4 / 6
04
しおりを挟むそして、1年。
僕は晴れて会社を継ぎ、君と過ごすための一軒家も手に入れた。
準備は万端で、あとは仕事先から帰ってくる君を待つだけ。だが、待てども待てども君は帰ってこなかった。
何か、何か重大な事件に巻き込まれているのかもしれない。居ても立っても居られなくなった僕は、使用人総出で彼を探させる。
数時間後に連絡が入って、聞けば彼は友達の家に泊まっているようだった。
僕が迎えに行くと言ったのを、君は忘れてしまったのだろうか。少しだけ怒りが湧いて、でも明日からは友達と過ごすことも出来なくなるだろうからと寛大な心で許した。
本当は家の前で一夜を過ごしたかったけれど、それでせっかくの再会に風邪を引いては元も子もない。仕方なく自分の家へ戻り布団に入った。明日が楽しみで、なかなか寝付くことは出来なかったけれど。
朝7時には家を出て、また君の帰りを待ち続けた。使用人に任せてもよかったのだが、やっぱり最初に「おかえり」と言ってあげるのは僕でありたい。
そして昼の3時頃、ようやく君は帰ってきた。
「おかえり」
そう言えば君は、あまりの嬉しさに思考が止まってしまったのか数メートル離れた先で歩みを止める。
「どうしたの?やっと会えたのに」
手を広げて待ってみても、近付いて来ない。 不思議に思ってこちらから近付けば、君は大きな声で叫んだ。
「来ないで!!」
その必死な様子に、頭に疑問符ばかりが浮かぶ。どうしてそんなことを言うのだろう。もしかして、僕を誰かと勘違いしているのだろうか。
「ストーカーは、貴方だったんですか……?」
そんな君の的外れな問いに、合点がいくと同時に笑ってしまった。だって僕はストーカーなんかじゃない。確かにやり口は似ている部分があるかもしれないけれど、僕のは全部君への恩返しなのだから。
「僕はそんな低俗な犯罪者とは違うよ。ただ僕は、君と家族になるために来ただけ」
そう言ったのに、君は僕と反対の方向に走り出した。理由は分からないけれど、まずは追わなければ始まらない。
幸い君はそんなに足が速い方ではなく、人並みの運動神経しか持たない僕でも十分に追いつけそうだった。
人の多い場所で騒ぎになっては困るからと、あえて一定の距離を保ちながら走る。人気の無い道に到達した頃に、やっと君の腕を掴んだ。
「嫌だっ、離してください……!」
肩で息をしつつも、なぜか君は必死に抵抗を続ける。本当はもっと素敵な流れでしたかったけれど、声を出させないためには得策だからと君の口を唇で塞いだ。
「んぅっ……」
驚きに目を見開いた表情がとても可愛くて、場所も状況も忘れて舌をいれる。なおも離れようとする頭を片手で引き寄せて、深く深く口付けた。
「……んっ、ふっ」
そういえば、とキスの合間にカバンからそっとそれを取り出す。それは本来、誰か部外者に見られた場合に口止めに使おうと思っていたもの。まさか君に使うとは思っていなかったけれど、濡れた目に光るそれを見せつければ、君はようやく声を失くした。
10
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる