が好きだ。今まではそれも少し憎らしいところになっていたけれど、自分に好意が向けられた状態ではこんなにも心地いい。
「僕のこと、好きになってくれたの……?」
「うん。自分が同性を好きになるなんてっていう葛藤はあったけど。でも、遥と暮らすのは全然ストレスがなくて、愛してくれてるなってのも伝わってきて何しても楽しくて。だから、もうとっくに好きなんだろうなって思った」
「ほんとに?嘘じゃない?」
「そんな質の悪い嘘なんかつかないって。待たせてごめんね。待ってくれてありがとう。もう、我慢しなくていいから」
待ち望んでいた言葉をまっすぐに伝えられて、泣きそうになる。啓介と兄弟になって、ほんの1か月で好きになって、それから数年間、とても長かった。
「好き。啓介、大好き。ずっと伝えたかった」
「俺も好きだよ」
顔を近づければ、僕の意図を察した啓介が目をつむる。触れ合うだけのキスをして目を開けば、目の前で彼も微笑んでいた。心が通い合ったキスは、こんなにも幸せな気分にさせてくれる。
「最後まではしないから、もっと啓介に触れたい……」
キスだけでは止まりそうにない。体のすみずみまで啓介のことを愛したくなる。
「俺も、もっとイチャイチャしたい」
2人で狭いベッドに寝転んで、どちらからとなくキスをする。啓介はまた触れ合うだけのつもりらしかったが、頭を押さえて離れられなくしてやった。少し経つと苦しそうになって僕の胸を叩いてくるのは、記憶をなくす前の彼と全く同じ仕草だった。
「何笑ってるの」
「行動が一緒だなーって思ってさ。やっぱりキスしながら息するの下手なんだね」
「バカにすんなって」
「可愛いって言ってるんだから気にしないで」
上に被さってじっと目を見つめると、そんなに見ないでとでも言うように啓介が目をそらす。でも全部見てほしくて、目があったままでいてほしくて、彼の視線を追いかける。
「恥ずかしいから」
「でも目が合ってた方が興奮するでしょ?」
片方の手を啓介の股間へともっていく。可愛いそれはまだふにゃふにゃとしていて、早く育ててあげようと思った。
「下、脱いでほしいな。直接触りたい」
脱がせることもできるが、どうせなら脱いでいる姿を見たい。そう思ってお願いをすれば、啓介が恨めしげに睨んでくる。それでも折れることはせず、目で早く早くと訴える。
「……ちょっとだけ目、そらしてて」
本当はずっと見ていたいが、さすがに最初からいじめすぎてしまってはかわいそうだとも思い、目をそらしてあげる。ぱさっと落ちるズボンの音にさえ興奮の材料になった。
「もういいよ」
そう呼んだ啓介は、恥ずかしかったのか下半身に布団を身にまとっている。でもそんなの許すはずもなく、ぱっと剝ぎ取って、さきほどは触れなかった可愛いそこへと手を伸ばす。
しかしやわやわと握ったその瞬間、啓介の体がこわばるのを感じた。
「やめろって兄貴!!」
手が強い力で払いのけられる。数秒肩で息をした後、啓介は目を見開いていた。
「え、俺なんで……?」
発言やこちらに対して憎悪をむき出しにしないところを見ると、無意識でやったことみたいだった。記憶が戻ってしまったのかと不安になったが、それは杞憂であったと分かり安堵する。
「ごめん、遥。大丈夫だった?手痛くない?」
「大丈夫だよ。やっぱりまだ記憶が混同してたりするのかな」
「自分でもよくわかんない。なんか急に反応しちゃって……。でももう大丈夫だと思う。続けてほしい」
身体からの警告を無視してしまうほどに、今の啓介が自分を好きだと思ってくれていることが嬉しい。でも、こんな風にふとした瞬間に思い出してしまうことがあるというのは怖いなと感じた。おそらく特に記憶に刻まれている強烈な出来事に類似した出来事が起こると、記憶が戻りやすくなるということなのだろう。
「怖がらないように、めいっぱい優しくするから」
「うん、ありがとう」
記憶をなくす前は無理やりなことが多かったから、きっと大事に大事に優しくすれば大丈夫だろう。何回も繋がって愛を確認すれば、記憶が戻ってしまったとしても育った気持ちは無視できなくなるかもしれない。
「大好きだよ、啓介」
せっかく神様がくれたチャンスなんだ。
めいっぱい愛を注ぎ込んで、絶対に逃がさない。
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