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竜、エルン

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「ペガサス、竜の洞窟まで後どれぐらい?」
『目の前にあるじゃん!ほら!』
前を向くと、そこには天空に浮いた伝説の洞窟、竜の洞窟があった。
懐かしい。何も変わってない。
私がペガサスから降りると、ペガサスはブローチの姿に戻った。
ありがとうね、ペガサスさん。
ブローチをワンピースの片方のポケットに押し込み、私は洞窟の中に入った。
足音だけが洞窟の中で響き、私はついに古の部屋についた。
【インベントリ】
まさか、インベントリまで引き継いでいるとは…
私は丸い宝石をインベントリから取り出した。
この竜の絵の真ん中にある丸に竜帝の宝石を
はめれば…
宝石を押し込むと、ガチャリと音がした。
そして、壁が崩れ落ち、奥から絵に描かれていた創造の竜、エルンが現れた。
うわあ。完全に戦闘モード。
ちょっと話しかけてみよう。
(おーい!エルーン!)
頭の中で暴走している竜に喋りかけると、エルンは平常心を取り戻した。
『その声、もしかして、アイリナ!?でも、縮んでる…』
うん。やっぱりそうなるよね。
(エルン、久しぶり。あのね、私何者かに殺されたかもわからず、気づいたら死んでて、気づいたら生まれ変わってた!)
エルンは私の説明を聞いて、微笑んだ。
『ふふっ。アイリナらしいわね。じゃあ、いつものアレをくれないかしら?』
(はいはい。アレね。)
【クッキーシュークリームの雨!】
私が空に叫ぶと、空にシュークリームの形をした雲が作られ、そこから大量のクッキーシュークリームが降ってきた。
『きゃー!これよ、これ!クッキーシュークリーム!やっぱりあなた、アイリナね!』
エルンは嬉しそうにたくさんのシュークリームを持ち上げた。
エルンは、甘党なのだ。超がつくほどの。
だから、アイリナの時はよくここに来ては、クッキーシュークリームの雨を降らせていた。
口の中で大量のクッキーシュークリームを頬張る姿は、リスにしか見えなかった。
よし。今がチャンスかも。
(エルン、少し頼みがあるの。聞いてくれる?)
『ふぃーふぁふぉ!ふぉふぉふぁちのふぇふぁいふぁ、ふぁ、ふぁんへもひふわ!(いいわよ!友達の願いなら、なんでも聞くわ!)』
エルンは口の中にクッキーシュークリームを押し込んだ。
(ありがとう。早速だけど、エルン、お願い!私と契約して!)
私は頭を下げた。
『…へ?けい、やく?』
エルンの爪の間からクッキーシュークリームが溢れ落ちた。
『アイリナに契約してって言われるとはね…あなたが欲を出すなんて初めてね。』
エルンは深いため息をついた。
確かに、アイリナだった時は何も要らなかったから…
って、それよりも!契約!
私はポーカーフェイスを保ちながら、もう一度聞いた。
(それで?契約してくれる?)
エルンはクッキーシュークリームを全部床に置くと、首を縦に振った。
『分かったわ。アイリナ、この上に乗って。』
エルンが後ろ足で床を叩くと、足元に魔法陣が現れた。
私は魔法陣に乗り、目を瞑った。
『始めるわよ。』
(お願い。)
エルンはふぅっと息を吸い、竜の魔力を魔法陣に流し込んだ。
『創造の竜王、エルメディオンは聖なる名、ダイアナを少女に与え、ダイアナと人生を共に歩むことを今、誓う。』
魔法陣が光だし、エルンと私の首にはアレキサンドライトのネックレスが付けられた。
契約の証、宝石の王、アレキサンドライト。
これで契約完了!
名前まで貰うとは思ってなかったけど…
(エルン、ありがとう。)
『どういたしまして。ねえ、アイリナ改めダイアナ、この後どうするの?』
エルンはまたクッキーシュークリームを食べ始めた。
(お父さんのお家に行こうと思ってるんだけど、もしかしたら弱いからって受け入れてもらえないかもしれないんだよね。)
お父さんの家族強そうだし…
『そっかあ。それなら、強くなっちゃう?2度目の人生で。』
エルンは口についたクッキーシュークリームのカスを片付けて、ニヤリと笑った。
(ほ、本当!?) 
『ええ。まず最初に行くのは…』

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