ストーカーの恩返し

沙羅

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話は平行線を辿るばかりで、ちっとも前に進まない。僕が近付けば君が離れてを繰り返して、さすがに少しだけ苛立ちが募ってきた。

僕はこの7年間、全てを君に注いだのに。
どうして君は分かってくれないんだろう。

はぁ、と溜息を吐いて右に寄れば、その隙をついて君が玄関に向かって走り出す。それに後ろから追いついて、思い切り床に押し倒した。
まだ家具を置く前で良かった。君に怪我をされては困るから。

「嫌だ、離して……!」

そこまで君のことを考えているのに、まだ君は暴れ続ける。まるで僕が犯罪者で、君が被害者だとでもいうように。

「素直になりなよ。僕にずっと会いたかったんでしょう?」
「そんなの望んでない!僕は貴方なんて知らない……!」
僕の気持ちを、君は全然受け取ってくれない。
「離して!!」
なら僕だって、君の気持ちなんてーー。

「傷付くなぁ……」

君が何かを叫ぶけれど聞こえない。拒もうとしたってもう遅い。
過ぎた年月も、君への想いも、もう元には戻らないのだから。

「……関係ないけどね」

だって、7年前からこうなることは決まっていた。
運命が、僕が決めた。
今さら誰にも、君にだって覆させやしない。


背中をなぞれば大袈裟に震える身体。そのまま手を服の中にいれ、君の肌に直に触れる。チラリと見える白い肌が扇情的で、手が勝手に服を取り去ろうと動いた。

「もう、寂しくないから」

寂しくないのは君が? 僕が。
やっと僕たちはこれで家族になれる。ずっとずっとここで暮らすんだ。

そうすれば僕が、寂しくない。

君の目から生まれた雫を舐めとれば、塩辛さが胸に沁みる。後から後から溢れてくるそれを、僕は全て舐めとった。

君が嫌がった証拠を消して。君が嫌がる理由を消して。何年か経てば、きっと薄れる。


絶対に君を、幸せにしてみせるから。
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