上 下
1 / 4

転生

しおりを挟む
伝説の大聖女、アイリナ。
彼女の名前を知らない者はいない。
魔法、剣術、治癒、全ての能力を自由自在に使いこなし、無敵と言われた存在。
しかし、ある日突然、アイリナは死んだ。
意味深なマークが書かれている紙を手に持って。
そして、彼女の死は200年経った今でもわからない。




千年以上の最強で楽しい人生を満喫したはずなんだけど…
何か未練があったみたい。
だって、目を覚ましたら知らない子供に生まれ変わってたんだもん!
しかも、生まれ変わってすぐに捨てられたし。
私、いわゆる転生運悪すぎじゃない?
母親かもわからない人からもらったのは、百合の花が描かれてある高そうな本当のお父さんのブローチ。



ん…?
お父さんのブローチ?
「これだ!」
私は空に叫んだ。
追跡魔法をこれに使えば、お父さんの家に行けるかも知れない!
一か八か、試さなくちゃ!
私はブローチに手をかざした。
【チェイス】
呪文を唱えると、ブローチはだんだん姿を変えていった。
「わあっ!」
ブローチは綺麗なペガサスに変身した。
ペガサスは私の目の前に座り、何かを伝えたいかのように、鼻を鳴らした。
「乗れってこと?」
多分正解だと思う。
ペガサスに飛び乗ると、ペガサスは立ち上がり、羽を広げ、華麗に飛んだ。
すごい!何かに乗って飛ぶのは初めて!
これで、お父さんの家に行けるんだ!
『お嬢さん、すぐには行けないよ。』
頭の中で幼い男の子の声が聞こえた。
この体でも、動物の声は聞こえるのね。
(じゃあ、どうすればいいの?)
『驚いていないみたいだね。』
当たり前よ。
アイリナだった時、私は小鳥から竜まで、たくさんの動物と喋ったんだから!
(とにかく、どうすればいいの?)
『竜を一匹手懐けて。』
(なんで?)
『僕はずっとはいられない。だから、竜に乗り換えてもらう。竜にブローチを取り付けられれば、僕と同じように目的地に案内してくれると思うよ。』
そういうことね。
「わかったわ。」
竜と契約するのは簡単よ。
さっき自分のステータスを見たら前世と変わっていないみたいだから、私がアイリナだということを証明できれば、すぐに契約できるはず。
『それじゃあ、竜の洞窟へレッツゴー!』
「おー!」
私は腕を上に思いっきり伸ばした。

私の本当のお父さんへ。
少し寄り道するので、到着が遅くなります。
追伸、娘が竜に乗ってきても驚かないでください。
ーあなたの娘より。

よし。心の中で手紙も書いたし、準備完了。
洞窟まで、もう少しだし、楽しみだなあ!
しおりを挟む

処理中です...